表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/113

担当分担

 ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎






「……ここですね」

「……だろうな、獣臭さといい、この繭のような造りの巣といい……明らかに敵の本丸で間違いない」

「おっしゃ!! 後は俺様が手っ取り早くぶっ潰してくるぜ!! 」

「……だから……待ちなさいっ!! 流石に中の構造も敵の概要も分からぬままに突っ込むことは許しません!! それに今度またさっきのような軽率な行動をとれば我々だけに被害があるのではなく捕らえられている人達にも甚大な被害が出るでしょうが!! 」

「……イエッサー」




 蜘蛛達の先遣隊を完膚無きまでに壊滅させた後、三人は長く伸びていた糸を伝いこの場所に出た。




 一本の巨木に沢山の糸が絡み付いていて、三階建て相当の構造物が三人を待ち構えていた。敵の姿はまだ見えないがここに捕らえられている人達もきっといるに違いない。




「とにかく! 我々がすべき事は救出が最優先です。ですが敵も黙って見ていてくれるほどお人好しではないでしょう」

「そもそも人じゃないしな! 」




 刹那、マサムネの頭に拳が叩き込まれる。

 なんだろう、最早様式美と化すほどにこの男の馬鹿さ加減に慣れてきた自分がいる。




「……なので、ここは二手に分かれて行動することにします。内訳は敵の注意を引き付ける担当と、捕まっている人達の救出担当ですね」

「はいはい!! なら俺様がやっぱり引き付け担当やりたい!! てか、俺様が一番適任だと思う! 」

「……っ、そんな事は分かってます! 貴方は好きなだけ暴れない程度に暴れてもらいますから」

「へへへ、やりぃ! 任せといてよチノちゃん! さっさと倒して二人に合流するからな! 」

「俺はカプリオと救出担当ってことか……」

「いえ……今回はレイさんにこの馬鹿のお目付役をお願いします」




 馬鹿と呼ばれ、指先で示された先に居たのは……やっぱりというべきか、なるほどと頷くべきか、落胆した表情を浮かべていたマサムネ。




 えっ、嘘、そんなに嫌な顔してこっち見んなよ。俺だって何が何やらさっぱりなんだからな。




「今回は出来るだけそちらで目立っていて貰いたいんです。レイさんがこちらにいると、その分敵が振り分けられてきて救出対象に危険が増えますから」

「あー、納得」

「なんで納得してんの? 俺様一人でも十分じゃないの? 」

「保険ですよ、ほ・け・ん。そちらで暴れるだけ暴れていてくれる方がこっちが楽だから言うことを聞きなさい。上官命令です」

「ぐ、ぐぬぬぬぬ……職権乱雑だ……」

「なんだ乱雑って……それを言うなら乱用だろうが……」




 ダ、ダメだ……チーム分けが済んだ途端に頭が痛くなってきた……。







 ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎ ✖︎







 しばらく中を散策していると、話していた通りの展開が三人を待ち受けていた。






「分かれ道だぞ、どうする? 」

「丁度、小さい道と大きな道の二手ですか……」

「大きい方には確実に敵がいるな、それもわんさかと……小さい方からは人の気配がする」

「なら、俺様達は勿論大きい方に進むぞ!! チノちゃん、それで良いよな? 」

「え、ええ……よく分かりましたね? 」

「鼻が効くもんでな」




 自慢ってほどじゃないが、指で鼻を擦りながら大きな方の道へと向き直る。対照的にカプリオは一人で小道へと。




 俺がする事は出来る限り敵の注意を集め続け、カプリオが安全に避難誘導するだけの時間を稼ぎながら敵を壊滅、もとい撃滅すること。




 マサムネの陽気に当てられて、好きに暴れられるこの状況を少し嬉しく思ってしまう俺は少し馬鹿になっているのか、体が少し熱い。




「では、後ほど会いましょう……御武運を」

「おうよ! 」

「気を付けてな」




 互いの姿が見えなくなると、マサムネの表情は戦闘モードに移行したのか、真剣さの中に疼きを抑えられない高揚した顔が出来つつあった。




「なあ、こんな時に不謹慎なんだけどさ、一つ聞いてもいいか? 」

「んぁ? なんだよ急に……まあ、良いけどよ」

「お前は……どうしてそこまで目立とうとするんだ? その……まるで強さの証明を求めるみたいに」

「あぁ、聞いてくるってそんな事かよ……ハハハ、あまりに真剣な顔で聞いてくるもんだから、てっきりカプリオのスリーサイズでも聞いてくるのかと思ってたぜ」

「別にそこも気にならないことな……ゴホン、……で? どうしてなんだ? 」

「うーん、そうだなー。単純な話だと、レイは戦うのが楽しいって思う時が有ったりするか? 」

「……まあ、なくは無いけど……」




 アンナさんと戦った時とかは、最初は正直怖しかったり面倒だなーとか思っていたけど、最後の方は少しだけ楽しい……いや、心が昂ぶっていた。




「俺様はな、命のやり取りが楽しいってタイプの人間らしい。だからいつも考え無しにー!! ……ってチノちゃんに怒られてばっかりなんだけど……」

「あー、想像が難くないなー」

「だからさ、それが自然に出ちゃうっつーか、目立てばそれだけ戦えるからってのが理由の一つ。んで、もう一つの理由があるんだが……それはな」

「それは……? 」

「聞きたいか? 」

「勿体ぶらずに言えよ!! 」




 なんだこの含笑いは、ぶっ飛ばしてぇ……。










「俺様は世界で一番強くなりたい。……じゃないな、世界で一番強くなる。ならなくちゃいけないんだ」




 笑いながらマサムネは呆気からんと言い切った。




 世界で、自分が、一番強くなることが目標なのだと。




「理由は言えないが、それが俺様の野望」




 自信を持ち合わせた男はニッと笑ってそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ