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コーディネートタイム

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 今回の無茶振りで行われる、第一回ジェノヴァファッションショーの簡単なルール説明。




 因みに、今大会のルールの立案は年長者のアンナさんがやってくれたので、俺は全くの無知である。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ① 審査員は俺が一人で行う。尚、今回は一般的な目線などではなく、俺個人の裁量、好みによって判定しても良い




 ② 三人同時に行うと判断に偏りが出てしまうので、公正なくじ引きによって順番を決めて、一人辺り三分間のお披露目をする。




 ③ 場所は、この辺りで一番大きくて品揃えの豊富なショップで行うものとする。服選びの制限時間は二十分与えられる。




 ④ 負けた二人は、買った一人にその服を折半で買ってあげなければならない。




 ⑤ 今大会の優勝者には、審査委員長こと俺によるキッスの贈呈がある。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 これ位が、大まかなルール説明になる。

 ①〜④までのルールは理解できた。罰ゲームっぽさもあり、あくまで俺の主観での審査なので、難易度が高くなっている。







 公正を期すためのルール作りをしたとアンナさんは言って筈なのだが……。




「五番目のルールがおかしい! 」

「あ、やっぱり気付いちゃった? 」

「誰でも気付くわ! 明らかに俺にだけ余分な仕事があるでしょ! 」

「まぁまぁ、キスの一つや二つ、減るもんでもないでしょ? 」

「減るよ! 確実に、俺の中での大切な何かが、適当なゲームの賞品になって崩れようとしてますよ!




 俺にとっては、誰が勝とうがあまり関係なく被害を受けてしまうことは明白、何とかせねば。




 この勝負が行われること自体が問題なのだ。どうにかして中止に追い込んでやる……。




「でもー、逆に考えてみて? 私達の誰かに合法でキスしちゃえるんだよ? それだけの覚悟も私達にはあるし文句は言わないよ? 」

「キス……三人と……ってダメだ! ダメですって! 」

「どうして? 私達じゃ不服なの……? 」

「そんなことは……ありませんよ」




 こうして話をしているアンナさんは、年上ならではの体型で、グラマラスな見た目と悪戯好きの性格とが見事なマッチングをしている。




 マリアは、見た目こそまだまだ発展途上だが、その短所を最大限長所に変えてしまう幼さと内気な性格がフォローするに余りある。




 エレナは二人の間を取っていて、程よい肉付きに、年齢的な若々しさを持つ、良く言えば普通に可愛い。




 こんな魅力的な三人に不服などある筈もないし、付けることなど、それこそ分不相応のおこがましさである。




「じゃあ、やっても良いってことだよね? それじゃ始めます三、二、一、スタート! 」

「ちょ早! てか、二人も一緒になって勝手に行かないでよ! 」

「レイの為だもん……」

「負け……ない……」




 どうしたことか、悪戯好きのアンナさんは兎も角として、真面目な筈の二人まで何かに取り憑かれているように盲目的に参加していた。




 風のような早さで駆け抜けていき、それぞれの好みの売り場へと猛ダッシュ。




 それも俺の意見等、耳に入らないくらいに集中していたのだ。




 よっぽど負けてお金を払うのが嫌なのだろうか。




「それじゃあ、王子様はここから逃げないようにしておくから、大人しくしておいてね? 」

「え? 」




 カチャン、と、何かの金属音が手元でして、アンナさんは鼻歌を歌いながら店内へと向かって行った。




 変だなと思って違和感の元を探ると、左手に大きな金属でできた鉄輪が嵌っていて、その反対側にも付いてあった鉄輪が隣のお店の客用椅子の足にも嵌っていた。




 軽く引っ張ってみても、椅子は店の床にガッチリと埋まっているタイプでビクともせず、かと言って、この手錠も力をいくら込めても取れそうにない。




「コレって……手錠? 」

「ギィ! 」




 ドラゴンによるお墨付きを貰ったので、これは確実に手錠であり、俺は逃げ出さないように拘留されていた。




 本人に気付かせることなく付けるとは……とんだ早業である。




「人権は……無いのかな? 」

「ギギィ! 」

「助けて……」




 それから二十分間、俺はトイレにも何処にも行くことが出来ないことがここに確定した。





ーーーーーーーーー





「あー暇だなー」

「ギィ? 」

「お前は人の頭の上で楽しそうだな」

「ギィ! 」

「俺も今だけドラゴンになりたいよ……」




 待つこと数分、何もせずにこの場所に拘留されることに対し、慣れた(諦めた)のと同時に飽きが来ていた。




 できることと言えば、近くのレディース用の服を見たり、こうして頭の上に勝手に乗っているチビと話すくらいしかすることがない。つまり暇過ぎる。




「あー、早く時間が経たないかな……」

「ねぇ……レイ……」

「ん? この声は……エレナか? 」




 チビを乗せた頭ごと横を向くと、先程まで誰も居なかったレディース用の服の棚の陰からエレナが顔を出していた。




 始まって少ししか経っていないが、手には何も持っていない、つまり手ぶらだ。




「周りに二人は……いない? 」

「えーっと、どうだろ……チビ、分かるか? 」

「ギィ? ギギィ! 」

「良かった……居ないんだね」

「相変わらず感覚で分かるのかよ……」




 チビの謎のドラゴン言語で周囲の確認をしたエレナは、音を立てずに俺の背後に忍び寄り、俺の肩の陰に身を潜めた。




 背中越しに伝わる暖かい人肌と、耳元にかかる女性の息が、理性のタガを外そうしている。




「あ、あの……エレナさん? 一体何をしようとしてらっしゃるの? 」

「バ、バレると面倒だから……暑かったらごめんね」

「べ、別に大丈夫だけど……」




 いかん、別の意味で頭が熱くなりそうだ。




 落ち着け本能の俺、負けるな理性の俺。




「あのさ……聞きたいことあるんだけど……」

「な、何? 」

「好み……教えてよ」

「へ? 」

「だから、レイの好きなタイプってどんな服装なの? 教えて! 」

「ど、どうして突然? というか、それはセーフなのか? 」

「だって、ルールには本人に好みを聞いては駄目とは言ってなかったし……良いかなぁって……」

「盲点すぎるだろルール作り……」




 振り向けない両肩に乗るのは、エレナの柔らかな両手と、髪の先。見えないが為に普段よりも余計にドキドキしてて鼓動が煩い。




 声は肩越しに耳へと届き、一層の緊張を作り出していた。




 エレナもエレナだ、まさかルールの盲点を突いてまで勝ちに来るなんて、何時もの性格から考えても予想外過ぎる行動なのだ。




「それで、どうなの? レイはどんなタイプが好きなの? 」

「俺が好きなタイプ……か、そうだな……」




 俺は考える、自分の好みや、その他の事を全て。

 そして、自分なりの答えを見つけた。




「俺は……エレナが一番似合うと思った服が見たい」

「私が? 」

「そうだよ、俺はエレナが自分で選んだ服を着ている姿を見てみたいんだ。だから教えるって言ってもこれだけしか答えられない……それに……」

「それに? 」

「俺はルールの穴なんか突かずに、正々堂々と勝負するエレナの方が素敵だと思うから」

「え、ええ?//」




 顔を朱色に染め、あわわと表情を七変化させていくエレナ。見ていてちょっと可愛かった。




「ほ、本当? 変なの選んじゃうかもしれないよ……? 」

「大丈夫、美人は何を着ても様になるって叔父さんも言ってたし、それに俺はエレナがどんな服を着ても似合うと信じてるし笑ったりしないよ」

「分かった……邪魔しちゃってゴメンね」




 チビの頭を少し撫でると、肩に掛かっていたエレナの体重はスッと消えて、代わりに走っていく音が聞こえる。




 これで良かったんだ……誰かがズルをすると、バレた時に関係が破綻するし、バレなくとも心に残った毒の棘が、本人の心を蝕むのだ。



 

 だから、なるべく皆んな公平に見てみたい。

 若干の後悔はあったが、仕方の無いことだと自分に言いせる。




 それから数分、遂に決戦の時が来て、挑戦者達は各々の準備を持ち寄って集まった。


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