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ウインドゥショッピング

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 店から出て数分、歩きながら計画を進める四人と一匹。話の中心はやはり女子が握っている。




 従姉妹同士ということもあり、やはり気が合うのか、会話はとても弾んでいる。




 三人三色、色鮮やかな花々に見える三人は、並んで立っていると仲の良い姉妹にしか見えない。





「何処から回る? 」

「うーんとね、最初はやっぱり色んな所を見て回りたいからウィンドウショッピングかなー? 」

「ウィンドウショッピング……した事がないや」

「まあ、男の子はしないよねー! でも、意外とやってみると面白かったりするよ! 」

「そういうものなの? 」

「お金をあんまり……使わずに……楽しめる……」

「何事も経験だって! 」






 男だったら、一つのお店に入るだけで、コレ! って決めてそのお店だけで完結しちゃうからなあ。




 その上、買い物にかける時間も男は短いし。




 男女の違いは、買い物一つを取っても出てくる。




「最近はクエストで忙しくて、服とかまともに買えてなかったし、楽しみだなー! 」

「中心部に……新しいお店が……沢山できたらしい……」

「何それ本当? 最初はそこら辺に決まりだね! 」




 どうやら俺達の最初の行き先が決まったようだ。




 俺は初めての複数の女子とのお買い物に加えてのウィンドウショッピングに期待を膨らませた。






ーーーーーーーー








「これなんかどう? 可愛いでしょ」

「うん、良いと思うよ」

「これなんかどうかな? 」

「凄く似合ってますよ」

「これは……ダメ? 」

「ダメじゃないよ、良い感じだ」

「「「…………」」」




 ん? 何だこの視線の痛さは。俺が何かしたのか?




「ねぇ……本当にちゃんと見てるの? 」

「何が? ちゃんと見てるけど?

「ちゃんと見ててこれか……酷いな」

「適当……過ぎる……」

「そんな! 俺は事実を言ってるだけだ! 」

「本当かなー? 怪しい……」




 ウィンドウショッピングもそこそこ、店に入って服を各自で見ていただけなのに、知らない内に三人が俺に服を見せに来るのだが、その感想に不服らしい。




 俺としては、皆んなが持ってくる服はどれも可愛いと思うし、素直に感想を言っているだけなんだけど……。




「じゃあ! この中で誰が一番可愛いと思う? 」

「うーん、どれも良いけどなあ……じゃダメ? 」

「ダメ! 一番可愛いって決めてくれたヤツが買いたいんだって! 」

「何で? 」

「何でって……それは……」

「言えないもんねー、エレナちゃん? 」

「ア、アンナさん!? な、何のことでしょうか? 」

「隠さなくったってバレバレだから」

「な、何のことかなー? 」




 突然顔を赤らめるエレナと、その表情の意味を知ってかニヤけるアンナさん。




 何を察してニヤけているのだろうか……何かこっちと見てニヤけてるし……。




「えーっと、この服なんかアンナさんに似合うと思いますよ! うん! 私の見立て通り似合う似合う! 」

「エレナちゃん……嘘が下手ね……」

「な、何でもないですから! 」

「素直になれば良いのにー! 」

「もう……//」

「何のことだったんですか? 」

「何でもなーいよ! 」





 女同士の不思議な掛け合い。入ろうとするも、アンナさんに軽く躱されてしまった。




 エレナは売り場へ、身を隠すように消えた。




「ねぇ、レイ、これを見てよ! 」

「これは……って! 下着じゃないですか//」

「そだよ? んん? まさか女性の下着を見るの初めてなのー? アハハ! レイはウブだなー! 」




 いきなり目の前に突き付けられた物は、黒くてスケスケの下着……それもかなり面積が小さい……。




 そんな物を目の前でヒラヒラされると、目線をどこへ向けたら良いのか分からず、頭が熱くなってきた。




「ほらー、私達がこーんな下着を穿いてるの想像して赤くなってるー! エッチだなーレイは」

「か、揶揄うのは止めてください! そりゃ、男なんですからアンナさんみたいな美人な方にそんな風に茶化されたら、誰だって赤くなりますよ! 」

「へ? 美人って……//」




 ヤケクソで返した言葉が、意外や意外、少しばかりの効果を見せる。




 表情が崩れた今なら、やり返すことが可能かもしれない。やられっぱなしは主義じゃないんでね。




 よし、ちょっと悪戯仕返してみようかな。



「アンナさんがこんなヒラヒラでスケスケの下着を身につけてるなんて……とんだ変態さんですね」

「じょ、冗談だよ冗談! 私だって、こんな際どい下着……滅多に履かないよ//」

「でも、偶には穿いたりするんでしょ? アンナさんはそんな軽い女じゃないって信じてたのになー」

「ち、違うから! 全然穿いたりしないからー! 」

「はいはい、分かりました分かりましたから」

「ほ、本当……? 嘘じゃないよね? 」

「嘘じゃないです、アンナさんは存外、純粋無垢なんですよねー、耳年増ではあるみたいな」

「べ、別にそんな訳じゃ……ミズキ姉さんが……」

「やっぱり、元凶はあの人か……」




 勝った……。アンナさんって、意地悪してくる割に、案外乙女チックで扱いやすいかもしれない。




 アンナさんは、下着を掴んで、走り去るように元の売り場へと消えていく。




「ねぇ……どう? 私達ばっかり見てるけど楽しい? 」




 袖を引かれて振り返ると、マリアが憂いた表情で俺を見つめていた。




「楽しい……かな? 自分の買い物じゃないけど、女の子がどんな買い物をするのか興味はあったし……それに……」

「それに? 」

「こんな素敵な女の子達と一緒に出掛けてるって、男としてはかなりの幸せ者かなって」

「素敵……女の子……うふ//」

「どうした? 何だか顔が赤いぞ? 」

「何でも……ないから……気にしないで//」




 マリアは何も言わなくなり、ただ下を向いていた。

 表情の一端が少し笑っていた気もするが、ここからでは良く表情を観察できない。




 ただ、下を向く直前、顔が更に赤味を増していたのだけは何となく分かった。




「あー! レイ、こんな所に居たんだ。マリアちゃんも下なんか向いてどうしたの? 」

「う……うう//」

「どうしたって……俺にもさっぱりだ」

「どーせ、レイがマリアちゃんに何か変なことでも言っちゃったんでしょー! 」

「どーせって……酷いよ」

「だって、この場にはレイしか居ないんだし、他に考えられないでしょ? 」

「うぐっ!……それはそうなんだけど……」

「まぁまぁ、お二人さん、そう熱くならないで」




 割って入ってきたのはアンナさん、既に手には下着は無かった。恐らく、大人しく売り場に返してきたのだろう。




「マリアのこの顔はね、相当嬉しい時じゃないと見せない顔なんだよ、つまり、マリアはレイに口説かれたんだよね? 」

「違う! 何をどう解釈すれば、そんな歪曲した答えに辿り着くんですか! 」

「え? 違うの? てっきり、マリアが私達の見ていない所で堕とされていたのかとばっかり……」

「はい嘘! 絶対に嘘言ってますよね! 」

「いやー、半分は冗談だけど、半分は結構本音だったりするんだけどなぁ……姉の勘として」

「何ですか? 最後の方が聞こえなかったですけど……」

「そんなことはどーでもいいじゃん! 何か別のことでもしよーよ! 」

「強引に話を変えただと……!? 」




 言葉を濁すでもなく、力技で強引にねじ伏せられた。




「やっぱりねー、女性向けのお店で一人レイを置いておくのは見ていて可哀想なんだよね、だからさ、ここいらでレイにも参加して貰わない? 」

「参加? レイに女装でもさせるんですか? 」

「似合う……かも……」

「サラッと怖いこと言うなよ……マジで」

「それも面白そうだけど……一番皆んなが楽しめるモノと言ったら……アレしかないよね? 」

「あれ? 」

「それは……ドゥルルルルルル……バーン! 【ファッションショー】です! 」

「ふぁっしょんしょー? 」

「ノンノン、ファッションショー! 折角だから男性代表のレイに私達が各自でコーディネートしてきて見せ合い、誰が一番レイのハートを射止めるかで勝負しよーってこと」

「ハ、ハートを射止めるって//」

「面白……そう……」




 三人とも、乗り気も乗り気、恥ずかしがり気味なエレナですら、何を想像しているのか顔が綻んでいる。




「本人の参加意思は……」

「勿論無いよ! 強制参加に決まってるでしょ? 」

「はい……」

「や、やるぞぉ……頑張るんだから……それでレイに……//」

「私が……勝つ……」




 本人の参加意欲は無視された、完全なる女子の為だけの服装披露大会が始まった。


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