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そうじゃない、胸じゃない

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「ひ、酷いって何が⁉︎ 」

「その前に……お兄さんに一つ聞いてもいいですか? 」

「お、おう。別にいいけど……何? 」

「返答次第によってはお兄さんもギルティしなければいけませんから……ね? 」

「……も? 」

「……もです」




 ね? じゃねーよ! 目が笑ってないんだよ!




 先程の落ち込みが嘘みたいに、今は怒りの炎に身を委ねているミハル。近くにいるだけでも燃え盛る負の感情に当てられそうになる。








「女の子は胸が全てだと思いますか? 」

「……はい? 」

「だ・か・ら‼︎ 女の子は胸が全てだと思いますか⁉︎ 」





 何を聞いてくるんだこの小娘。男に向かって何て質問飛ばしてくるの? 周りにはエレナやポーシャもいるんですよ?




 それに質問が極端すぎる。女の子は胸が全てって……確かに大事なファクターだとは思うけど……。




「早く答えないと勝手に判断しちゃいますよ? 良いんですか? 良いんですね? 」

「お、思いません! 胸が全てじゃありません! 」

「ですよねー! ……ふう、良かった。これでお兄さんのを捥がないで済みました……」

「捥ぐって何を⁉︎ 」

「何を? ナニヲデスガナニカ? 」




 や、ヤバイヤバイヤバイ。冗談で逆を選んでたら冗談じゃ済まない事になってた。体の部位で捥ぐって言ったら……うん、考えるのは止めておこうか。




「ミハルちゃん、最初は張り切ってたの……でも、相手がちょっとアレな人で……」




 以後解説の為に簡単な説明をエレナから受け、その間ネガティヴスパイラルってたミハルはポーシャが面倒を見てくれた。






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 話を聞くには、ミハルの相手は中々の高物件だったそうでーーそこそこ整った顔立ちに上背も高く、高望みしないまでも、厳しいミハルの採用基準を上回っていたそうな。てか、おい、何だ採用基準って。




 握手会は直ぐに終わり、さあ帰ろうとエレナやポーシャが考えた時にはミハルは既に行動に移っていた。




 手始めに声を掛け、そこから少し離れて二人だけで話し合ってて二人は遠目に観察していたと。




 それで張り切ってアピールしてたんだけど、どうにも相手の反応が芳しくなくて、ミハルは不思議に思ってた。でも、持ち前の積極性とあざとさを武器に小狡くアピって行ったと。




 だがーーすればするほど相手は引き下がっていき、遂には目も合わせてくれなくなった。そして、向こうから一言。




『ごめん、君にはあまり興味が無いんだ』




 愕然とした。自分の見た目に絶対の自信があり、自分を可愛く見せ、男を虜にする術を身に付けていると思っていた自分がこんなに早くの段階で相手に拒否されるなんて。あってはならないことだ。




「どうして何ですか? 私ってそんなに魅力が無いですか? 」




 負け惜しみかもしれないが聞かずにはいられなかった。ミハルは思わず言葉を口にしていた。だってこんな経験初めてなんだから。




 男は答えた。自分の予想の遥か上をいく答えを。









『僕は巨乳の女の子が好きなんだ』




 巨乳の女の子が好きなんだ……? 巨……乳?




『君は確かに可愛いとは思うけど……巨乳じゃない』




 自分の胸に視線を落とす。つるぺた……とは言わないまでも貧が付くのは否めない。揉めば多少は感触があるものの、自分と比べてたわわに実ったポーシャ・エレナコンビには天と地ほどの差がある。





『巨乳は良いよ、全てを優しく包み込んでくれる。君みたいな貧しい胸の女の子は正直好みじゃない』




 さっきまでとは違って、実に楽しそうに乳について語るこの男。だが、私はまだ成長期真っ只中の少女。これでもまだまだ普通の部類である。なのに。聞こえてきたんだ。




『あーあ、元々はあの向こうにいる二人狙いで頑張ったのに……ハズレ引いちゃったよぉ……いいなぁ』





 それをこの言いよう。許せない。




 そう思ったら既に行動に出ていた。勢い良くドロップキックを男にかまし、不意を突かれた男は見事に吹っ飛び、地面に伸びていた。




 顔が熱い。体も熱い。こんなに侮辱されたのは初めての経験で何をすればいいのか分からず逃げ帰ってきた。と。




「お兄さん、話は聞きましたか? 」

「あ、ああ、聞いた。とんだ災難だったな」

「ええ、全くです。自信を失いかけましたよ……」

「そ、そんなに気を落とすなよ! ミハルに魅力が無いわけじゃないんだし」

「そんな事は分かってますよ! だから決めたんです! 」




 私ーー絶対に大きくなってやります! 




 高らかに宣言するミハルの将来が少し不安に思ったのだが、刺激するのは良くないとあえて黙っておいた。




 フンと鼻息荒く意気込むミハルは見返してやろうとする気迫を感じた。その切り替えの早さ、前向きな姿勢が魅力の一つだと気付いていないのが少し残念だったりするのだが。




 この日以降、ミハルの作ってくれるご飯が豆乳や鶏肉料理が多くなった気がするのは果たして気のせいなのだろうか。

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