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悪徳商法

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「やっと準備が全て終わりました! 」

「よーし! 売りに売ってやりますっ! 」




 値段の変更を済ませ、今か今かと待ち構えているお客の反応を見るや意気込む三人と一人。これまでの準備はこの時のためにある。これから始まるのは言うまでもないーー戦争だ。




 客商売の基本は流れを切らないこと。売り道を繋げたままで素早く、丁寧に、回転させることが大切だ。よって、少しのミスが生まれると流れが悪くなる。全体に及ぼす影響は広がっていく。




 だから微塵の油断も隙も与えてはいけない。常に全力で商品が全て売り切れるまで駆け抜けるしかない。足りない部分はみんなでカバーし合うのだ。このメンバーならできる。




「じゃあ……景気付けに一発、煽ってくるとするか」




 先程まであれだけ煩かった喧騒がピタリと止んで、今はどの隊員も感情を内に秘めている。そんな爆薬の中に止めた張本人が再び舞い戻っていった。




「注目〜‼︎‼︎ えー諸君! 喜べ! この店は間もなく開店する」

「「「ウォォォォォォォ‼︎‼︎ 」」

「お、おお、貴様等はそんなにこの店に興味があるのか? まああるわな。日頃から外に出る機会も無く、出れたとしてもそれは軍務中につき鬱憤もさぞかし溜まっておるだろうよ。違うか? 」

「「その通りであります‼︎ 」」

「見ろ! 日頃手に入らない趣向品がどっさりだ! 加えて売り子は美人揃い! 早く見てみたいよな? 」

「「その通りであります‼︎ 」」

「どれも”少々”値は張るが、それでも最高級品の数々だ。儂でも喉から手が出るほどの一品の数々、しかも本日限りの出店でこの時を逃せば二度と手に入らないかもしれない。ならば貴様等が今日までに溜に溜めた無駄金共を消費すべき時は何時だ! 」

「「「「今であります‼︎ 」」」」

「よーし、ならば買え! 買えるだけ買って今夜は存分に楽しめ! 」

「「「ウォォォォォォォ‼︎‼︎ 」」」

「あ、因みにこの店には特典があるそうだ。なあ? 」

「え、ええ? 」




 最高潮に高まっている衆人が全てこちらへとギラついた視線を送ってくる。いや、特典ってそもそも何? そんな話誰も聞いてないぞ?












「確か〜、この店の商品を五点以上買うと抽選クジが引けて、そのクジに当たると三人の売り子さんのウチの誰かと握手できるとか。それも限定で三人だけ」








 あく……しゅ? 悪手? 悪趣? 握手⁉︎





「そ、そんなこと言った覚えは……無」

「ま、マジかよ⁉︎ こんなの買うしかねぇじゃねぇか‼︎ 」

「やったぜぇ‼︎ 」

「買いまくってやる! 」

「ウヒョォォォォ‼︎ 」

「は、話を聞いてください‼︎ 」

「有り金全て使うぞぉぉぉ‼︎ 」

「「「握手券‼︎ 握手券‼︎ 握手券‼︎ 」」」

「も、もう無理です……誰も冷静に話を聞いてません」

「う、うぅ……」

「で、でも! クジなんて作ってないよ! だから出来ないんじゃ……」

「クジならほれ」

「う、用意周到な……」

「これだけ煽れば馬鹿でも買いたくなる。握手券については諦めてくれ。売り上げのためだ」

「そ、そんなぁ! 」




 最後の一言が決め手になったのは言うまでもない。ニトログリセリンの中に爆竹を投げ入れるが如き一言が全ての人間を駆り立て、そして目に見えて購買意欲が高まっている。




 煽った張本人はここまで計算した上で値段を吊り上げ、あの証書まで書いたのだろうか。そうだとしたら鬼だ。この男は商売の鬼だ。




 そもそもの問題点の値段が高いということを予め伝え、その上でセールスポイントを語りそのデメリットを薄めていた。更に男で満ち満ちているこの場で、商品を買うだけで可愛らしい女の子との握手券が手に入るかもしれないというロマンまで売りつけるこの手捌きは並じゃない。




「それに、握手といっても一回限りの数秒だけだ。ちゃんとSPも付けとくから心配しないでいい。男の前で取り敢えずニコニコして手を触るだけだ。簡単だろ? 」

「で、でも! 知らない男性と手を握るなど‼︎ 」

「男性だと思わなければいい。野菜だとか動物と握手していると思えば数秒くらい持つだろう? それだけで売り上げが爆上がりするなら安上がりじゃないか? 」

「そうですよ! 私は別に構いませんし‼︎ 」

「み、ミハルちゃん⁉︎ 」

「おお! お嬢ちゃんは話が分かるな‼︎ 」

「はい! 売り上げも上がるし、もしかしたら物凄いイケメンさんと知り合えるかもですし‼︎ それにコネクションを作るのは大切ですから」

「そ、それはそうだけど……」

「相手に失礼な気がして……」

「何言ってるんですか‼︎ 私達はお金がガッポリ&イケメンゲット&コネクション、相手は満足な買い物と可愛い私達と握手まで出来るんです‼︎ お互いにwin-winじゃないですか‼︎ 」




 自分で可愛いとか言っちゃうあたりがミハルらしいっちゃらしいけど、加勢するとは意外だった。

 こうして今もエレナ達を言いくるめている。その手腕は認めざるを得ない。そこに加えてミハルの援護射撃まで飛んできたとなると決着は付いたな。




 悪徳商法まがいの販売活動はこうして幕を開けた。

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