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沼1

短編を予定しております。よろしくお願いします。

ここは昼間でもフクロウの鳴き声が響き、日中でも、日の光がさす事のないうす暗くどんよりとした雰囲気をかもしだす森と、その森のちょうど中心部に位置する沼。

ここは、町の人が『魔物の出る沼』と恐れていて、めったな事では近づかない場所だ。


そりゃ、そうだ。


沼なんて、オドロオドロという雰囲気で、異様な空気を放っている。

それに、この沼地に近付く前の、森全体もうっそうと茂っていてどんなに天気でも光が差す場所ではない。

太陽の光の侵略を、森全体で拒んでいる様に見える。

華やかな町の裏側に広がる広大な森は、闇の部分を隠し持っているようで人々から恐れられていた。


だけど、私は知っている。


生まれ育った町の裏手に広がるこの森。

町人の皆が恐れて近付く事のないこの森の沼がー。


絶好の釣り場ロケーションという事を。



★ ☆ ★



「やったーー!三匹めーー!」


私は手作りの釣り竿を片手に、釣れたばかりの魚を手に取り一人ガッツポーズを決め込む。


ここの沼は、実は魚がよく釣れる。

色はカラフルで、水色やら桃色や蛍光黄色など、目には優しくないド派手な魚達だが、沼に住む魚にしては泥臭さがなく、味はなんとも美味なのだ。

一口食べたらやめられない!止まらない!まるでカルビー!(それ違う)


おまけに町の市場に持っていくとよく売れるのだ。

見た目はカラフルだけど、この味はやみつきになるらしく、高値で取引が出来る。

ただの趣味ではなく、趣味と実益を兼ねた生活の種なのだ。


釣って楽し!売ってもうけ!


まさに一石二鳥のマイホビー。なんと、充実した趣味であり仕事!

十八歳の年頃の少女の趣味が釣りというのは渋いと我ながら自覚している。

だけど、町の女友達の間で流行っているのはレース編みとか、刺繍とか。細かい作業が苦手な私には、本当に無理。

レース編みよりむしろ、ゴザでも編んでる方が性にあってる。

そんな私は、共通の趣味を持つ友人がいないので、いつものように一人で釣りにきていた。


まぁ、友達にもこの沼に来ている事は秘密だけど。

友達は皆、町から南西方向に流れる川で釣りをしていると信じてる。


なぜか、この沼は昔から町の住民に、恐れられていた。

まぁ、場所が場所なだけにしょうがない。


だけど、私は小さい頃からよくここに遊びに来ていた。

こっそりと、一人探検のつもりで、よく来ていたものよ。

だから、怖いとか魔物が出そうとか言われてもいまいちピンとこない。

実際、魔物の姿なんて見た事ないし。


あるのは、おどろおどろした沼。

小さい頃から慣れ親しんでいるこの沼なので、この異様な雰囲気も、私には心の落ち着く空間となっている。

暗ーく、どんよりした空気も、何とも言えずに心地のいい空間なのだ。


朝から、地面を掘り起こしてつかまえてきた餌のミミズをセットして、はりきって竿を振る。



★ ☆ ★


今日も大漁、うっしっし。

自分の釣りレベルに満足しながら、釣った魚をまずは家へと持ち帰る道中、町はいつもより人と活気に溢れていた。


何だ?この人だかり。

いつもより人の数が多いので、すれ違いながら歩くのに苦労する。

不思議に思っていると、はしゃいだ様子の町娘達とすれ違う。


「早く、早く!もうすぐ来ちゃうわ」


「ひと目でもいいから見なきゃ!勇者さまを!」


どうやら、勇者ご一行様が来るらしい。


簡単に説明すると勇者というのはこの世界に何人か存在する。

誰でも簡単になれる訳ではなく、王宮にて勇者と認められなければ勇者を名乗る事は出来ない。

王宮で、勇者検定でも受けるのか?特に興味もないのであまり詳しくない私だ。

そして認められた勇者は自分でパーティを組んで魔物と戦い世界平和の為に頑張っているらしい。

そして、その勇者の中でもランクがある。


例えて言うなら、


Sランク 立派な勇者 

Aランク そこそこ勇者 

Bランク 普通の勇者 

Cランク 初心者な勇者

Dランク 自称勇者


…と私的例えで大変申し訳ないが、ランクがあるという訳よ。詳しいランク付けは私にはよくわからないが、Dランクが一番多いと聞く。…って、勇者なのか、それ!

もっとも、勇者認定されるだけで、素晴らしい事だと私は思うけど、世の中には、更に上をいくSSランクというお方も存在するそうな。わーお。


町の入り口へと駆け寄っていく人達を横目に見ながら人の波を逆走し、家に向かう。

一目みたい?

ないない、そんな気持ち。それより、釣った魚を早くさばかなきゃ!釣り魚は鮮度が命よ。

そんな気持ちで私は自分の家へと急いでいく。


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