兄妹&姉弟モノ。(仮) 5
「フュー!!」
「すごーい!キレー!!!」
「ホントに結婚式みたいだね」
様々な歓声が飛び交う。同じクラスの男子からは冷やかしの声が聞こえた気がしたが、気にしない。
気にしたらおしまいだ。
反論できない。
この状況で。
ちなみに、ちゃんと腕は組んでいる。
すごく歩きづらい。
―――そして、ステージ上まで来た。
私と黎夜は向かい合う。
・・・・・・。
なんか、ここまで来てめんどくなってきた。
「早くやれよー!」
「チューしちゃえー!!」
冷やかしの声がさらに、めんどくささを増大させる。
あーもう・・・。
めんどいけどこれが終わらないと、いつまでも終わらない。
決心した私は、ブーケで隠しながら黎夜に顔を近づけようとする。
その時―――
スッ・・・
「キャーーーー!!」
―――え?
ちょっと待って。
今、どういう状況?
ブーケを持っていた手は黎夜に引かれて。
腰には黎夜の腕があって。
私は黎夜に―――引き寄せられている?
唇が・・・触れている?
何に?
―――"黎夜の唇"だ。
「っ―――!!!!」
声にならない驚きをあげた。
何故ってそんなことは分かっている。
キスされた。
黎夜に。
"弟"に。
ブーケで隠されているから、みんなから見たらホントにしているかは分からないと思う。
そして、ゆっくりと。
黎夜は唇をはなした。
「・・・―――」
固まっている私の腕をつかまれたまま、ステージ裏に連れて行かれる。
「おい、さっきの本当にやったのかよ!?」
「それともふり?」
同じく発表が終わった人達に、質問攻めにあった。
「・・・・・・」
黎夜は何も言わない。
しかも、私と目をあわそうとしない。
―――何、これ。
「・・・マジでやるわけないじゃん。ふりだよふり!」
「だよねー。さすがにマジはないか!」
そういってみんな、興味がなくなったように散っていく。
とりあえず、誤魔化した。
自分でも訳が分からないのに、本当のことなんて言えるか。
後で黎夜に無理やりにでも聞いてやる!
全クラスが披露すると、すぐに審査員の審査が始まる。
生徒会の人達も審査員になっているので、副会長の兄さんも審査する側である。
―――そういえば、なんか今の兄さん、不機嫌なような・・・
『えーそれでは、審査結果が出たので、発表したいと思います!』
ざわざわと、生徒達が緊張した面持ちで司会者を食い入るように見る。
『今回のミス・ミスターコンテスト優勝クラスは・・・』
『2年5組です!!!!』
「キャーーーー!!!」
「よっしゃぁぁあああああ!!!」
「賞品~!!!」
様々な歓声があがる。
当然だ。
こんなに嫌なの我慢して、優勝できなかったらマジで生きる気力を失くす。
『そして、審査員特別賞は3年1組でーす!!』
3年1組?
ってことは、兄さんのクラスか。
そういえばこってたな。
お嬢様と執事・・・だっけ?
『2年5組と3年1組の代表者は前に出てきてください』
「・・・あー私か」
そういえば私が代表だった。
何故に黎夜でないのかは謎。
3年1組の代表は―――兄さん?
「おめでとう、翡翠」
私の隣に並んだ兄さんは、小声で言った。
「あ、うん。兄さんも、おめでと」
「こっちは僕の力じゃないしね。・・・ねえ、翡翠」
「何?」
「―――やっぱりやめた」
「は?」
一瞬、兄さんの声色が変わったと思うと―――
「キャーーー!!」
女子生徒の興奮した声が聴こえたのと同時に、私の体は宙に浮いていた。
いや、違う。
"抱えられていた"。
兄さんに。
しかも、お姫様だっこ・・・
「・・・!?兄さん!?いきなり何!?降ろしてよ!」
「いやだ」
子供っぽい声色で言った。
だけど、表情は真逆。
大人っぽくて、真面目だった。
「・・・ねえ、司会者さん」
「は、はい!?何でしょうか!」
「代表かえて。僕、翡翠に話があるんだ」
「え、でもそれじゃあ・・・」
「いいから、そうしてよ」
兄さんが珍しく冷たい声で言った。
―――何か、怒ってる?
「わ、分かりました・・・」
兄さんの迫力に負けて、司会の人は渋々頷いた。
「・・・じゃ、行こうか」
「は?どこに!?」
「―――あの子の目につかないところに」
「???」
何か兄さんが言ったような気がしたが、よく聞こえなかった。
結局、暴れても状況は変わらなかったので、兄さんに抱えられ、よく分からないまま私達は中庭に向かった。
○藤堂勇人のプロフ○
・身長185cm。12月25日生まれ。高校3年の17歳。少し茶色のくせ毛。長さは肩に少しかかるくらい。
・翡翠のことは兄妹になる前から知っていたが、話したことはなかった。
・勉強面において優秀。その他、技能教科も成績はいい。運動面に関しては翡翠が見ている前じゃないと真面目にやらないため、未知数。
・人当たりはよく、常にぼんやりしている。翡翠のことになると目の色が変わり、翡翠に頼まれたことは快く引き受ける。
・6歳の時、藤堂家に引き取られた。最初は心を閉ざしていたが、翡翠のおかげで悲しみから立ち直ることができた。
・翡翠には尊敬と信頼の念、愛情を抱いている。誰よりも翡翠第一。愛情が兄妹愛なのか恋愛なのかは不明。
・黎夜のことは快く思っていない。いつも翡翠の近くにいられるから、と羨ましく、疎ましく思っている。