兄妹&姉弟モノ。(仮) 3
短編モノなので、前回とのつながりはあまりありません。
でも1話と2話はちょっとつながってるかな?
3話と次回の4話もつながってるかも。
頼られるというのは嬉しいもので。
しかし。
頼られすぎると面倒になるのも事実。
文化祭での役割なんかは、それのいい例だと思う。
+*+
「翡翠~!頼む、そこを何とか!」
「黎夜も一緒にやってくれよ~~」
「2人がいれば最強だって!!」
只今、9月2日。午後4時半。
私と黎夜は脅迫されている。
あ、違う。間違った。
この時期になると皆がそわそわし始める。
それは毎年、学生にとっては一番の学校行事"文化祭"なるものがあるからである。
私たちの学校では前日祭、当日祭があり、前日祭は主に生徒が楽しむものだ。
その前日祭では、クラス代表のステージ発表があり、優勝したクラスには数々の特典が与えられる。
で、みんながこんなに必死になっている理由とは。
特典の中に、『冬期講習免除|(赤点の人以外)』なるものがあるからである。
学生の本分は勉強だというのに。
どうよ。
って。
人のこと言えないか。
「頼むよ~~。去年だって、一年だったのに優勝できてたじゃん!」
あー、そういえばそうだった。
確か去年は―――黎夜とバンド組んで歌ったんだっけ?
でもあれは、特典が今年よりいいのがあったからで・・・
「翡翠と黎夜だって、講習なんて面倒だろ!?協力してくれよ!!」
まあ、確かに・・・
でも、私じゃなくてもよくない?
あきらめてくれないかな、と首を振り続けていたら。
一人の男子が苦肉の策とでもいいたげな不陰気でいった。
「・・・しょうがない!翡翠!!ステージ発表で優勝したら、俺たちがお前が欲しいって言ってたパソコンの部品買ってやるよ!」
・・・ナニ?
「・・・もっかい言って。聞こえなかった」
「だーかーらー、優勝したらお前が欲しいって言ってた部品買ってやるって言ってんだよ!」
ほうほう。
それを聞いちゃあ、やらない訳にもいかないな。
「今言ったこと、絶対覚えててよ!絶対!!てか忘れてても絶対買ってもらうから!!」
スイッチが入った。
「よし、黎夜、やるよ!今日から練習!!」
「え、マジで・・・?」
すごく嫌そうだったが気にしない。
がんばらねば!
+*+
・・・・・・。
「・・・・・・」
「・・・おい、翡翠」
「・・・んー」
「翡翠。お前が言い出したんだからちゃんとやれよな」
「分かってるけどー・・・」
現在地、我が家の黎夜の部屋。
私は今、かなりテンションが低い。
ここから10行上のテンションとは大違いである。
その理由は、面倒ごとを押し付けられたから。
実は、前日祭ではステージ発表以外に『ミス・ミスターコンテスト』『舞踏会』なるものがある。
舞踏会は全員参加で、それぞれでおめかしをして学年関係なく男女で踊ったりする、交流会みたいなやつ。
問題は『ミス・ミスターコンテスト』だ。
これも各クラスから男女1人ずつ代表ででる。
そして、いわゆる"コスプレ"をして、みんなに披露するものである。
まあ、コスプレまでいかなくても、テーマを決め、そのテーマにどれだけ合っているか、どれだけなりきっているかなんかが審査員に審査される。(ちなみに審査員は、生徒会の人達。兄さんも審査員)
それに私と黎夜がでることになってしまったのである。
私に断りもなしに。
別にコスプレとかしたくないわけではない。
私が嫌なのは、その衣装とテーマを決めるのが自分じゃないということ。
しかも、それを知るのは当日。
変な格好になってたらいやだし。
・・・いやがらせ?
「―――翡翠」
「んー?何ー?」
「いやなら断れたはずだ。そんなに嫌なら断ればいいだろ」
「だってー。パソコンの部品がー。あれがないと、パソコン重くて大変なんだよー」
「理由ってそれだけなのか?」
「・・・そう言われれば違うけど」
そう。
実際は理由はもう一つある。
黎夜には気付かれてたか。
言わないつもりだったけど―――まあ、いいや。
「黎夜と一緒に、なんかやりたかったから」
「・・・は?」
「クラスは一緒だけど、委員会とか違うし。家でも、めんどくさいって言ってギター弾いてくれないし。特にバンドとかは、こういうときにしかできないし、やってくれないんだもん。ホントは兄さんとも一緒になんかやりたかったけど・・・」
こういっちゃなんか、すんごい我儘言ってるみたいだけど全て本音。
でも、私より向いてる人もいっぱいいるんじゃないかと思うのも本音。
「ほんと、どっちなんだろ。優柔不断すぎるな・・・」
「―――そうでもない」
黎夜は、そう言ってくれた。
「お前は決めるところでは、ちゃんと決めてる。判断力はあると思う。ただ、お前は少し我慢しすぎなだけだ」
我慢・・・?
してたんだ、そんなの。
むしろ、我儘だと思ってた。
「もっと、自分に自信を持ってもいいと思う。やりたいと思ったことは素直にやっとけ」
ポン―――と。
私の頭には、黎夜の手がのっていた。
大きくて、温かい手。
双子とはいえ、弟に頭を撫でられるとかちょっと情けない。
「―――ありがと」
心が少し温かくなるような感覚がしたのは、気のせいじゃない。
「よし、がんばろっか。で、どする?ボーカルは私でいいの?・・・―――」
それから夜遅くまで、バンドについての話し合いが続いた。
私と黎夜は、いつの間にか寝てしまっていた。
とても、楽しくて幸せな夢を見て。
「・・・やっぱり。ここで寝てしまってたか」
黎夜の部屋に、探し人の姿を見つけると、起こさないようにそっと、掛け布団をかける。
「いくら弟とはいえ、男の部屋で寝てしまうというのはどうかと思うよ」
大事な人に向けられる、優しげな眼差し。
その中には、愛しさも含まれていた。
「―――本当に羨ましいよ、僕は。いつでも、この子に必要とされて、この子と一緒にいられる」
今度はさきほどの眼差しとは全く違う、冷たく、突き放すような目線を向ける。
自分の、義弟に。
「ねえ、黎夜」
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