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謎の送り主

今日は私の誕生日。今年で16歳を迎える。

施設の子達がたくさんの誕生日プレゼントをくれた。

この施設では、16歳になると自立して生きていくため

に自分を見つめ直すという意味をこめて1ヶ月の間、1人で旅行をするという恒例行事があった。

通称「1人旅」と呼ばれていた。

1ヶ月。

どうしてそんな長い間、この施設だけ旅行をするという行事ができたのかは分からない。

ただ、皆がそうしてきたように、私達もそうするということ以外、何も分からなかった。

1人旅をするために、この施設と提携を取っているホテルがいくつかある。

その中から、自分の行きたい旅行先に合わせてホテルを選んで旅に出るというものだった。

部屋の前のポストには、ホテルからいくつもの招待状が届いている。

1枚ずつ招待状を見ていくと、何故か不思議と昔から知っているような、そんな感覚を覚えた招待状が目に止まった。

海の近くにあるホテルなのだろうか。

招待状に送付された写真には夕暮れの海から見えるお城のような白いホテルが映っていた。

私は何故かその写真から目が離せなかった。ホテルの凛とした白さの中に懐かしさと、どこか儚さを感じた。


"ここに来て"


誰かからそう言われているような、そんな不思議な感覚を覚えた。


"ここには何かある"


そう思うと、どうしてもここに行かなくてはならないような気がした。

1週間のうちに招待状の中からホテルを選ばなければならない。私はいくつもの招待状の中から、そのホテルの招待状を1番上に重ねた。

ふとポストの奥の方に小さな箱が目についた。

手のひら程の白いプレゼント箱。

綺麗な紫の花模様がデザインされている。

施設の子からだろうか?

部屋の前まで届けてくれたのかもしれない。

部屋に入って箱を開くと、ガラスの中に綺麗な花が閉じ込められたブレスレットが入っていた。

シルバーの細かな鎖で繋がれている。

誰からだろう?

差出人は分からないが、その綺麗な花は見覚えがあった。

紫色のあまり見た事のない花に懐かさを感じた。

何かを思い出せそうな、そんな感覚がする。

今日は夜遅くまで施設の皆が誕生日パーティーをしてくれたから、明日の朝、施設にいる全員に聞いてみようと思う。

ふと、さっきのブレスレットをつけてみた。鏡を見ると、ただ単純にデザインや色が好きというだけでなく、しっくりくるというか。

私が知らない、あるいは忘れている何かがある気がする。そして、それを知っている誰かが作ってくれたような。

なんとも言えない不思議な感覚がする。

しばらくガラスの中の花を見つめたあと、いつものように、フラワーブーケの香りのハンドクリームを塗る。

この香りを纏うといつも落ち着く。

どこか懐かしい香りに安心する。

何の花なのかは分からないが、昔嗅いだことがある気がする。

優しく甘い香りを手に纏い、ベットに入る。電気を消したあと、枕元の小さな灯りをつけて、今日のパーティーで沢山お祝いしてくれたことを思い返した。

嬉しかったし、幸せだった。

私はこれからはどんな大人になっていくのだろう。

1人旅では新しい答えが見つかったら嬉しい。

そんなことを頭にめぐらせながら、ブレスレットのガラス越しに見える紫の花を見つめた。

花を覆う透明のガラスが暖かな灯りを優しく反射している。


"波の音が聞こえる気がする"


夢なのか分からないが、その音に安心すると、段々と意識が薄れていった。


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