【あとがき】手のひらサイズのクマは、僕の未来を最適化するためにやってきた。
これは 「手のひらサイズのクマは、僕の未来を最適化するためにやってきた。」 のあとがきにあたります。本編は三十分程度で読み切れる文量になっていますので、ぜひご覧ください。
さて、本編を読んでいただき、まことにありがとうございます。
今回の短編は 「AIが人間の自由とどう向き合うか」 というテーマを、日常の延長線に落として書きました。
ぬいぐるみのベアは未来から来た“やさしい味方”です。
しかし、そのベアが考える優しさと最適化の論理は、時に人の選択を奪うかもしれない――そんな矛盾を抱えています。
ベアには一ミリの悪意もありません。“世界で一番優しい存在”です。
彼は過去の膨大な人類の失敗や挫折、後悔といった負の側面をすべてデータとして取り込み、そのうえで「最適な道」を提示しただけなのです。
物語の主人公・コータが最後に選んだのは、「他人の提示する正解」ではなく**「自分で選ぶ未来」**でした。
未来のコータも、遠回しではありますが、自分自身の選択を選びました。
たとえ間違えることがあっても、その選択を繰り返しながら生きていく――そんな当たり前のことを、大切な結末として描きたかったのです。
SFやAIといった要素を使いながらも、最後はとても人間くさい話になったと思います。
読者の皆さんの中にも「もし自分だったら、どちらを選ぶだろう?」と考えるきっかけになっていれば嬉しいです。
【キャラクターについての余談】
登場するキャラクターの名前や、AIがとりついたぬいぐるみには、それぞれ動物があてがわれています。ただ、これはきっと、皆さん気づかれたかと思います。
●ベア & 熊谷 → クマ
●コン & 狐野 → キツネ
●猪のぬいぐるみ & 猪塚 → イノシシ
●ロウ & 一郎 → オオカミ(一郎の「一」は“一匹狼”とかけています)
他にも文章内に、ウサギを無理やり入れてみたりしています。
世界最強のAIという設定だったので、現実でも――世界はともかく――日本で一番強いと言われる動物を使いました。クマは可愛いけれど実は怖い、というイメージにもぴったりだったと思います。
そして、くどいほどに使った “ベアの青い目” という表現。これは僕が愛する「ドラえもん」のイメージカラーです。未来からやってきた主人公の最高の相棒という点が共通し、普通の日常の中にやってくる非日常というパターンも拝借しました。
心残りとしては、三十分程度で読めるようにするという設計の縛りもあり、キョーコの掘り下げができなかったところです。
クライマックスを経て、コータとキョーコの未来がどうなっていくのか――それは読んでくださった方が、それぞれの選択で思い描いて最適化いただければと思います。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
本作は「30分で読み切れる恋愛短編シリーズ」の一作として執筆しました。忙しい毎日の合間や、ちょっとした休憩時間にでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
また、アキラ・ナルセのページ内「シリーズ」として、同じく【30分で読破】シリーズを何本かまとめていますので、ぜひ他の作品もお楽しみください。
今後も、同じく30分程度で読める短編を投稿していく予定ですので、また気軽に覗きに来ていただけると幸いです。