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第五章:禁断のタルト争奪戦

店の中は村人たちで溢れ返り、外にも行列ができていた。

その中心には、魔王と勇者という異世界最強の二人が、妙に険悪な雰囲気で対峙している。


「禁断の果実を使った料理だと? なぜ俺に真っ先に知らせなかった!」

魔王が鋭い目で俺を睨む。


「何言ってるのよ! 私が来るって知ってたら、あんたが全部食べちゃうでしょ! だから私が先に来たの!」

勇者は魔王を指差して強気に言い返す。


「……二人とも、落ち着いてください。」

俺は冷や汗をかきながら二人をなだめようとするが、聞く耳を持ってくれない。


「いや、これは落ち着いていられん。禁断の果実は貴重だ。それを料理に使うなど、俺の許可なしで行うべきではない!」

魔王がカウンターを叩きながら叫ぶ。


「許可? 何様なのよ! 禁断の果実を食べられるのは私みたいな勇者だけで十分よ!」

勇者も負けじと声を上げる。


「いや、何様って……俺が魔王だからだ。」

「私は勇者よ!」

二人は一触即発の空気だ。


その時、店の奥で食事をしていた村人の一人が小声で呟いた。


「……おい、あの二人が戦い始めたら、この店、消し飛ぶんじゃないか?」


その言葉に、他の村人たちもざわつき始める。

確かに、もし魔王と勇者がここで本気の戦闘を始めたら、カフェどころか村全体が危うい。


「……分かりました! 二人に特別にタルトを出します! だから、店を壊さないでください!」

俺は慌てて厨房に戻り、急いでタルトを用意することにした。


厨房では、ルナグレープの香りが漂う中で作業が進む。

「魔王と勇者、それぞれに満足してもらえるものを……。」


考えた末に、俺はタルトのレシピを少しだけアレンジすることにした。魔王用には、濃厚なチョコレートソースを加え、ビターな味わいを引き立てる。勇者用には、甘さを際立たせるためにホイップクリームとハチミツをトッピング。


完成した二つの特別なタルトを持ち、俺は店内に戻った。


「お待たせしました!」

二人の前にそれぞれのタルトを置くと、魔王と勇者は黙ってそれを見つめる。


「ほう……見た目は悪くない。」

魔王がタルトを一口食べる。


「ふむ、チョコレートのほろ苦さがルナグレープの甘みと絶妙に調和している。まるで夜の闇に輝く月のようだ。」

彼は満足げに頷いた。


一方で、勇者もタルトを一口。


「甘い! でも全然くどくない! フルーツの酸味がクリームと溶け合って……これは、まるで光そのものを食べているみたい!」

彼女も感動したように声を上げた。


二人が満足したことで、店内の緊張が一気に和らぐ。村人たちもホッとした様子だ。


しかし、平和な空気は長く続かなかった。

「店主よ。」

魔王が突然、厳しい声で俺を呼ぶ。


「次回、これをさらに進化させた料理を出せ。お前の腕がどこまで通用するか見極めてやる。」


「ちょっと! それなら私にも新作を考えてよね!」

勇者も負けじと要求してくる。


俺は呆れながらも頷いた。

「分かりました。次回も特別メニューを用意します。だから……喧嘩だけは勘弁してください。」


その後、魔王と勇者は満足そうにタルトを平らげ、店を後にした。

村人たちも「すごいものを見た!」と興奮しながら帰っていく。


俺は片付けをしながら深いため息をついた。

「……異世界のカフェ経営って、こんなに命がけだったか?」


禁断の果実を使ったタルトは、たしかに評判を呼んだ。しかし、それと引き換えに俺の日常はさらに混沌としたものになりつつあった。


「次はどんな面倒がやってくるんだろうな……。」

そんな不安を抱えながら、俺は明日の仕込みを始めるのだった――。

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書き溜めていた物語なのですが興味もっていただけていたら反応あるとすごくはげみになります。お願いします。

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