61・相変わらず
ディルが私を愛している?
「それって……!」
「ようやく気づいたの?」
「つまり戸惑っていたはずのディルも、私にかわいがられるのが嬉しくなってきたってことですか!」
「……レナーテ、相変わらずのようね」
「? はい、最近はディルが黒猫に変化してくれるので、それはもうたくさんたくさんかわいがれて幸せです。でもそれと魔帝になった理由が、全然つながらないんですけど。ベルタさん、なにか知っているんですか?」
「勘よ」
「……ベルタさんこそ、相変わらずのようですね」
「ええ。でも理屈を知らなくても感じとれることなんて、たくさんあるでしょう」
「アイスはおいしいとか?」
「その通りよ」
結局、ディルが魔帝になった理由はわからなかったけれど。
建国祭が終わってから、ディルは私に猫になってほしくない理由や彼の望みについて話してくれるはずだ。
そのときに聞いてみようかな。
私とベルタさんは、翼を広げたコカトリスの像が置かれているカフェ風の出店につく。
ベルタさんは建国祭限定の特大コカトリスアイスを注文して、その巨大さから周囲の注目を集めていた。
私は一番人気の、普通サイズのコカトリスソフトクリームをごちそうになる。
コーンの上にくるくると渦を巻いている、黄色の強いクリームがいかにもおいしそうだ。
近くに白いベンチを見つけて、私たちは並んで座る。
噴水と花々がにぎやかな庭園を眺めつつ、私はソフトクリームをてっぺんからいただいた。
ひんやりとなめらかな甘みが口の中に広がる。
これは……練乳に近い濃厚さなのに、冷たいせいかさっぱりとした食べ心地で癖になる!
ベルタさんは大きめのカップの上にのった、人の頭部ほどもある特大アイスをスプーンですくいながら、にこにこ笑顔で食べていた。
「ふふ。あなたがいると楽しいわ」
「私もです」
ベルタさんはまだ微笑んでいたけれど、その表情はさっきと違うものに変化する。
「レナーテ、もう気づいているかもしれないけれど、私はね。ずっと……ずっとあなたに話したいことがあったの。あなたが聖国テセルニアの聖女、レナーテだったころから」
「今はただのレナですよ」
「そうだったわね。だからこうして聞くこともできるわ。あなたがこれから、どんな風に生きていきたいのか」
聖女だったころは、おそらく答えられなかった質問だ。
大聖堂で焚きしめられていた妙な香りで思考がぼんやりとしていたし、特にしたいこともなかった。
だけどもう、あの暮らしに戻るつもりはない。
私は自分の望みを思い出してしまった。
「今はディルの魂剥離の症状が落ち着いて、元気になってもらうことが一番です。そのあとはおいしいものを食べて、気ままに長生きしたいですね」
ディルにささやかだと言われそうだけど、今の私が自分に望むのはそれだった。
「それならいい話だと思うの。あなた、私の娘になってみない?」
「ベルタさんの……養子ですか?」
「そうよ。ずっと気がかりだったの。聖女を辞めたレナーテの存在が知られれば、その力をほしがる者が後を絶たないでしょうから」
それは薄々感じていた。
「もしあなたの所在が知られれば、テセルニア聖国や教会も動くはずよ。後ろ盾がないのなら、私のところに来てみるのはどうかしら」




