57・建国祭の特大パフェについて
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今日は建国祭。
皇城周辺の広大な緑地は、今まで見たことのない規模のガーデンパーティのように賑わっている。
たくさんの出張屋台や出店が立ち並んでいて、すっかりお祭りムードだった。
白雲の浮かぶ青空に、帝国の建国を祝う軽やかな打ち上げの音が上がる。
それに合わせて、あちこちから賑やかで楽しげな歓声がわいた。
「みんな盛り上がっているね」
白いテーブルに残された食器をまとめていると、一緒に片づけをしていた男性メイドのヨルクさんが頷く。
「先ほど打ち上げられたのは、初代皇帝がラグガレド地域の統一を宣言した、建国時刻を知らせる音ですよ」
「あの音、イザベラが鳴らしているんだね」
「はい。あいつが魔術の打ち上げに選ばれたとすごく喜んでいたので……レナさんにも話していましたか?」
「ううん。魔術の発現展開の癖と特徴でイザベラだってわかるから。苦手な火属性でも魔力が安定しているし、毎日浮遊魔術の練習も続けているんだね」
「その説明だと俺にはよくわからないはずですけど、イザベラとレナさんがすごいってことはわかりました」
「イザベラはちょっとがんばりすぎだけどね。ヨルクさんはこのあとイザベラとあちこち回るんでしょ?」
「はい。昨年はお互い時間が合わなくて無理だったんですけど。今年は仕組まれたみたいに上手く休憩時間が重なったので、ちょうどこれから」
仕組んだというより調整したんだけど、うまくいったみたいでよかった。
「あのね。イザベラがあまネコ店の建国祭限定販売で、一番大きいパフェを食べたいんだって。でもひとりでは注文できないって悩んでたよ」
「そうなんですか? 俺は甘いの好きなんで、手伝えるって知ってるはずだけど……遠慮せず言えばいいのに」
「イザベラ、恥ずかしがりだから」
「確かにあいつ、そういうところありますよね。レナさん、教えてくれてありがとうございます。せっかくなので行ってみます」
「うん。イザベラも喜ぶよ」
「はい。絶対楽しませてきます」
「ヨルクさんもね」
「わかってます!」
私たちは手を振って別れる。
ちなみにそのあまネコ特大パフェ、カップル限定らしい。
どことなく嬉しそうなヨルクさんの後ろ姿を見送ると、ディルの姿が恋しくなってきた。
もう昼下がりだし、建国祭の式典は終わっているはずだ。
私と離れていても魂剥離の不調は起きないだろうけど、念のため確認しておけば安心だし。
なにより各地から集まる人々を最強魔帝と恐れさせている、そのかわいい姿を見てみたい。
ディルはおそらく、皇城から直接招待している人しか入ることのできない区画で魔帝としてふるまっているはず。
私は一般向けに開放された広場に背を向けた。
ディルにメイドの制服をおねだりして正解だった。
この姿なら、どの区画でも悪目立ちはしない。
私は事前に確認しておいた招待客用の区画へと向かった。
警備兵に守られた植物に覆われたアーチゲートをくぐると、来客者は一気にドレスアップした雰囲気になる。
ここで間違いなさそう。
ディルはどこかな。
あちこち見回すと、着飾った各国の賓客たちがひしめくその片隅で、ひときわ品のある色白の夫人に目を引かれた。
彼女は落ち着いたデザインの、でも一目で上質だとわかる紺のドレスを着こなし、柔らかそうなプラチナブロンドを結い上げている。
黄金色の白ワインの入ったグラスを片手に、さりげないのに真剣な眼差しをさまよわせていた。
まるで特別な相手を探しているみたい。
思った瞬間、彼女と目が合った。




