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43・私を見ていた?

 帝国民からフルネームで名前を呼ばれたハーロルトさんは、イザベラやメイドたちへと歩み寄る。


「メイドと魔術師の溝について、報告はあがっていました。しかしまさか皇城魔術師自らが、そのような事態を引き起こしていたとは気づけずにいました。対応が遅れ、申し訳ありません」


 そして丁寧に頭を下げた。


 帝国の重鎮から真摯な謝罪をされて、イザベラやメイドたちが動揺している。


「今回のことは、閣下が謝ることではありませんから!」


「どうぞお顔を上げてください!」


 ハーロルトさんは姿勢を正すと「みなさんの温情に感謝します」と笑顔を見せた。


「しかしこの件に関しては、私にお任せください。皇城を支えている人々のため、誠実に対処するとお約束します」


 そう言ってロベリアナへ視線を向けると、先ほどまでの笑顔は不穏に陰っている。


「ようやくお会いできましたね。いろいろ話したいことがあるので、こちらへどうぞ。逃げようなどと、愚かな考えは捨てた方が身のためですよ」


 凄みのある声色に、ロベリアナは真っ青になった。


 厳しい処分が下される予感しかない。


 そしてロベリアナはハーロルトさんの護衛に囲まれて、皇城の奥へと連行されていった。


 気のせいかな。


 一瞬、ハーロルトさんが私をじっと見てきたような……。


「師匠、ありがとうございました。ずっと私のことを見守ってくれて。助けてくれて、嬉しかったです」


「私も嬉しいな。イザベラがメイドの悪口を言いふらした誤解も解けたし、皇城魔術師の悪口を言ったヨルクさんは、偽物だったってわかったもの。これでまた、ヨルクさんと前みたいに話せるね」


 でもイザベラとヨルクさんは明らかに意識しすぎて、お互いに近づくこともない。


 このままだと、話すきっかけをつかむのに時間がかかりそうだけど……。


 メイドたちからも「最近のヨルク君が元気なかったのは、白タイツ魔術師のせいだったんでしょ? 誤解が解けているか確認しておいでよ」とか「仕事のことなら私たちもがんばるから、きちんと仲直りしてきたほうがいいよ」とか、ふたりを応援する声が聞こえてくる。


「ヨルクさんに一言だけでも、誤解が解けているか確認した方がいいんじゃないの?」


「いえ。メイドのお仕事は、とても忙しいそうです。さっきの騒動でメイドの方たちも時間を奪われて、仕事に影響しているかもしれないので。ヨルクとはまた……あっ!」


「どうしたの?」


「噂の白猫ちゃんって、黒猫じゃないですよね?」


「噂?」


 そういえばロベリアナが現れてすっかり忘れていたけれど、メイドたちは休憩中、魔帝の連れている白猫ヴァレリーの話で盛り上がっていた。


「白猫なら、黒じゃなくて白だと思うけれど。それがどうしたの?」


「そうですよね、そこの物陰で、黒猫が師匠を見つめていたので……」


 黒猫?


「えっ! どこどこ!?」






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