19・魂剥離を治す方法
だけどディルがカイに嫌な感情を抱いてしまうのは、仕方がないのかもしれない。
カイが魂ごと私にくっついてしまったことが原因で、ディルは毒に負けるほど魂が弱っているんだし。
今も私から離れたら、また命を落としかけてしまう可能性だってある。
「ベルタさん、私にくっついているディルの魂を、彼の元に戻す方法はないんですか?」
「簡単よ。ディルの前世が満足すれば、自然と戻るでしょう」
「簡単ですね!」
「問題なのはそれが明日なのか、半世紀後なのかがわからないことよ」
「それは……予測とかはできないんですか?」
「こればかりは前世に聞いてみないとね。ディルは前世のとき、レナーテになぜ執着しているのか、一体どんな望みがあったのか……覚えていないのかしら?」
「前世のことは覚えていない。朝に目覚めてから、今世の記憶なら思い出したが」
ディルの告げた事実に、私は目をしばたいた。
「えっ、記憶喪失が治ったの?」
「色々あって言いそびれていた」
確かに今日は目の前で私が白猫になったり、ユリウス殿下を猫語で威嚇したり、ベルタさんとアイスを食べたり忙しかった。
「レナさえよければ、俺の住んでいるラグガレド帝国に来ないか?」
「帝国へ?」
私が突然の提案に驚いていると、ベルタさんが明るい声をあげた。
「あら、名案じゃない。ディルの記憶が戻ったのも、レナーテのそばにいて魂が安定している証拠だもの。今の彼はレナーテから離れたら魂が消えるかもしれないし、レナーテも地味な王太子から追われていて、ちょうど帝国に行きたいんでしょう? 好きなだけディルにお世話になればいいのよ」
「でもディルの家族は? 逃亡中の聖女が居候するなんて知ったら、どう思うか……」
「俺に家族はいない」
「そうなの? じゃあ友達は」
「いない」
「友達も? それなら……」
恋人とかは、いるのかな。
なんだろう、そう思うとちょっともやもやするような……。
聞きそびれたまま黙ると、ディルは私を安心させるように背中を撫でてきた。
見ると口元に微笑が浮かんでいる。
いつの間にか機嫌が直ったらしい。
「恋人はいなくても、今の俺には大切な主がいる。それに帝国には一緒に働いている仲間もいる。彼らは誰かが任務に欠けても問題が無い仕組みを理解し、改良し続けている優秀な者たちだ。しかし年に一度、俺が代理を頼みにくい、重要な役割もある。それに間に合うように近々帝国へ戻りたいが」
ディルが両脇を支えるように持ちあげてきて、猫の私と向かいあう。
「レナも一緒に来てくれないか」




