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11・目を覚ましたら

 ***



 体があたたかい。


 眠りから覚めた私は、肌触りのよい毛布の中に包まれていた。


 ここ、どこだろう。


 いつもの嫌な香の匂いもしないし、なんだかほっとするような……ん?


 目の前には惚れぼれするような顔立ちの青年がいて、私に腕を回してぐっすり眠っていた。


 その光景に、濃密な前日の記憶が一気に押し寄せてくる。


 そうだ、昨日は大聖堂の窓から人を鳥のように飛ばしたり、コリンナとおじいさんから夕食をごちそうになったり、婚約指輪を売って手に入れたはずの生活資金を一瞬で失ったり……。


 それでカイを……じゃなくて、ディルを衝動買いしたんだった。


 魂剥離が心配だったから、これ以上弱らないように寝付くまで一緒にいたはずだけれど……。


 私は信じられない思いで、意識を目の前の黒髪の青年へと向ける。


 前世の私は動物と、できたら猫と、一番はカイとこんな風に眠ってみたかった。


 それがまさか!


 動物、それも猫、なによりカイ……と同じ魂を持った人が、この野望を叶えてくれるなんて……!


 幸せ過ぎて悶えていると、ディルが目を覚ます。


「あれ? いつの間にもぐりこんだんだ、お前」


 声の通りも昨夜より滑らかになっている。


 肌はもう、青あざのようなひどい色ではない。


 表情は少し気怠そうだけど、相変わらずの美貌だ。


「おはようディル。調子はどう?」


 ディルの青い瞳が、心底不思議そうに私を見つめる。


 あれ?


 私、そんなに変なこと言ったかな。


 それと気のせいか、ディルが少し巨大化しているような……。


「調子はよくなった。それで……お前は?」


「私はぐっすり眠れたよ。ディルが寝るまでついていようと思っていたのに、私の方が寝かしつけてもらったみたい。気づけばお腹も空いているし……なにか一緒に食べようよ」


「お前が作るのか?」


「そうだけど」


 あからさまに怪訝な顔をされる。


 確かに前世の私はカイに手作りごはんを食べさせたくて、料理に挑戦したこともあったけれど。


 出来上がったものは料理と似て非なるものだったし、生まれ変わって覚えているほどインパクトがあったとか……?


「こっ、今回は大丈夫! 私の料理の腕はともかく、大体の作業は魔術で済ませられるから、もうあんなことには……」


「お前、魔術を使えるのか?」


「そうよ。聖女の祈りと魔術って取り扱いが全然違うけど、根源は同じく魔力でつくられているの。食事を作るのは魔術も役に立つし、加工しなくていい食品も持ってきているし、もちろんお腹を壊すようなものは用意しないと約束するから。一緒に食べてね」


「なにを食べるんだ?」


「あなたを買ったとき、コリンナのお父さんがとても喜んでくれて、色々くれたの。それを使ってスープやパンにしようと思うんだけど、ディルは好き嫌いあるの?」


「人間と同じものを食べるんだな」


「? 当たり前でしょ。私をなんだと……」


 ディルは何気ない様子で私の頭を撫でた。


 今までの感じより、ずいぶんカジュアルな接し方のような気もするけれど……。


「!」


 よく見ると、ディルの海色の瞳に猫の顔が映っている。










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