表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/211

因縁 51 匂い

4日後、ミシェールは鏡台の椅子に座っていて、ヴィヴィアンナは、髪の毛の出来栄えに満足した所だった。

ふわっとヴィヴィアンナから香った匂いに、ミシェールはヴィヴィアンナから頬に口付けをされた時に気付いた。

「お姉様の匂い、フリージアに似てます」

「デューにあの花を貰った後に、探して貰ったのよ」

鏡の中で、ヴィヴィアンナが恥ずかしそうに目元を赤く染め、少女のように微笑んだ。

「特別な日につけたかったの」

「今日は、記念日なのですか?」

ミシェールが聞くと、ヴィヴィアンナは、秘密を打ち明けるように小さな声で言う。

「再会した日なの」

ミシェールが、顔をヴィヴィアンナの方へと向け、少し身体を捻ってヴィヴィアンナの頬に口付けをする。

「お姉様、可愛いです」

ヴィヴィアンナだけに聞こえるように言い、ミシェールは鏡台の椅子から降りて、エルバルトの所へと小走りに向かい、エルバルトに耳打ちをする。

ヴィヴィアンナは呆然としていて、侍女長は微笑ましそうに小さく笑う。

「どうしましょ。こんな事てあるのね」

鏡台の椅子に、力が抜けたようにヴィヴィアンナが座る。

耳打ちを聞き終えたエルバルトが立ち上がって、ヴィヴィアンナの所まで来て、見様見真似の騎士の礼をし、ヴィヴィアンナの手を一度だけ握り、ミシェールの元まで戻った。

「もう、こんなに私を喜ばせて、帰したくなくなってしまうじゃない」

「デューさんが嫉妬されるかも知れませんね」

両頬に手をあて、くしゃりと笑ったヴィヴィアンナに、侍女長がそっと近付き、肩を撫でる。

ミシェールとエルバルトは、やった事が恥ずかしいのか、並んで座り足元を見ている。

−コン

と控えめにノックされ、

『まだかな?』

とドアの向こうで三人が出て来るのを待っているデューの声が、くぐもって届く。

いつもより掛かっている身支度に、心配になったのだろう、少し心配そうな声だ。

侍女長がドアを開けて、デューを中へと招き入れる。

デューはヴィヴィアンナの横に片膝を付く。ヴィヴィアンナの目元がうっすら赤くなっていた。

「ヴィア?顔が少し赤いようだけど?」

そっとデューの手が、ヴィヴィアンナの頬にあてられている彼女の手を触れる。

「シェリーが、私の頬にキスを」

夢の中の出来事を言うように、ヴィヴィアンナは言い、

「バルは、騎士の礼と、自分から私の手を握ってくれたのよ」

そこまで言って、はにかんだ笑顔を浮かべた。

デューは目を見張ってから、微笑みを浮かべる。

「頬にキスなんて、ズルいな。俺だってまだだよ。騎士の礼なんて、バルは君に随分懐いてしまったんだね」

「ヴィヴィアンナ様は、お二人と長くいらっしゃいますから」

侍女長の言葉に頷き、デューは空いている手で、ヴィヴィアンナの右手を取り、手の平にキスをする。

「良くしてくれてありがとう。君を好きになった自分を褒めたいよ」

「私はしたい事をしてるだけよ」

「少しだけ、お願いします」

デューからの願いに、侍女長はヴィヴィアンナの肩から手を離し、ミシェールとエルバルトの前に立ち、一つ礼をする。

「暫く、失礼をします」

二人の目を侍女長が優しく覆う。

暫くして、侍女長が咳払いをする。

「デューさん、そろそろ」

「ありがとうございます」

少しの間の後に、デューが返し、侍女長の手が二人から離れた。

「失礼をしました」

侍女長が二人の前から退くと、デューはヴィヴィアンナの肩を柔しく抱き寄せていた。

デューがヴィヴィアンナに手を貸し、エスコートをしてヴィヴィアンナをミシェールの隣りに座らせる。

「急いでフィビーの散歩して来るよ。シェリー、バル、ヴィアを頼むよ」

「はい」

頼もしいミシェールの返事と、エルバルトの頷きに、デューは頷き返す。

「二人の兄で居させてくれて嬉しいよ」

デューはミシェールの髪を撫で、続いてエルバルトの髪を撫で、ヴィヴィアンナの前に立ち、身体を傾け耳打ちをする。

「良い匂いだね」

「もう」

口を尖らせたヴィヴィアンナに、デューはそのまま耳元に軽く口付けをし、

「それじゃ、行ってくる」

返事を待たず、デューが部屋を出て行った。

「もう三人とも今日は私を喜ばせすぎよ」

ヴィヴィアンナがベッドに突っ伏して、嬉しそうに笑った。

デューは、少しだけ遅れた散歩を取り戻す為に、犬のフィビーを連れて庭を走って回った。


ヴィヴィアンナが、二人の子供を連れて食堂へと入ると、既にミハエルが居て、新聞を読んでいた。ふとミハエルが新聞から顔を上げて、ヴィヴィアンナを見る。

「甘いな」

「似合いませんか?」

「悪くはない。俺は少し苦手だがな」

「では、ミル様避けに使えますね」

「じゃじゃ馬め」

新聞を畳み、ミハエルは左の眉を上げて皮肉げに笑った。

ヴィヴィアンナは楽しそうに笑う。

朝食後、ヴィヴィアンナに誘われ、二人はヴィヴィアンナの部屋に向かった。

白を基調とした部屋で、淡い緑が優しく差し色として使われている。

銀細工の緑の目の小さな妖精が鏡台に飾られていた。

二人を応接空間のソファに座らせ、ヴィヴィアンナが棚から小物入れを取り出しだ。

修道院のバザー用にエルバルトが作った物だ。

ソファの前の机にそれを置き、ヴィヴィアンナはそっと開く。

ミシェールがバザー用に刺繍したハンカチが出て来て、細長いケース、小さくて薄いケースが出て来る。

二人の作品を、大切そうにしているヴィヴィアンナに、二人は驚いていた。

二人の向かいに座ったヴィヴィアンナが、細長いケースを手にする。

「これは、彼がデュクリスだった頃の、最後の贈り物として貰った物なの」

言いながら開け、青い胴軸の万年筆を取り出した。

ヴィヴィアンナが悲しげな表情を浮かべる。

「ユーモンド殿下と婚約が決まって、アストリア家に挨拶しに行って、その時に。それが、デュクリスとの最後の思い出」

ヴィヴィアンナとユーモンド殿下との婚約が決まったのは、デューが留学に出る少し前の話だ。

8年以上前の物を、こうして大事に仕舞ってある事に、ミシェールは言葉が出なかった。

二人が目隠しされてる間


キスはしてません。

鼻を擦り合わせ、間近で見つめあっていただけです。

多少のお触りはあっても

年頃の二人の前なので、節度ある範囲

本文に入れるか迷いましたが、恋人達は何をしてるんだろ?

という子供達目線重視で

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ