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因縁 16 ハウス

翌日の昼食後、やはり対面室へと呼ばれ、ミシェールはエルバルトと共に入っていく。

優しげに微笑んでいるデューと、人懐っこく微笑んでいるシモンが居た。

昨日の今日で、デューと向き合う事に緊張していたミシェールは、シモンの存在に少しだけ安堵し、二人で部屋へと入り、席へと座る。

「一日ぶりです。ミシェール様、エルバルト君」

「またお邪魔しに参りました」

シモンとデューの言葉に、二人で頷き返す。

「昨日酷いんですよ。この人、俺を縄で縛ってここに来たんですから」

不満気にシモンがデューを指差した。

その手を叩き、デューは溜め息を吐く。

「人を指差すな。ゆっくり話が聞きたかったんだ。シモンの報告だけじゃ二人の様子はサッパリだし、話を聞くには、シモンが居たら埒が明かない」

「だからって、縛る事はないと思うんですよね。キッチリ縛るんですから、俺泣いちゃいましたもん」

「簡単に泣くな。閣下に笑われるだけだ」

「それは嫌だ。あの人めちゃ笑いそう」

嫌そうに顔を顰め、シモンが机に顔を伏せた。ゴツンと結構な音がした。

「さて、連日のお邪魔にお付き合い頂き申し訳ない。シモンが会って話しをしたいと騒ぐので、私は話を進めるにあたり暴走阻止役です。ほら、用があるんだろ?」

エルバルトの向かいに座っているデューがそう言って、ミシェールの向かいに座るシモンの頭を叩く。

「暴力反対!」

言いながらシモンが机から顔を上げ、ミシェールを見てモジモジしだす。

何の用なのか、ミシェールが黙って待つと、少しの間の後、シモンが口を開く。

「花、押し付けてスミマセン。何か迷惑そうだったな。て後から思って。けど、女の子が喜ぶ物て、花かケーキかキラキラしたものしか浮かばなくて」

「はあ」

「ケーキは、エルバルト君も居るからミシェール様だけに渡すのは失礼かな、て思って」

「そうですね」

「キラキラした物なんて、ミシェール様は見飽きてるだろうし、俺が買えるのなんて見劣りするかな。と思いまして」

「それで花を」

一つ一つに納得し、ミシェールは息を吐く。

色々と悩んだ末の鉢植えなのは分かった。ただもう少し考えを巡らせて欲しいと。

すっかり意気消沈してるシモンに、ミシェールは口を開く。

「先日も言いましたが、栞はその前に頂いた玩具などへのお礼です。閣下へのお礼状にも2枚入れさせて頂きました。他の方々には面識ないので、申し訳ないですがご用意しませんでした」

「え?俺だけじゃなかったの?閣下には2枚も???」

「奥方様の分も入れさせて頂きました」

さらに意気消沈したシモンに、ミシェールは小さく頷いた。

途端、シモンが徐ろに立ち上がり、デューへと身体を向けて抗議の声を上げる。

「じゃあ知ってましたよね?なんで、俺が栞見せた時に言わなかったんですかぁ!」

「喜んでいる所に水を差すのは悪いと思ってな。まさか、お礼にお礼を返すなんて思わなかった」

「嬉しかったんだから、返しますよ!」

「それは際限なくなるし、自己満足だ。だからミシェール嬢も困ってしまわれたのだと思うが?」

涙目の抗議に、デューは疲れた表情で言い切った。

それに、シモンが慌ててミシェールに視線を向ける。ミシェールは頷きでそれに応えた。

自分の暴走に気付き、シモンは頭を下げる。

「スミマセン。あの、花は俺が持って帰りますので」

「それには及びません。旅の道中なにがあるか分かりません。花が心配になりますので、このまま頂いておきます」

「ミシェール様、神!!!」

手を合わせ、シモンがミシェールを拝む。

エルバルトは面白い物でも見るように、シモンを眺め、ミシェールは眉を寄せ、デューへと視線を送る。

「だから、困らせるな」

ポンとシモンの背中をデューが叩くと、シモンは鼻を掻き椅子に座る。

「スミマセン。興奮しすぎました」

それに、デューと、ミシェールの溜め息が重なった。

互いにに見合わせ、デューが苦笑を浮かべた。

ミシェールは小さく礼をし、視線をそっと外す。

目敏くシモンはそれを指摘する。

「デューさん。今、目で会話しました?」

「そりゃ、あんな大暴走見せられたら、困った事になった。て意見が合う。少しは自重しろ」

「へいへい。ズルいんだーー」

再びシモンが机に伏した。

その頭を撫でデューは苦笑を浮かべる。

「用は済んだのか?」

「一応。デューさんは、もっと話さなくて良いんですか?」

「ああ。言いたい事は昨日言ったから」

「それで俺を置いていったんですね」

机に伏したまま拗ねてみせるシモンに、デューは溜め息を吐いて頭を下げる。

「面倒なので、置いていきますが、放置して結構です。お二方もどうぞ随意に」

言って、デューは対面室を出ていってしまった。

ミシェールとエルバルトが呆気に取られていると、シモンがもそりと顔を上げる。

「薄情な人でしょ?あの人」

「それでも、シモンさんはお慕いしてらっしゃるのでしょう?」

「そりゃ、まあ、頭良いし、強いし、意外と面倒見が良いし」

ミシェールが首を傾げれば、シモンは少し悔しそうにそう言い、机を叩いて立ち上がる。

「彼女といーーかんじだし!羨ましいなんて思ってないですよ!」

面倒見が良い人に置いていかれるのは余程だ。とミシェールが口に出す前に、そう叫ばれミシェールは再び呆気にとられる。

エルバルトが立ち上がり、シモンの横へと立ち、肩を慰めるように叩いた。

その手をガシッと掴み、シモンはエルバルトに顔を寄せる。

「エルバルト君、ミシェール様の弟て羨ましすぎます。ズルいです」

途端、エルバルトは顔を左右に振る。

それをどう解釈したのか、シモンはさらにエルバルトに顔を寄せ、唾がかかりそうな距離になる。

「違うくない!こんな綺麗で!尊くて!存在が神で!弟と両親思いで!」

「シモンさん、絡むならお帰り下さい。そして大好きな先輩に絡んで下さい。迷惑です」

静かにミシェールが言うと、シモンの口がピタリと閉じ、ミシェールを見て何度か頷く。

「では、ごきげんよう。またいずれ」

立ち上がり、ゆっくりカテーシーをしてみせ、ミシェールは対面室のドアに向かう。エルバルトもシモンに頭を下げ、それに続いた。

しょんぼりしたシモンが、修道院を出ていくのを、理事長のナンジーだけが見ていた。

悩んだ末の副題


犬へのあれです


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