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因果 15 未来へ

ミハエルは正直なところ、王族の血なんて大層な物は邪魔でしかなかった。

未来の王の兄であった為に、想いに封印をする事になったし、弟に何かあった時の保険でもあったので、やりたくもない勉強を沢山させられた。

その血で誰かを護れるのならば。と、弟の王には半年前のヴィヴィアンナへの見舞いに向かう前に、その意思がある事を伝えてあった。

王は、なんとか皇帝を納得させようと試みたようで、結局この方法しかない事に、3週間前に謝罪と感謝の言葉が届いた。

ミハエルはその文字の上に落書きをして、空いている所に、承ると書いて返したのだった。

とはいえ、婚姻は受け入れるにしても、譲れない物もあったので、それを正直に伝えれば、ヴィヴィアンナも承知の上だと返ってきた。

彼女自身の状況を理解して、悲観するわけではなく、自然と受け入れられるのは、やはり上位貴族の娘だからだろう。

「心を寄越して欲しいなんて、ミハエル様に失礼ですから、お好きなように」

微笑んで言ったヴィヴィアンナに、ミハエルは小さく吹き出し言う。

「ならそっちもだ。内装も庭も使用人も、女主人として好きにしろ。愛人もな。ただ人を増やす時は相談して欲しい」

「愛、人?」

「ああ。恋愛は自由にすれば良い。若い内から諦める事はない」

思ってもいなかったのだろうミハエルの言葉に、ヴィヴィアンナが暫く黙り、小さく笑いだす。

「ふふ、お優しいのですね」

そのヴィヴィアンナの目元を、モントルア夫人はハンカチで拭い、ミハエルへと頭を下げる。

ヴィヴィアンナの反対側に座ったモントルア侯爵も頭を下げた。


その1週間後、王兄ミハエルと、モントルア侯爵家ヴィヴィアンナの婚約が公表された。

そしてその9日後、花が咲き誇る王都へと向かった。王太子ユーモンドと皇女の婚姻の儀式の為に、二人は大聖堂に居た。

ユーモンドの元婚約者で、今は王兄ミハエルの婚約者のヴィヴィアンナは当然注目される。

ヴィヴィアンナは、濃いボルドー色の生地に金糸で刺繍がされた露出の少ないドレスを身に纏い、宝飾は白蝶真珠と、ミハエルの色を身に纏っていた。

ドレスは婚姻成立前から、ミハエルがサイズに余裕を持たせて作らせており、婚姻後にサイズ合わせをさせたのだ。

その横、ミハエルは王族用の儀礼服だ。足元まで届きそうなフロックコートで、生地は濃紺で金糸の刺繍がはいっており、金のボタン。シャツは白く、アスコットタイは淡い紫で、サファイアのピンを着けている。

彼もまた、長い独身を解消した事により、注目され、二人を見てはコソコソ囁やき合う者も居る。

昼食後の時間に行われた儀式の間は、さすがに全ての参列者が新郎新婦へと視線を送る。

儀式は滞りなく進み、王妃から皇女にティアラが授けられ、儀式は終わり、新郎新婦が大聖堂を揃って出て行くのを見送ると、参列者は息をついた。

新郎新婦は、これから屋根のない馬車に乗り、護衛に囲まれながらも、街中を周り王宮へと向かいながらも、民衆へのお披露目をする。

参列者は、国外からの賓客は、王宮で行われる招待会の為にすぐ馬車で向かい、遠方の者は王宮に用意された部屋へ、近くの者は一旦戻り、婚姻披露の夜会の準備へととりかからねばならない。

ミハエルとヴィヴィアンナは、王都にあるミハエルの別邸へと戻った。

ミハエルの計らいで、モントルア侯爵夫妻も別邸へと向かう。

儀式の前日から泊まっており、朝も一緒に儀式の準備をし、軽い昼食の後、揃って大聖堂に行っていたのだ。

屋敷に四人が着けば、待ち構えていた使用人達にそれぞれ囲まれ、部屋へと案内される。夜会に向けての準備をするためだ。

そして、とうとう夜会だ。

王宮の大広間、貴族達が王太子と王太子妃へと祝いの挨拶へと向かい、つづいて王と王妃、王太子妃の兄の皇帝と皇后にも挨拶する。先頭は王の兄のミハエル、ついで公爵、その次が侯爵家となる。

ヴィヴィアンナはまだ婚約者なので、モントルア侯爵夫妻と共に挨拶をした。

皇帝はミハエルからの挨拶に無言で手を払う仕草で応え、ヴィヴィアンナからの挨拶には彼女を上から下まで見て、ふいっと顔を反らして応えた。

王からの言葉があり、ユーモンドのエスコートで王太子妃となった皇女が壇上から降り、大広間の中心に並んで立つ。

白で揃えたユーモンドと王太子妃が向き合って手を取れば、楽団が軽やかな曲を奏で、婚姻した二人のファーストダンスを彩る。

揃った貴族達に見守られながら、曲は終盤にかかり、最後にユーモンドが王太子妃に口付けし、会場中から拍手が送られた。

いよいよ、他の貴族もダンスへと加わる番になれば、貴族の興味は一組へと向かう。

ミハエルは濃紺の燕尾服でサファイアのブローチを胸元に留め、袖からサファイアのカフスボタンを覗かせている。

ヴィヴィアンナはアイボリーの生地に金糸で編まれたレースが胸元を飾り、大粒のルビーのピアス、髪飾りとネックレスは幾つものルビーを使った揃いのデザインをつけている。

あからさまではないが、周りからの視線に、ミハエルは溜め息を吐きたいのを堪える。

新郎新婦の為の場で、主役以上に注目を浴びては、新郎新婦に失礼なのだが、状況からいえば仕方ないと諦めて。

ミハエルとヴィヴィアンナのダンスは、精錬されており、婚約したばかりとは見えない。たまにミハエルが何かを言い、ヴィヴィアンナがそれに反応して笑みを浮かべたり、驚いた表情をし、なにより3曲続けて踊った事で、周囲は安堵した。

ヴィヴィアンナの様子から、王太子への何かしらの想いが見えたら、この場には緊張が走った事だろう。

ダンスの後は、ヴィヴィアンナが疲れた事を理由に、会場隅の椅子へとミハエルと並んで座り、やはり仲睦まじい姿を見せつけた。

そうして、和やかに夜会は終わりへと向かい、王から改めて新郎新婦への祝福に感謝の言葉を述べ、場は終わるのかと思われたが。

「そして、この場を借りて報告させて貰う。周知の通り、我が兄ミハエル・ヒリス・バン・エクレナールと、ヴィヴィアンナ・サン・モントルア嬢の婚約が先日整った。本来なら、場を作るべきなのだが、兄が社交嫌いなのは皆知っている事だろう」

王のその言葉に、会場中から笑いが漏れ、ミハエルは眉を顰めた。

王の言葉は続く。

「なので、婚約披露は行わない。だが、婚姻の儀と披露は、兄に了承して頂くので、盛大に祝って欲しい」

そう言い、改めて王太子と王太子妃への祝福の言葉を述べ、夜会は終了となった。

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