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因果 12 顛末

ヴィヴィアンナとモントルア夫人の期待の目に、申し訳なく思いながらデューは口を開く。

「そして、シージアで、薬の行商人が声を掛けられたのです。薬の事で相談したかったみたいで、行った先の宿屋では、他にも声を掛けられたと思われる人が廊下で待ってて、薬に詳しい方でした。そして順番に案内されてました」

「まあ、そこに閣下が?」

ヴィヴィアンナがキラキラと目を輝かせ、モントルア夫人も楽し気な表情で、デューは父親との夜のお茶の時間を思い出した。

侯爵家の息子であった父親の冒険談など、些細な物だったと今なら思うが、それでも、デュクリスはワクワクし、話の続きを促していたのだ。あの時の自分は、きっとこんな顔だったのだろうと、父親に思いを馳せ、言葉を続ける。

「まさか。騎士の副団長が居たんだ。中に入って話を聞いたら、犬の薬を探してるて言われて、薬の行商人も俺も驚いたよ」

「犬ですの???」

「あらまあ」

ヴィヴィアンナとモントルア夫人が驚きの表情を浮かべると、モントルア侯爵もわざとらしく驚きの表情で先を促してくる。

モントルア侯爵は少しこの嘘話を楽しんでいるようだった。

「うん。副団長が犬を拾って、弱っていて食事も食べないから薬を探してたんだって。それで行商人は探してみます。て答えたんだけど、その後に、俺も拾ってやってくれないか。て」

そこで悲しそうな表情を浮かべたデューに、ヴィヴィアンナとモントルア夫人も悲しげに眉を下げる。すっかり冒険談の世界に入ってしまっているようだった。

「嫌だ。て言いたかったんだけど、子供の御守りは疲れた。是非引き取って欲しいて続けて言われたらさ、言えなかった」

「酷いわ」

「ええ。何もそんな言い方しなくても」

ヴィヴィアンナの表情はさらに悲しそうになり、モントルア夫人は少し怒りを滲ませた。

モントルア侯爵がデューを労るように肩を撫でてくるが、彼はこの冒険談が嘘だと知っているので、なんとも白々しいとデューは思った。

「それで、副団長に引き取って貰ったら、ミハエル閣下の騎士団の騎士見習いになってた。国に帰ってきたら、デュクリス・ロー・アストリアの葬儀があったと知って、貴族に戻る必要がなくなって、正直安心した自分が居た。それくらい騎士見習いが楽しかったんだ。モントルア侯には手紙を書くべきか、迷ってました。侯の立場もあるのに、失踪を手助けしたなんて知られたら、モントルア令嬢の婚約に汚点となると思って遠慮してしまいました」

「ヴィヴィを心配してくれていたのだね」

デューが頭を下げると、モントルア侯爵はデューの左手を握る。ヴィヴィアンナは涙目で、モントルア夫人も再び涙目になっていた。

「命を危ぶまれる状況だと知って、心臓が潰れるかと思いました。婚約白紙も同時に知って、でも今更俺が出ていっても、迷惑なだけだろうと、会いたい気持ちを抑えてました」

手が震えるのを抑えきれず、デューは歯を食いしばった。嘘ばかりの話の中で、それは紛れもない真実なのだ。

「生きて会えた。それだけで十分です。それと、綺麗な姿を見せられて良かったわ」

ヴィヴィアンナの綺麗な笑顔に、デューは救われた気持ちになった。何も分からず始まった逃亡生活が少し報われた気持ちになったのだ。

少しして、小さな町に昼食休憩として馬車は止まり、食事の後、再び同じ面々で馬車へと戻った。

騎士見習いでの苦労話で、モントルア一家に楽しんで貰って、デューは覚悟を決めて口を開いた。

「モントルア令嬢、母の愚かな行動を、許して欲しいとは言わない。想像出来ないほど悲しかっただろうし、命の危険に晒されて、憎んでいると思う」

その言葉に、モントルア一家が揃って息を飲んだ。

それは、ミハエルから聞かされた顛末だった。

王太子の急な病死は何故か?

何故ヴィヴィアンナが離宮で療養し続けていたのか?


5ヶ月前に、デューは神妙な顔をしたミハエルに訓練後に呼び出された。執務室は人払いされており、デューとミハエル二人きりだった。

「アストリア公爵は分家に家督が譲られた」

「そうですか」

「驚かないのか?」

デューの淡々とした返事に、ミハエルがじっとデューに視線を送る。

それに苦笑を返し、デューは口を開く。

「アストリア公爵当主と、その伴侶の病死は4日前の発表を今日聞き及びました。7ヶ月前の第一王子の急な病死と、モントルア令嬢が倒れたのは同じ頃。何かない。と思えるほど呑気ではありません」

「まあ、そうだろうな。あまりにも近すぎる。それでも病死を貫くあたり、あれも無茶をする」

長く溜め息を吐き、ミハエルはデューに座るように促す。

「捨てたとはいえ、アストリア家の人間だ。小僧には知る権利がある」

そう前置きし、ミハエルは恐ろしい話をデューに聞かせた。

7ヶ月前の王太子の急な病死と、ヴィヴィアンナが倒れた原因は、毒だった。

王太子の婚約者である皇女が開いたお茶会での事。王太子と、第二王子ユーモンド、ヴィヴィアンナの4人の絆を確かめる為のそれで、その事件は起こった。

王太子が最初に倒れ、続いてヴィヴィアンナが倒れ、すぐにお茶会は休止となり、その場にいた侍女とメイドは騎士達に抑えられ、皇女とユーモンドは騎士に護られ、部屋へと送られた。

王族とその婚約者のお茶会なので、付いた侍女は3年以上の者ばかりで、メイドも厳選されていた筈なのだが、侍女の一人の裏にアストリア公爵当主シェキーラが居た。

王族の近くに高位貴族から侍女が派遣されるのは不思議でないのだが、その侍女の服から毒が発見された。

取り調べで、その侍女はすんなり自供し、裏取りしてから、シェキーラとその夫、ブライトも王宮へと呼び出された。

そして、シェキーラはあっさり自供したという。

「全ては私ただ一人の企てです。ユーモンド殿下が生き残ってしまったのは誤算でしたわ」

王との謁見で、シェキーラは毅然とした態度でそう告げたという。

理由は自身の息子に王位を与えたかったのだと。

シェキーラの息子は、当時王位継承権第5位だったので、直系の二人が亡くなれば。との考えの元での行動だったと、シェキーラは淡々と答えたそうだ。

シェキーラ自身が認めた事で、話はすんなり進み、シェキーラとその夫への毒杯が言い渡された。

子供二人については、修道院へと送られた。二人が幼い事を理由に王が考慮し、成長を見守り、叛意を見せるようなら厳しい処分が与える事になった。

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