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因果 10 真相の告白

冒頭で残酷な表現がございます。

お心の準備をお願いします

ミハエルと共に帰国し、王都へ向かう途中、脱走してから1ヶ月と2週間経った日、デューは自分と祖父の葬儀があった事を知った。

なぜという疑問と、ではここに居る自分は?という疑問が生じた。

ミハエルへ問い質せば、『モントルア侯爵がデュクリスの死を偽装した。似た背格好の遺体を探しだし、熊に襲われたように顔と身体を傷つけ、山中へと置いてきた。鶏の生き血を撒いたから野生動物がさらに傷を増やしたと思われる。従僕には嘘の証言をさせた』と冷酷な顔で言われ、デューは寒気がした。

陽気な所と、まるで父親の様な優しさを持つ男の、貴族としての冷酷さが、恐ろしく感じたのだ。

「専従医師が、確認したと聞きました」

震える声でデューは言った。葬儀の事を知った後、世間話を持ち掛けるフリで、街の人間に聞いたのだ。

「父親が説得したか買収したかどちらかだろ」

淡々と言うミハエルの言葉は、薄々気付いていた。だが、気付かないフリをしたかった。デュクリスが帰れる場所を完全に無くしてまで、父親は誰からデュクリスを守ろうとしているのか?そこまでしないといけないのはどうしてか?と考えた時、一人思いついてしまった。

アストリア家でデュクリスだけが狙われる理由を、彼はずっと考えていた。

最初は、ヴィヴィアンナと仲が良かった事で、王家に疎まれた可能性を考えたが、すぐに取りやめた。身元を引き受けてくれている相手を疑うのは間違っているし、父親が選んだ先に、自分の命を狙う相手はいないだろうと。

誰かから恨まれたり妬まれたりしてると仮定して考えても、それは父親からの手紙で、デュクリスに咎も責もないとあったのですぐ否定出来た。

では留学先か?とも思ったが、会った事もないのに執拗に命を狙われるか?と首を傾げる事になった。戦争をしかけるつもりだとしても、デュクリスだけを狙う理由にならない。

まだ成人前で、思いつく心あたりなどそうそうない。

そんな折、専従医師が自分の死亡を確認した事を知り、デューの頭の中でカチリ。と音がした。

身近な大人で、アストリア家なんて気に止める必要のない、王族ではないのは、二人。

そして、片方は自分の逃亡と生存を願い、死の偽装までした。

「母上、なのですね」

震える声でデューはそれを言ってしまった。

ミハエルは眉を顰め、黙り込んでしまった。それが答えだった。

宿の与えられた部屋へと走って向かい、デューは『わーーー』と大声をあげ、ベッドへ飛び乗り、布団を被り、丸1日そうして過ごし、ミハエルの部屋へと向かった。

「ありがとう」

一言だけそれを言い、デューが頭を下げると、ミハエルはデューの頭を上からコツンと叩いてから、デューの身体を抱きしめた。

「すまんな」


王都にあるミハエルの別邸に着くと、いよいよデューの騎士見習いの日々が始まった。それは想像以上に大変だった。

剣を習っていたので、多少自信があったが、いつも修練に着いていくのは精一杯だったし、慣れない部屋の掃除、そして周りは平民が多く、周りからは『お貴族様』とからかわれたり、皮肉げに言われたりした日々だった。

逃亡中に着換えは一人で出来るようになったが、やはり言葉と所作で気付かれてしまったのだ。

それでも、日々真面目に修練を過ごした。

騎士団長の方針で、未成熟な身体のうちは、しっかり寝る事は教訓としてあり、無理な鍛錬も禁止で、他人を蹴落とそうとする人物は、適性なしとして辞めさせられていった。

気付けば、周りは『お貴族様やるじゃん』なんてたまに軽口を聞いてくるようになり、周囲を仲間と思える程、気心が知れた仲となった。

ミハエルが大公となり、外交から退くと、たまにお菓子を持って騎士見習い達に配り歩きに来た。

そして15歳で騎士試験に受かり、晴れやかな表情で騎士団長の前に立った。

「伸びたなぁ」

しみじみと騎士団長に言われ、デューはガッカリした。他の合格者には、労いの言葉が贈られていたからだ。

「騎士団長殿の教訓のおかげで」

「出たお貴族様」

澄まし顔でデューが答えれば、騎士団長が笑い、その言葉に周りも笑う。

見習いになりたての頃は、デューをからかう目的や、皮肉の為に使われたそれは、すっかりデューの個性として、アダ名のように使われている。デュー自身も、わざとそれっぽく振る舞ったりして、笑い飛ばせるようになっていた。


そんな自分の、脱走から再会までの話をする為に、デューはモントルア一家と一緒に馬車に乗っていた。

ヴィヴィアンナ達の旅支度は、ミハエルが足らない物は先々で買うからと、出立を急がせ、3日で済まされ、馬車は大公領へと向かっている。ヴィヴィアンナの右隣にはモントルア夫人。向かい合う形でデューと、その左隣にモントルア侯爵。説明できるようにと、デューを護衛として、ミハエルがこちらの馬車に乗せたのだ。

ミハエルの馬車は前を走っている。

当然、命を狙われた末の逃亡とは言えず、手紙を残しての失踪を、モントルア侯爵が手伝ってくれたのだと、デューは告げた。

「お父様は全てご存知だったのね」

ヴィヴィアンナが睨むようにモントルア侯爵を見る。

途端、顔色を悪くし、モントルア侯爵は首を振った。

「いや、全てではないよ。私もまさか生きているなんて思ってなかったんだ。専従医師の診断に間違いがあるなんて思ってもなかったのだよ」

「大公領での再会の計画だったのよね?」

穏やかに微笑んだモントルア夫人に、モントルア侯爵は震え上がった。

「半年前のヴィヴィの見舞いの時に、彼が大公領で騎士をしているて聞かされたんだ。彼は自分が死んだ事になっているのを知って、貴族でなくなって安心してたようだったから、黙ってたと。驚いたよ」

「補佐だったのに気付かなかったの?」

ジト目のヴィヴィアンナ。

「本当は?」

ニッコリと微笑むモントルア夫人。

二つの視線に、モントルア侯爵はタジタジしている。どうやら家庭内では、二人に頭が上がらないらしい。

その姿に、デューは吹き出してしまった。

「モントルア侯を責めないでやって。俺が我儘だっただけなんだ」

デューが肩を震わせながら言えば、ヴィヴィアンナもモントルア夫人もデューを見る。

「言えない理由なのね?」

「でしょうね。この人がここまで秘密を貫くのは相当なのでしょう」

ヴィヴィアンナとモントルア夫人の鋭い言葉に、デューは笑顔で首を振った。

「貴族である事に疲れたんだ。しかも筆頭公爵家なんて大層なもので、雁字搦めだった。やりたい事も分からなくて、留学への旅に出た時、心が踊ったのを感じた。もっと貴族では経験出来ない事がしたい。そう思ってたら、偶然モントルア侯に出会ったんだ」

そこまで言って、デューはモントルア侯爵へと視線を向ける。

「モントルア侯は、気が済むまで遊んだら、帰っておいで。と色々手伝ってくれた。その節は本当にありがとうございました」

「いや。死んだと聞かされて、あの時手を貸さなければ。とずっと後悔していた。生きていると知って、どれだけ嬉しかった事か。こうして再会出来て嬉しいよ。無事でなによりだ」

モントルア侯爵の最後の言葉に、デューは強く頷き返した。

脱走に手を差し伸べてくれた彼の、一言目がそれだった。

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