貫禄ある顔してるだろ。ウソみたいだろ。仔猫なんだぜ。それで…。
8月1日に全ての引っ越し作業が終わったのだが、茶々丸のいるのは高速で1時間半の所、なかなか迎えにも行けず。
と言うか保護主さんが、茶々丸の猫風邪がもう少し落ち着くまでは面倒を看てくれることになっていた。
その間に私は、猫トイレやご飯やキャリーバッグなどを買い揃えたりと忙しく過ごしていた。
猫風邪もだいぶ治まったので8月7日に茶々丸は一旦知人宅へ預けられることになった。
知人宅には前回ご紹介したようにシャムっぽい猫が飼われているので「ラテ姉さんの機嫌を損ねないようにしないと」と知人と二人、色々話し合っていたのだが、猫に慣れてる保護主さんは抱っこで連れて来てポイっと置いて行ったと……。
最初はキャリーバッグの中から少しずつとか言ってた私達の心配よ。
(ポイっと置かれた仔猫にシロウトどもはただオロオロとするばかりじゃった)
保護主さんが茶々丸本体の他にオプションとして猫風邪用の飲み薬と目薬、あと今食べてる餌も置いて行ってくれたので大変助かりました。
最低限これは食べると分かっているのと何が食べられるのかまったく分からないのでは雲泥の差ですからね。
お礼は「要らない」と辞退されたのですが、だいたい獣医さんの受診料が初診料コミで三千円くらいだったので、五千円の商品券を贈りました。
以下が知人宅にて先輩飼い猫を無視して初日から寛ぐ茶々丸、生後3カ月の様子である。
ラテ姉さんシャーシャー言いまくりで、タンスの上に登ったまま降りてこなかったとか……。
本当に申し訳なかったと思う、が翌日にはツンの姿勢を維持しながらも茶々丸と鼻と鼻を突き合わせるくらいの仲にはなっていたそうで、良かった。
ちなみに買ったばかりの茶々丸のトイレを最初に使ったのはラテ姉さんだったそうだ。
そして、私も8月8日にやっと茶々丸と逢うことができた。
正直、黒いし、手足長いし、目つききついし、鳴き声変だし、やんちゃだし、おなら臭いし……。
いや、マジでおなら臭かった。知人宅では「猫の物とは思えないほどの臭さ」と表現された。しかもなぜか寝転んでる人の胸の上に乗って鼻先でぷすっとやる。
なぜなのか? いや、ほんと小一時間ばかり問い詰めたい。
知人宅にお世話になったのは、ほんの数日の間だったのに、余りにも暴れん坊だったので誰も茶々丸とは呼んでくれず「ヤンチャ丸」と呼ばれるようになっていた。
そんなヤンチャ丸…茶々丸も高速に乗って帰って来た時、騒がずにぐっすり寝ていてくれて猫飼い初心者としてはとてもありがたかった。
茶々丸はアパートに着いて、ソファの周りやキャットケージ、私のベッドなど色々見て回っていたけれども、何だかテリトリーの見回りというよりもお友達を探しているようで少し胸が詰まった。
犬2、猫3がいた保護主さんちから、猫1の知人宅、そして茶々丸だけの我が家と環境が変わって茶々丸のストレスをとても心配していたのだが、割と本人は平気そうだった。
暴れた後は電池が切れたように寝る。仔猫だからね!!
もうひとつ心配していたトイレも問題なくでき、トイレ前に砂落とし用のバスマットを置いてあげたところ、ちゃんと手足を拭いてから来るので「ヤバイ、うちの子賢い」と感動したものだったが、ソッコーまたトイレに戻って砂かけをしてしまうので、そんなに賢くない事が秒で分かった。
猫だからね。
私が歩いていると足と足の間を縫うように歩くので、踏んでしまいやしないかと非常に冷や冷やした。未だにこれをやるので今までに3回くらい尻尾を踏んで怒られたことがある。自分で危険なそこを歩いておきながら、いざ労災が起こったらこの騒ぎである。現場ネコも「よし!」とは言うまい。私としては、とても納得がいかない。
どんどん周りの友達が減って行ったせいか、私の姿が見えないと「お前そんな大きな声でたんか?」ってくらいの大声で鳴くのでお風呂もトイレも一緒の生活になってしまった。
現在は、トイレは独りで行かせてもらえるが、一話、二話でお話した通り、お風呂は未だに一緒じゃないとダメである。
――な の に -。冬以外は一緒に寝てくれなくなった。あまりにも早すぎる自立にむせび泣く。
敗因は……そう、構い過ぎたんでしょうかね? 構い過ぎるとツンになるって言いますから。
お盆休みが終わり、茶々丸を置いて仕事に行かねばならない日が来たので、前日にペットカメラを設置して、ケージに入れて出勤した。
部屋で自由にお留守番は、ちょっと事故が怖くてさせられなかった。
仕事初日は半休で帰った。茶々丸はケージの一番上の段で丸くなって寝ていた。声を掛けてケージの外に出すと物凄くンギャンギャ鳴いて後ろ足で立ったので、顔を近づけるとめーいっぱい舐められた。
誰もいない静かな家は寂しかったろうなと思うが慣れてもらうしかない。
この日、茶々丸の猫風邪の飲み薬が無くなるのと前日にノミがいたので近くの動物病院に電話をして行くことになった。
茶々丸はキャリーバッグの蓋を開けると嬉しそうに中に入った。これは、避妊手術や三度の予防接種を受けた後の今でも変わらず嬉しそうに入るので学習能力を少しだけ疑っている。
動物病院の担当の先生は女の先生で拾われた猫であることを告げると物凄く喜んでくれた。
「茶々丸ちゃんお家できたの良かったね~。目力の凄い子だねぇ。声もハスキーで、男の子みたいな顔立ちしてこんなキリッとしてるのに――」
徐に茶々丸のお尻を見て言葉を続ける。
「……女の子なのねぇ。見て見て見て、一見黒いのに逆毛立てると白いのよ? 面白~い」
めっちゃ先生に言祝がれながらの診察だった。
この時、猫風邪とお腹の中を含めた寄生虫全般のお薬を貰って帰って来た。首に垂らすだけでお腹の中の寄生虫も駆除できるという事に大変驚いた。
どういう仕組み? 謎である。
その後。
保護主さんちは、犬も飼っているので散歩をする関係からノミやダニを持ち込む可能性があるので日ごろから予防の薬を使っていたのでしょうが、知人宅では猫だけだったのでラテ姉さんの予防ができておらず、ノミに感染しただけにとどまらず、ヤンチャ丸のストレスに苛まれたせいか猫風邪も引いてしまい、本当に大変な目に遭ったとのことだった。
後に迷惑料としてラテ姉さんにはチュールを上納したのであった。