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悪役令嬢は深夜にベッドの上でほくそ笑む

 いきなりですが、今回は(初回なのに)猫の排泄物(はいせつぶつ)に関する話です。

 小学生男子でもないのに最初に嬉々としてこんな事を書くのはどうかと思います。

 常識的に考えて。

 ええ、わたくしにも常識はありますよ、なけなしですけどね。


 猫が可愛いだけではないと言う事をご理解いただくにはこの話が最適だと思いましたので書かせていただきます。


挿絵(By みてみん)


 ◆-□-◆-□-◆


 ある時、お子様連れの来客がありまして、1泊でしたのでビビりなうちの猫、茶々丸(ちゃちゃまる)(女子)は存在を消して2日間を過ごしました。

 概ねカーテンの後ろ窓枠の所におりまして、皆が寝静まった夜中に巡回、ひとりひとりの匂いを「ふんふん」と嗅いで確認しておりました。

 客が帰った後は、開け放した12畳の部屋を我が世の春と縦横無尽に走り回り、キャットタワーの上ではドヤ顔でポーズを決めたりしておりました。


 翌日、私は15時~24時までの仕事で、家に帰り着いたのは0時30分頃でした。

 帰宅して早々、酷暑の折、エアコンかけっぱなしとは言え水分補給と「良くお留守番できましたね」の意味も込めて茶々丸お気に入りのウェットのご飯をあげました。

 通常でしたら茶々丸のルーティンワーク(私の入浴の見守り)を考慮して彼女が食べ終わるのを待ってから入浴したのですが、夜も遅かったので早く寝たくて彼女を置いて部屋の戸を閉めて入浴しました。


 恐らく、ウェットを食べ終えた後、彼女は私を探したと思います。シャワーの音で何も聞こえませんでしたが、鳴いてたんじゃないかなぁとは思います。

 私がお風呂から上がって夜食を作り食べ終わる間、台所の隣の部屋で鳴いていたんですよね。「アオォォン」みたいなちょっと普通じゃない感じではありました。

 でも、今までも私が仕事から帰ってうがいや手洗いに時間が掛かった時(平日ほぼ毎日)などもそういう鳴き方をしていたのでたいして気にも留めず、食べたところの片付けを終えて2時ごろ――そう、草木も眠る丑三(うしみ)つ時、部屋の戸を開けました。


 ファーストインパクトは嗅覚に来ました。排泄物臭い。普段よりも臭い。とんでもなく臭い。

 まぁ、さもありなん。普段は匂いの拡散を防ぐ猫砂に守られた言わば乙女の秘された香りなのですから。


 ――猫はストレスが溜まったり欲求不満だったりすると餌のカリカリや猫砂をぶちまけたりする。場合によっては粗相(トイレの失敗)もする。そのくらいの事は私にも予備知識と覚悟は有りました。


 でも覚悟の桁が違った。

 セカンドインパクトは視覚。2部屋とも部屋の半分、ベランダ側に木目調のクッションフロアを敷いているのですが、そこに何か……。

 最初、黒いビニール袋の破片が散乱しているのかと思いました。それが全部排泄物であろうとは……。


 私に呆けている時間は無かった。

 即座に被害状況の確認と拡大の防止というミッションが発動する。

 手前側3畳部分は毛足のとても長いラグである。隅から隅まで確認したがそこに排泄物は確認されず、ほっと胸をなでおろす。

 ベランダ側、ぱっと見、板張りに見えるビニール床の3畳部分にのみ軟便が、20cmくらいの長さでいくつもいくつもまるで筆でシュッシュッとお絵描きでも楽しんだように擦りつけられていた。

 その跡は開け放された隣の部屋にも続いており、終点はベッドの隣に置いたドクターエア(振動させて上に乗り体幹鍛えたりする機械)の上にまで及んでいるように見えた。

 そして、この凶悪な犯行を行った犯人は悪役令嬢さながらベッドの上にドヤ顔で座っていた。


『どう? わたくしのプレゼントは気に入って?』


 そんな(たたず)まいだった。


 私は使い捨てのゴム手袋をすると床用のウェットティッシュでドクターエアから順に拭き上げて行った。その後もう一回アルコール除菌のウェットティッシュで拭いた。


 仕事上がりの夜中の2時過ぎに。


 私は床を拭きながら、ひょっとして寄生虫が? それでお尻がかゆくて? とか

 ひも状の物を呑んでしまってキレが悪くて擦りつけた? などと不安になっていましたが、結論から言えばそんな事は無かった。


 で、全てを拭き終わったと思った私が立ち上がると、その間ベッドの上からじっとこちらを見ていた茶々丸が、トンと床に降りてすたすたとベッドの下に潜り、そして「にゃ~ん」と鳴いた。

 うちの猫は滅多に「にゃ~ん」とは鳴かないので、単純な私は(茶々丸も反省してるのね? 怒られると思ってベッドの下に隠れるなんて!)などと思っていた。

 甘い、甘かった。メイプルシロップ並みに甘かった。

 茶々丸の姿を追ってベッドの下を見ると彼女はきちんと座っていた。そしてその目の前には固形のブツが……。


『下僕ほら、ここにも。忘れていてよ』


 って感じで。

 いや、ひょっとしたら嫁いびりをする姑か?

「お義母さん、お掃除終わりました」

『そう…(しゅっと障子の桟を指で拭う)あら? まだ汚れてますよ? 本当にお掃除一つもまともにできないなんて……』

 ムキーーー!!


 私はそのコロコロを回収してミッションを終わらせた。


 彼女の犯行はベッドの下から始まり、毛足の長いラグの上は汚さずに移動してドクターエアを汚し、クッションフロアを汚しながら移動し、そのまま隣の部屋の一番奥の壁際まで汚し続けたのだ。

 彼女の確信犯的な行動とこの執念に私は(おのの)いた。

 猫(こえ)ぇぇぇぇ~。

 この日私は、前々日から彼女の受けたストレスを慮り、また現行犯でない時に叱っても分からないだろうと考えて怒らなかった。かなり理性的に処理できたと思う。


 さてその翌日も同時刻の帰宅となり、ご飯をあげてトイレに行っていると・・・

「ンアォォ~ン」とまたしても猫が鳴いているようにはとても思えない声が聞こえた。「慟哭」まさにそんな感じ。

 急ぎトイレから戻って戸を開けると茶々丸と目が合った。

 動きを止めた彼女の(肛門)に小指の先ほどの軟便が!!


『あらやだ、見つかっちゃったわ。ふふふ』急におばさん化する猫への心象。


 私はティッシュをシュシュっと引っ張り出すと彼女の首根っこを素早く押さえて排泄物を拭き取り言った。


「めんどくせー女だなぁ! あぁ!?」


理性とは……。

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