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彼らの話  作者: 彼ら
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ジレンマ・クロード


卑怯だ。

卑しい下賎な感情だ。

自分だけ安全であればいい、

自分があの子じゃなければいい。

でも、それでも私は、そんな自分を嫌いになれない。

もし、私がもっと純粋で素直だったのなら、もっと清潔で真っ白な人だったなら、私はあの子を助けたのだろうか。

そんなタラレバ、考えたって無駄なことなのに。

後に残るのは苦い悔いだけ。

これじゃ私は食いしん坊じゃなくて悔い辛抱だ。

いつから私は、こんな冷たい人間になったのだろう。

世辞を言って、嘘をついて、人を叱って。

私は間違いを正すために叱っているのに、なぜ可哀想なあの子を救おうとしなかったんだろう。

ずっと前から知っていた、何年も前から知っていた。

だのに、助けようとしたことは一度たりともない。

悪い事だとわかっているのに。

いつも、いつもこうだ。

自分でわかっているのに動けない。

それとも、動きたくないのか。

体が震えるわけじゃない、緊張してるわけじゃない。

ただ、どうすればいいかわからないだけ。

私が口を挟んでいいのかわからないだけ。

いやだなぁ、後悔してばかり。

私は辛いって言葉言う資格ないし、死にたいだとかもういやだとかも言ってはいけないって重々承知してる。

それでも、見てるだけでも辛くなる。

何もできない自分がいやになる。

自己嫌悪だけが溜まっていって、爆発しそうになる。

友達同士でそれをコソコソと話すこともできない。

ずっと一人で部屋の隅、どうすればよかったのか悔い悩む日々を、心底酷く私は堪えるしかできない。

分かっている、泣く資格も謝る資格も宥める資格もなにもかも、私にはないことを。

それでもやっぱり、私の胸は傷んでしまう。

誰にも干渉されていないのに傷んでしまう。

声のない発狂ほど、私を狂わせるものはない。

送られてくるメッセージの通知ほど、私を苦しめるものはない。

ただ、毎日が同じように過ぎて、私は毎日そんな苦痛を一人で受け止めて。

助けてほしい、誰か助けて。

それでも、疑われ嫌われ、悪いヤツにされるのは私で。

誰も話を聞きはしない。

なにが、人の話を聞けだ。

それなら私の話も聞いてよ。

ああ、同じことが頭の中で何度も繰り返される。

喉が痛い、頭が痛い、痛い。

ベットの上でのたうち回って、頭を抱えて。

涙が止まらない、息ができない。

息苦しさが半端ない。

私、一体なにしてんだろ。

馬鹿みたいな悔いばっかして、そんなことしたって意味ないのに。

変わんないのにどうせ。

まあ、今日もどこかに頭を打ち付けたくなる。

不完全な私を壊したくなる。

殺したくなる。

こんな人でなしなんか、いなければいいのに。

そう思いながら怪我の手当てをする。

ああいやだ、ああいやだ。

人でなしになる人生なら生まれたくなかった。

こんな嫌な人生を送りたくなかった。

最後に一回でもいいから、あの子を助けてればよかった。

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