FC 時空(とき)の旅人
FCのマイナーゲームをやってみた感想文です。
えーと、これは明らかなクソゲーです。
誰でも初見で5分以内にクリアする事も可能です。感動も何も無いです。
心理テストとか性格診断とかというものを誰でも一度はやったことあるかと思います。トーナメント表を横向きにしたようなやつで、例えば『タバコを吸っている』で、YESかNOかの二択で行き先が二つに分かれて、そんなのを何回か繰り返して複数ある結果のうちのどれかに辿り着くっていうアレです。このゲームはアレをゲームにしただけです。全53問の二択に答えた結果、『あなたの選択だと未来はこうなります』という結果が表示されるだけです。
質問は、せいぜい2行くらいの一言で、しかも連射が効くので全部YESで良ければ1ステージ2秒くらいで終わらせる事も可能です。1つのステージに3〜6問の二択質問があり、それが11ステージあって、その選択肢によってエンディングが決まるというだけのゲームで、エンディング(結果)は5通りのマルチエンディングとなっています。
形式としてはSFC 弟切草 の原型と云えなくもないですが、こちらはFC 悪魔の招待状 のように4分割画面の左上だけに視点画面が表示され、ドット画もFC超初期、スパルタンX並みにショボい。セリフも殆ど問いだけだし、選択コマンドもYESとNOの2択しかありません。しかも、計53問の2択肢で5つの結果ルートに収束させる事が面倒だったのか所々に地雷が仕込まれていて、1/2の確率を選択した時点で即ゲームオーバーになるという滅茶苦茶な選択結果もあり、もうこれはただの理不尽な運ゲーです。
一応、ストーリーは以下のようになります。
世界は一度は核戦争によって崩壊していて、崩壊後から始まった『星歴』という新たな歴の星歴392年、ネオ・東京の時空管理局員クタジマ・トシトという男が主人公。この主人公は過去に起きた核戦争が勃発しないようタイムマシンに乗って核戦争以前の時代に飛び、歴史を改編しようと試みる、というのがこのゲームの話です。当時の時代背景もあってか、ストーリーの本筋だけは面白そうでしょ?でも、全く面白くないんです。
オープニング画面で何もせずにしばらく放っておくと、本編の前日譚や主人公の説明みたいなのが映し出されるのですが、これ、かなり放置しておかないと画面が切り替わらないため、私もiPadで攻略サイト探したりタバコに火を点けたりしてしばらく放置してしまった際に急に画面が切り替わった事で偶然気が付きました。思わず『え?隠しコマンド見つけた?』って思ってしまったほど長い放置時間を要するにも関わらず、この説明を見ないと主人公が何者なのか、何故タイムマシンに乗って旅をするのかなど、殆ど何も分からないままゲームを進めて行く事になります。
まあ、そんなこんなでゲーム本編を始めると、いきなり『まずは1582年の本能寺に行くぞ』と言われて本能寺に行き、信長に会います。そこで『切腹を止めますか?』とか『本能寺に火をつけますか?』などの質問に答えて次の時代に飛ぶというだけです。
信長は最早なんだか分からないギャグマンガ調のドット画だし、選択肢にしても正義感を出して信長を助けた方が良いのか、この時点で歴史を変えない方が後々良いのか、前に全くヒントとなるような話が無いので初見だと運でしかないです。
こんな感じで豊臣秀吉、徳川家康、天草四郎、紀伊國屋、大塩平八郎、平賀源内、赤穂浪士、西郷隆盛、伊藤博文、東条英機に会って、計53問の2択に答えて、その結果、未来がどう変わったかっていうだけの話です。
全キャラ、ドット画がほんとにテキトーというか粗くて、誰が誰なのか分からないため没入感ゼロ。また、問いが尽く曖昧で、赤穂浪士に『この討ち入りは本当に正しいか?』とか、伊藤博文に『私はみんなに好かれているか?』とか問われても、YESとNOのどっちが正解なのか分からないです。そして、最終的にマルチエンディングの内の一つを見せられても、どの選択が作用してこのエンディングに辿り着いたのか、その理由(例えば、信長が生き延びたから歴史がこういう風に変わって未来がこう変わったとか)が語られないため、歴史を改編して未来を変えるというゲームの目的というか、最も醍醐味であろう部分がまるっきり抜けてしまっている変なゲームに仕上がってしまっているんです。
5通りのエンディングは以下のようになります。
1.歴史は変わらず、日本が戦争を引き起こして核戦争勃発。世界は崩壊。
2.地球で戦争は起きなかったが、好戦国では宇宙で実機を使ってリアル戦争ゲームをする遊びがブームになっている。
3.戦争も争いも起きなかったが、人々は愛し合う事に溺れ、働く者がいなくなった。
4.日本とアメリカが戦争をして、日本人は根絶やしにされた。それを見た世界各国が怯え世界中がアメリカに服従。世界が一つの国になったので以後、戦争はなくなった。
5.世界的な食糧不足。世界中で米一粒すら奪い合うような食糧危機のため各国間で戦争どころではなくなった。戦争は起きなかった。
と、どれもあまり良くないエンディングばかりです。普通にプレイしたならば。
ただ、このゲームにはもう一つの隠しエンディングがあり、その隠しエンディングだけ『戦争もなく、人々は自然と共に平和に暮らしていた』という最良の内容になっています。
この隠しエンディングを見る方法も単純と言えば単純なのですが、オープニングの放置プレイ同様、普通にプレイしているだけでは気が付かないような方法でしか見られません。
その方法とは、まずこのゲームは各ステージの選択を全て終えるとタイムマシンが現れて、主人公がそれに乗って次の時代に飛んでいくという『ステージ繋ぎ』が入るのですが、各ステージで選択肢を選んでいる最中であってもBボタンを押すとタイムマシンが飛んできて、それまでにクリア済みの前ステージのどこかにランダムに戻る事が出来るようになっています。途中で『ちょっとさっきの選択をやり直したい』時の救済措置でもあるのかと思います(普通にプレイしていたらそうとしか思えないでしょう)。隠しエンディングは、このタイムマシンに51回乗ると突然始まるとようになっています。制作側としては『もういいよ』って感じでこの終わり方を付けたんじゃないかとも思えます。普通にプレイしたならばストーリー上でタイムマシンに乗るのは11回でエンディングです。さらに先述した通り各ステージの選択の中には1/2で即死のトラップ選択も数多く含まれているため、せっかくそれを回避して進んできたのにわざわざ前に戻ってやり直そうなんて思う人は普通なら早々いないはずなんです。それを何十回も戻ってやり直すなんて、相当こんなクソゲーにはまってしまった『ヤバイ人』か、選択先の枝を解析しようとしてる人かしかいないと踏んだんじゃないでしょうか。
そんな人たちを怒らせないように、更に、なんにしてもメーカーにとって都合の良くない無限ループをやめさせるために51回以上ループ出来ないようここで強制的に終わらせて、しかも最良のエンディングを見せてヤバイ人たちの目くらましに使ったんじゃないかと思います。でなければ、一般人が到達できないこんなところに最良のエンディングを置かないでしょう。
また、このゲームのラベルやパッケージには眉村 卓 原作のアニメ映画『時空の旅人』のイラストが描いてありますが、映画とは登場人物含め全て全く関係がありません。
発売当時もパッケージに騙されて即買いした人以降全く売れなかったようで流通本数も少なく、最近になって中古価格が高騰してきている一本のようですが、これはプレイする必要もなければ、所有していてもなんの自慢にもならない作品なので、全くお薦め出来ない一本です。
残念ながら評価出来る点が見つかりませんでした。