4-15. 朽ち果てた思い出
森の上空に瞬間移動してきたユリアたち――――。
オンテークは以前と変わらず壮大な火山としての威容を誇り、広大な森の中にそびえていた。百年経っても開発の手は入っていないらしい。
近づいて行くと断崖絶壁に開いた洞窟は崩落し、入り口が埋まっている。
「へっ……!?」
ユリアは両手で口を押さえ、真っ青な顔で震えた。
どう見ても誰かが住んでいるようには見えない。
ユリアはフラフラと埋まった入り口にたどり着くと、崩落している岩のすき間をぬって奥へと進んだ。中はカビ臭くジメジメとしており、長く誰も住んでいないように見える。
神殿まで来ると、カビとホコリで純白の大理石は黒く汚れていた。
「酷い……」
ユリアは肩を落とし、目に涙を浮かべながらトボトボと神殿の奥を目指す。
扉が朽ち果て、床に散乱し、無残な姿をさらしているのを乗り越え、突き当りの部屋まで来たが……、そこもただの廃墟だった。
二人の想い出のベッドはただの朽ちた木片となり、原形をとどめていない。
ユリアはヨロヨロと近づき、そっとその木片を拾い、そしてグッと握りしめ嗚咽を漏らした。
二人の大切な思い出は朽ち果て、ジェイドはこの星にはいないのだという事が分かってしまった。
「結婚するって……約束……したのに……」
ユリアはもう身体を支える事も出来ず、そのまま木片の上に崩れるように倒れ込むと、大声で泣く。
しばらく洞窟の廃墟にはユリアの悲痛な泣き声が響き渡っていた。
◇
「あのぉ……」
ユリアが泣き疲れ、呆然自失としていると、ネオ・シアンが話しかけてきた。
ユリアはうつろな目でネオ・シアンを見る。
「何かヒントをもらってたりしないですか?」
「ヒント?」
「もしですね、私の元となった方が私と同じ考え方をする人であれば、こんな状況を放置しないと思うんですよね」
ネオ・シアンは首をかしげて言う。
ユリアは必死に考えてみるが、オリジナルのシアンは『ブレスレットを引きちぎったらどうなるか知らない』と言っていたのだ。ヒントなど残さないだろう。
「そんなのは……聞いてないわ」
ユリアは首を振った。
だが、ここでふと違和感がよぎった。シアンは好奇心旺盛で、研修期間中もいろんなチャンスを逃さず知識を増やそうとしていた。だとしたら、『知らないから何もやらない』なんてことあるだろうか? 何か少しでも情報を集められるような工夫をしてる方が妥当ではないだろうか?
この星が新たな宇宙になる可能性があるなら、なった後に情報を収集できる仕組みを残しておいてもおかしくない。
「そうよ!」
ユリアはガバっと飛び起きた。
何かを残すとしたらどこか? それは長く人目に触れない所、そして、ユリアが必ず訪れる所……。ここだ。ここ以外考えられない。
ユリアは神の力で部屋全体をくまなくサーチしていく。部屋が終わったら廊下、キッチン、そして神殿。最後に残された手掛かり、それにすがるように洞窟の中を隅々まで必死にスキャンする。
しかし、何もそれらしきものは見つからない。
「絶対何かあるのよ!」
ユリアは自らを鼓舞し、再度丁寧に探し始める。壁の中に天井に床に大理石の中まで丁寧に調べつくしていった。
だが、何時間かけても何も見つからなかった。
ユリアはうなだれ、泣きべそをかきながら立ち尽くす。
「だ、大丈夫……ですか?」
ネオ・シアンが声をかける。
ユリアはバッと顔を上げると、
「こんな汚いから気分が滅入るのよ! 生活浄化!」
そう言って両手をバッと上げると、神殿全体に全力の浄化魔法を放った。
神殿全体がブワッとまばゆい輝きに包まれ、長年染みついた汚れが分解され、浄化されていく。
と、この時、壇上の供物台の上の空中に、光り輝く立方体が見えた。
「へっ?」
ユリアは一瞬目を疑った。なぜ、空中に浄化される場所があるのか?
光がおさまるとそれは見えなくなったが、よく見ると、そこの部分だけ背景の模様が少しずれて見える。光学迷彩だった。




