誤字脱字の原因はいつだってネズミ
「あんなに確認したのに……」
上司に送ったメール、提出したレポート、好きな人へのメッセージ、SNSの投稿に誤字脱字があったことはありませんか?
何度も何度も確認したのに潜んでいる誤字脱字。
念には念を入れて周りの人にも校正してもらったのに現れる誤字脱字。ありませんか?そんな経験。それ、実はあなたは悪くないんですよ。ちゃんと原因があるんです。
原因、それはネズミです。
ネットの世界にもネズミがいるって知っていましたか?あら、ご存知ない。このネズミ、なかなかの曲者です。ネットの海に上がった文章の文字を気ままにかじってしまうんですよ。かじられて起こること、それが「脱字」なんです。
あ、疑ってるでしょう?でも、心当たりがありませんか?「絶対にもう大丈夫だ」と思っていたのに文字が抜けていること。あるでしょう?あるはずです。その原因がこのネズミなんですよ。あいつら文字をかじり取ってどこかへ持って行ってしまうんです。
最近だと、某ハイブランドの通販サイトで販売価格の0がいくつか足りなくて非常に安い価格で販売されていたっていうニュースを見ませんでしたか?そうあれはこいつのせいだったんです。0がいくつもかじり取られていたんです。
あとあれもそうです。史実に基づいた中国の歴史小説のWEB連載。その戦闘シーンで、五万人の軍と四万人の軍の戦いが、五万人対四人の戦いになっていたのもネズミのせいです。
あれはひどかったですね。運悪くかなりたくさんのネズミが通ったせいで戦闘シーンがまるまる取られちゃったんですよね。
五万人の前に四人が立ちはだかったかと思えば、もう次の行では後日談が始まっていました。そしてその後日談では先の戦いは四人の軍が五万人の軍に大勝したと村人たちが話していました。
「四人の兵士が五万の軍をあっさり打ち破るとかクソワロタwww」
ネットが騒ついたのは先週の話なので記憶に新しいかと思います。
さて、このネズミには実は天敵がいるんです。あ、わかります?ネットの海にもネコがいるんですよ。ネズミを見つけるとすごい勢いで追いかけます。
でもこいつがまた厄介なんですよね。ネコが周りを気にせず追いかけ回すから文字を乱しちゃうんですよ。で、発生するのが誤字です。
入力した時は問題がないのに、ネコが走っている時に文章にぶつかると変換が更新されちゃって誤字になることがあるんです。本当に迷惑な話です。
つい最近だと、あのWEB小説の事例なんて有名ですよね。主人公の没落貴族が国王の誕生祭の最中、大勢の国民の前で国王の不正を暴いて失脚させるという大一番で誤字脱字が大量発生しました。中でも一番衝撃的だったのが、
「国王よ!お前が私欲を満たすために無意味な戦争を行い、度重なる徴兵や増税をするせいでこの国は疲弊している。お前の圧政のせいで神がどんな生活を強いられているのかわかっているのか!」
主人公のセリフの中の「民」と「神」の誤字はスクリーンショットが撮られSNSでも配信されました。そして
#民と神
#神に圧政を強いる国王
のハッシュタグがバズりましたね。
作品のコメント欄は大炎上しました。
誤字発覚後「悲報、あの没落貴族作者誤字るwww」といったスレッドがたくさん立ち、スレッドはもう本当に大盛り上がり。今もまだ新しいスレッドが立ち続けています。
先日、作者は投稿前にしっかり校正したと言って投稿前の原稿を開示したけれど収拾がつかず、今も尚休載中です。SNS上では作者の擁護派とネタにする派で言い争いが勃発している、あの件の原因もネズミとネコだったんです。
因みにネズミとネコの名前はまだ決まってないらしいんですよ。新種の生き物なのでそのうち決まるとは思いますが、ネコの名前は今のところシンプルですが二文字で「トm……
「おい、お前何さっきから講釈を垂れてんだ。長々と言い訳してんじゃねえよ」
「いやいや、言い訳じゃないですって。誤字脱字の理由を説明してるんです」
「お前が取引先に送ったこの見積もり書。そもそもお前のデスクトップのデータもミスってんじゃねえか」
「いや、だからそれはネズミが……」
「黙れ!お前の目は節穴か!よく見やがれ。これはなんだ?」
「…………私が見積書を先方に送る前に誤字脱字がないか確認しようと思って印刷した書面です」
「じゃあ聞くがこの印刷した書面は正しい内容なのか?」
「0が足りてなかったです…………」
「こんな所で長々と言い訳言ってねえでさっさと先方に詫び入れてこい!」
このやりとりの翌日、世界的有名な学術誌であるナチュラルにネットの世界でいたずらをする新種のネズミとネコが見つかったという論文が掲載された。もちろんネズミとネコの名前はあの有名な作品に因んで……
投稿前に何度も校正しています。
でも、もしこのお話に誤字脱字があったとしたらそれは……