協力してもらおう
現在の軍では、強い復讐心を抱いた人は採用しません。そういう人は感情に振り回され命令に背いたりすることが往々にしてあるからです。
しかし、今回の彼については、あくまで作戦の準備にのみ参加するだけですので、問題ないでしょう。ですが念のため、少佐にも確認を取ります。
「構わない。協力してもらおう。ただし、こちらの指示には従ってもらう。それが条件だ」
こうして山羊人達の参加も承認されました。しかも、その後も次々と希望者が現れます。最終的には、集落の三分の一、働き盛りの男達の四分の三が参加したことに。
事実上、山羊人達の集落そのものが参加したのとほぼ変わらないという結果に。
彼らとてゴヘノヘに対する複雑な思いはあり、何とかしたいと願ってはきたのでしょうね。
私達はそれを酌みたいと思います。
ゴヘノヘの出現が遅れていたのがこれを招いたという皮肉な話です。彼らにその決断をするだけの猶予を与えたのですから。
そして、それを確認したかのように、
「ロロロロロロロロロロローッッ!!」
はるか遠くから届いてくる声。梟人の斥候による警報です。
「ゴヘノヘガ、キタ!!」
斥候の声を聞きとった梟人の報告。
<よろずや>にも連絡要員として配されていた梟人が、私に告げました。
「!?」
赤ん坊と一緒に横になっていたトームがハッと体を起こします。
でも私は、彼に、
「今回の作戦におけるあなたの役目は、ここまで。ここからは、ノーラと赤ん坊とクレアを守って。分かった?」
私はそう命じます。
「……ワカッタ…!」
彼はギュッと拳を握り締めながら、緊張した表情で応えました。
ようやく、赤ん坊が、隣に彼が寝ても警戒しなくなってきたのです。それを守るために私は行きます。
獣の毛皮と獣蟲の外殻を利用した簡易のプロテクターを身に付け、私は迎えに来たラレアトに、
「後は私達に任せて! ラレアトはみんなと一緒に避難を!」
声を掛けます。
「ケガ、シナイ、デネ…!」
気遣ってくれる彼女の頭をそっと撫でると、柔らかい毛の心地好い感触が何とも言えない気分にさせてくれます。
リラックスしながらも、この愛おしい存在を守らなければという強い使命感が込み上げてくる感覚。
「いってくる!」
気持ちを新たに、店の前で見送ってくれたラレアト、クレア、トームに手を振り、連絡要員として駐在していた梟人と共に森へと走りました。
そうして少佐と合流。
ゴヘノヘが確認されたことで、猪人達と伍長は、当然の如くすでに先陣を切って進出していたのでした。




