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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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理不尽にもほどが

トームの赤ん坊は、完全に彼を警戒していました。


無理もありません。いくら血が繋がっていても赤ん坊にとってトームは<見ず知らずの他人>。声さえ聞いたことがないんです。それをいきなり、


『父親として慕え』


なんて、理不尽にもほどがあります。だから彼が手を差し伸べようとした途端、赤ん坊は完全にクレアの後ろに隠れてしまいます。


「トーム。気にしないで。これからゆっくりと仲良くなっていけばいいんだから」


「……ウン…」


頷いてはくれたものの、彼は少なからずショックを受けていたようでした。


そんな彼に、少佐が言います。


「トーム。まずは赤ん坊に慣れてもらうところから始めよう。私達は君の味方だ。時間はいくら掛かっても構わない。赤ん坊に受け入れてもらえるまでここに住めばいい」


私も続けて、


「そうです。私達も協力します。ここで無理をしたらそれこそ赤ん坊に嫌われてしまいます。赤ん坊にとって<怖い人>にならないようにしましょう!」


と。


私達軍人は、テロ対応の一環として、子供を利用したテロを想定した訓練も受けます。その中で、可能であればその子供を保護することも視野に入れていました。


ただし、それを実行するのは、戦闘用メイトギアをはじめとしたロボットですが。ロボットであれば万が一自爆攻撃に巻き込まれても修理すればいいですし、修理ができないほどの破損であっても、バックアップデータを新しいボディにインストールすれば復帰できます。


完全に事情を知らず本人に自覚なく爆弾などを背負わされて遠隔操作によるものの場合でも、まずは救出を試みます。


また、洗脳などの上で『自分の意思で』自爆スイッチを握っている場合などは、説得も試みるのです。


ロボットが。


それがどの程度の効果があるのか?と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これが実は結構な割合で成功するのだと聞きました。


子供に、まず、『敵ではない』と認識してもらうことから始めます。


これの成否が、ほぼ、最終的な成否に直結するのだそうです。


子供は非力で弱いがゆえに、自身にとって相手が有害か否かを敏感に感じ取ります。そして一度<敵認定>されてしまうとそれを覆すのは容易ではありません。


非力であるからこそ。


『自分は父親なんだから懐くのは当然だ! 従うのは当然だ!』


などという態度で臨むのは<悪手>以外の何物でもありません。


顔も知らない相手から、


『自分はお前の父親だ。四の五の言わずに慕え! 従え!』


と言われて素直に慕えますか? 従えますか? それ以前に信用できますか? 


つまりはそういうことなのです。



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