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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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恩返し

ゴヘノヘを撃破するための<罠>に必要な丸太の運搬をトームは黙々と行ってくれました。彼としては、ノーラと赤ん坊の面倒を見ている私達への<恩返し>のつもりもあったようです。


正直、私達にとってノーラと赤ん坊との暮らしはむしろ楽しくて、彼に対して恩を売るようなものではありませんでしたが。


ドラマや映画などでは、こういう時、迷惑顔で恩着せがましいことを言う登場人物がいたりしますが、私にはそれが理解できませんでした。


『そこまで迷惑に思うのなら最初から引き受けなければいいのに』


と思うからです。


私も、迷惑に思うような相手なら最初から引き受けません。先に公的なセーフティーネットを頼るべきだとも思いますし。


ドラマの中では、『施設に預けることで離れ離れになるのが嫌だ』みたいな理由が述べられたりもするのを見たものの、いえいえ、他人に預けているのならそれはもう施設に預けているのと同じではないですか。


むしろ施設の方が、設備も整っているでしょうし、何より施設はそういう事情を抱えた人を受けれるのが役目です。それを利用しなくてなんとするんですか?


私達は、望んでノーラと赤ん坊を受け入れました。これは私達自身の判断であり望みです。ノーラとトームが共倒れするのを見たくなかったからです。


『ノーラとトームが共倒れするところを見たくない』


という私達の個人的な願望を叶えるために受け入れたんです。恩を売るためにしたんじゃありません。


ですが、トームとしてはそれでは気が済まなかったのでしょうね。


本音では、彼の下に赤ん坊を返すことに不安がなかったわけではありません。けれど、彼ならば、きっと、あの子を大切にしてくれるでしょう。




この日の作業を終え、トームは<よろずや>に泊まることになりました。山羊人(やぎじん)達は避難の準備をしているからです。また、時間的な余裕はないものの、だからと言ってあまり過酷な労働を強いて事故でも起こって犠牲者が出ればそれこそ何をしているのか分かりません。二交代制のシフトを組んでおり、今は彼の代わりに伍長がシフトに入っています。


そして、


「ノーラ……」


久々にノーラと再会したトームが声を掛けると、


「あ~っ!」


ノーラも声を上げて彼に抱き付きました。彼女もちゃんと彼のことを覚えていたのです。彼への想いと共に。


『よかった……』


その光景に、私もホッとするものを感じました。


ただ、赤ん坊の方はと言うと……


初めて見る男性の姿に明らかに警戒して、母親のノーラではなくクレアに抱き付いてしまったのでした。



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