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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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目標は高く

『オレハ、テツダウ!』


声を上げたトームに、山羊人(やぎじん)達がざわめきます。けれど、ノーラのような<足手まとい>と番う彼に賛同してくれる者は他にはいませんでした。


正直、トーム一人では焼け石に水ではあるものの、それでも手を上げてくれたことに感謝しつつ、彼にも加わってもらいました。


「君には、武器となる丸太を運んでもらいたい」


そう。決して猪人(ししじん)ほどは戦闘に適さないものの、山羊人(やぎじん)は体つきの割に力が強く、かつ持久力もあり、物資の輸送に協力してもらえればと思ったのです。


もっとも、トーム一人では運べる物資にも限りがあります。準備できるものが減ってしまいますが。これについては落とし穴の効果をより高めることを目的にしているだけなので、最悪、準備できなくても仕方ないと割り切りました。


次に鼠人(そじん)


彼らも罠の準備を手伝ってもらうだけでしたが、山羊人(やぎじん)の全面協力が得られなかったことで、あまり必要でもなくなってしまいました。


それでも、


「協力しよう!」


鼠人(そじん)(おさ)は、ここまでで一番快く引き受けてくれました。


なので彼らには、今回は必要なくなってしまう可能性は高いものの今後に向けての訓練も兼ねて、丸太作りに協力してもらいます。彼らの鋭い歯と強力な顎は、人の足程度の太さの木であれば、ほんの数分で齧り倒してしまうのです。


次の梟人(きょうじん)については、従来から監視役として協力してくれていましたが、今回は監視役としてだけではなく、彼らのよく通る<声>で、通信及びゴヘノヘの気を引く役目も担ってもらいます。


複数で同時に可能な限りの声を発して、ゴヘノヘを混乱させる感じでしょうか。


そして最後の山猫人(ねこじん)には、申し訳ありませんが<囮役>をお願いしに行きます。


ただし、彼らはネコの特性を備えてるだけあって非常に身軽で、前回、犠牲になった一人は、元々年老いて思うように動けなくなっていたことで逃げられなかったのだとか。


若く健康な山猫人(ねこじん)であれば、ゴヘノヘすら余裕で振り切れると彼らは豪語していました。


臆病かつ気まぐれな彼らですが、それでも山猫の攻撃性も同時に備えています。真っ向戦うには非力であっても、忌まわしいゴヘノヘを翻弄し、梟人(きょうじん)と共に攪乱によって注意を散漫にすることで勝利を呼び寄せるという役目には興味を示してくれたのでした。




「では、作戦(ミッション)開始!」


少佐の掛け声と共に、ゴヘノヘを迎え撃つ作戦が始まります。


今回の作戦目的は、ゴヘノヘの撃退以上に、犠牲者を一人も出さないということ。


他の獣人達はともかく、ゴヘノヘに真っ向から挑もうとしてる猪人(ししじん)について『一人も』というのはさすがに厳しいですが、目標は高く設定するのも士気を上げる方法の一つではあるのです。



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