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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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巡る季節

季節が巡り、はっきりと<四季>と呼べるような気候の大きな変化がないここでも、やはり多少の変化はあります。


朝、顔を洗おうと水場に行くと息が白くなります。もっともそれも、基本的には朝の早いうちだけですが。


昼になれば上に一枚羽織る程度で十分に凌げますし。


そういう意味でも生きやすい環境と言えるでしょうね。私達にとっても幸運でした。


そしてこの季節が来たということは、ノーラの赤ん坊との別れが迫っているということでもありました。


ノーラのパートナーであり、赤ん坊の父親である山羊人(やぎじん)のトームがいるグループが帰ってくるわけで……


トームがいる山羊人(やぎじん)達のグループは、主食となる植物の生育具合に合わせて集落を点々とするという習慣を持っています。


ただ、軽度とは言え発達障害を持つノーラはグループにとっては足手まといであり一緒に行動できないので、私達と一緒に暮らしているのです。


しかし赤ん坊の方は、特に問題がないようであれば山羊人(やぎじん)としての暮らしに戻すべきというのが私達の結論でした。


でも、こうして一緒に暮らし世話をしてると、やっぱり情も移ってしまうと……


正直、このままここで暮らせばいいとも思ってしまうんです。


特に、伍長とクレアに挟まれてすごく嬉しそうにしてる赤ん坊の様子を見ると、ね。




一方で、猪人(ししじん)の集落でも何やら動きがあったみたいでした。


<まじない師>であるバンゴが彼の役目である<まじない>をしていると、大変な凶兆を告げる結果が出て、


「戦士は戦いに備えよ!」


と指示が飛んだのだとか。


そのことをブオゴが店に来て、


「オマエトノショウブ、アズケル」


と告げたことで私達にも伝わりました。


「私は<占い>の類は信じないものの、彼らにとっては信じるに値する情報なのだろう。それに、彼らには私達人間が失ってしまった鋭い感覚が備わっている可能性も否定できない。それが危険を伝えてきているのだとすれば、備える価値は十分にあると私は思う」


少佐のその言葉に、いつもは反発することも多い伍長でさえ、


「ああ、俺も同感だ…!」


と言った上で、険しい表情になり、


「ついでに言やあ、俺の<鼻>も、言ってんだよ。『ヤバいことが起こる』ってな。あの時と同じだ……」


そう呟いたのでした。




『あの時』


それは、私達がここに現れる以前、伍長が一人で獣人達と一緒に暮らしていた頃のこと。


基本的には穏やかに暮らしていけるここを襲った<災禍>。


これから先は、それについて詳しく触れていきたいと思います。



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