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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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仲のよい家族

「ユキ~! ユキ~!」


もうすっかり自分の足で歩けるようになったノーラの赤ん坊は、片言ながら言葉も話すようになっていました。


そしてますます伍長に懐いているのです。正直、おっぱいをもらうためにノーラの下に戻る時以外は、伍長にべったりだと言ってもいいでしょう。


「おう」


伍長もまんざらでもなさそうな様子で応え、赤ん坊が抱きついてくると、頭を撫でたりしています。


しかも赤ん坊は、クレアにも懐いているのです。


「ク~! ク~!」


伍長に抱きつきながらクレアに向かって手を伸ばし、彼女を呼びます。


するとクレアは、赤ん坊と一緒に伍長に抱きつきました。


「~♡」


すごく嬉しそうです。


その姿は、とても仲のよい家族に見えました。


私はそんな三人を見て胸があたたかくなると同時に、締め付けられるような複雑な気持ちになります。


「ユキ、あまり情を移すと……」


私の気持ちを代弁してくれるかのように、少佐がそう口にしました。


少し悲しそうな表情で……


それに対して、伍長は、


「ああ……分かってる…分かってるんだけどよ……」


いつもの彼らしくない歯切れの悪い返事。


確かに、伍長も分かってるんでしょう。いずれ赤ん坊は、山羊人(やぎじん)である実の父親の下に帰されるということは。


けれど、こうやって懐いてくるのを邪険にするというのも何か違うのではと、私も思ってしまうのです。




こういう時、人間社会では、子供本人の希望が優先されます。


何らかの事情で一時的に里親に預けられていた子供が、完全に里親の方に懐いてしまい、実の親の下に帰ることを拒んだりした場合ですね。


そのようなことにならないためにも、本来なら実の親とも頻繁に面会するようには図られるのですが、虐待などの事情の場合はその限りではありません。そういう事例だとそれこそ実の親の下に帰されることについては非常に高いハードルがありつつも、そうではない、親の疾病や止むに止まれぬ事情から罪を犯し収監されていた場合などでも、結果として里親の方に強く懐いてしまうこともあるそうです。


そういう事例については、時間を掛けて親子の関係を取り戻すように努力はされるものの、それでもなお子供の気持ちが実の親の方に戻ることがなく、里親も承諾した場合には、敢えて戻されないこともあるのだと。


もちろん、そんなによくあることではないそうですが。


今回の件は、確かに不安はあります。父親の下に戻しても果たして上手くやっていけるのかどうか。


赤ん坊には今のところ、ノーラのような発達障害の傾向は見られないので、その点では大丈夫だと思いつつも……


悩ましいところです。



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