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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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生態

もう一つの皮袋も投げつけて吸収させると、デルラは、慌てるでもなく、しかし迅速にその場を離れ、少佐と伍長もそれに続きました。


しかし、少佐と伍長はあれの調査が目的ですので、途中でデルラを見送ります。


「アブナイゾ」


とデルラは忠告してくれますが、危険なのは分かっていますし、その上で既に分かっているあれの<生態>と言うか<反応>と言うかを参考にして、崖の上から安全を確保しつつ観察しました。


すると<透明で不定形な謎の存在>はしばらくうねうねと動いて、吸収しなかった植物を輩出。満足したかのように河の中へと消えていったそうです。


その様子だけを見ると、食事を終えた<生物>が寝床に帰っていくようにも思えるのですが。


でも実際に、汚物の入った皮袋を投げつけると、基本的にはしつこく追ってくるわけでもないそうです。となると、やはり活動用のエネルギー吸収が目的で、すでにデータを得ている生物についてはあまり興味を示さない?


このようにして、獣人達はあの<透明で不定形な謎の存在>については、その危険は承知しつつも、恐れながらも、上手く利用しているのが改めて確認できました。


危険な存在にただ怯えるだけでなく、そのあり方を理解し、適度な距離を保つ。実に合理的です。


きっと無闇に排除を試みれば多くの被害が出るでしょう。<危険な敵>は単に排除すればいいというわけではありません。


人間が滅亡を免れて今も繁栄を続けられているのは、実はそれに気付いたからだといわれています。


危険な敵だからといって一方的に排除しようとすれば、相手も当然、排除されまいとして抵抗してきますからね。


この、普通なら子供にでも分かりそうな単純な道理に気付くまで、人間は何度も滅亡の危機を迎えたのだと歴史は教えてくれています。


お互いに相手を排除するために強力な武器を準備し、使えばもう待っているのは破滅という状況なのに相手を排除しようと目論む。


漫画じゃないんですから相手が何も抵抗せずにいなくなってくれるわけがないじゃないですか。


当時の人間達は何を考えていたのでしょうか? 理解不能です。


もっとも、今も、戦争を放棄したという建前にはなっているものの、実際には局地的な紛争そのものは完全にはなくなっていませんし、私達も何度かそういう形で戦場には派遣されていますので、あまり偉そうには言えませんが。


ちなみに私の部隊でも、これまでに二人、体の半分以上を失う重傷を負い、義体化によって一命を取り留めた隊員がいます。


なお、再生医療が進み、四肢の欠損くらいまでであれば再生も可能なものの、一度に全体の四十パーセントを超える部分を再生することは禁止されていますからね。そこまでになるとクローンを作るのと変わらなくなってくるということで。



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