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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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心の支え

クラレスは、以前にも話したとおり、データヒューマンとしてシミュレーター内と思しき世界にいた時に、突き付けられた現実と向き合いきれずに精神を病みました。


その後、パートナーとなったメンバーに支えられたことで回復しましたが、このことによって、彼女には精神的な支えとなる存在が必須であることが判明したと言えるのかもしれません。


惑星探査メンバーに選出される際にも様々な心理テストは受けていたとは言え、謎の<怪物>の襲撃とデータヒューマン化といった特殊な事態が立て続けに起こっては、心理テストの前提さえ無意味なものになっていたでしょうから、それで彼女を責めるのは酷というものだと私は考えます。


だから、もし、この<クラレスに似た誰か>が彼女の記憶と人格を持ち、そして精神的に不安定になったとしても、それを責める気にはならないでしょうね。


私自身、少佐を心の支えにしていますから。少佐がいなければ、正気を保っていられた自信がありませんし。


そうして、私達が見守る中で、


「ん……」


<クラレスに似た誰か>


が意識を取り戻しました。


「!」


瞬間、緊張が奔ります。彼女がどういう反応をするのか、身構えてしまって。


けれど、


「……? ?」


ベッドの上で体を起こした彼女は、まず自分に掛けられていた<毛皮のシーツ>を手に取り、ふんふんと匂いをかぎだしたのです。


この反応に、私は、


『ああ……』


と心の中で声を上げつつ。ホッとしたような、残念なような、何とも言えない気分になりました。


明らかに、<人間としての知性>が感じ取れないその反応……


彼女は、<クラレスに似た誰か>は、外見こそ<クラレス>のそれを持ちつつも、間違いなくクラレス自身ではないと私は感じずにはいられませんでした。


それと同時に、<クラレスとしての自我>がないのであれば、きっと、今の自分の境遇を嘆くこともないと思います。


それだけが救い、ですね……




その後、数日が経過してもクラレスとしての自我が目覚める様子もない彼女も、<よろずや>の一員となりました。


しかも、知能自体、乳幼児並みしかない様子。


ただ、記憶力は子供並みにあるようで、丁寧に教えてあげればいろいろと理解はできるのは助かります。


なので、新しく赤ん坊が来たという(てい)で彼女と接しました。


トイレ、食事の仕方、そして私達の名前。


「びあんか…とーい…ゆき……」


果実を食べながら私と少佐と伍長を順番に指差し、彼女は応えてくれます。


「そうだよ、よくできたね、クレア」


<クレア>と名付けた彼女に、私は微笑んでいたのでした。



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