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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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猪人ブオゴ

猪人(ししじん)


私達人間の印象からすると<(いのしし)>を思わせる、いえ、それどころか完全に猪の意匠を持つ頭部、全身を覆う焦げ茶色の剛毛、木刀で殴った程度ではびくともしなさそうな骨太さに加え尋常じゃなく強靭な筋肉の上に装甲のような脂肪の層が乗っている体つきが印象的な獣人です。


で、その性格は一言で言うと、


『豪放磊落』


って感じでしょうか? 物事をあまり深く考えず(まあこれは獣人全体に共通する傾向ですが)、かつ直情的。加えて、<強さ>に大変に拘っているようで、負けることを何より嫌います。


そして、強そうな相手と見るとだれかれ構わず挑みかかって力比べをしたがると。


はっきり言って、相堂(しょうどう)伍長の同類ですね。


なので、相堂(しょうどう)伍長とブオゴは、寄ると触ると<勝負>を始めてしまうのです。今日も、


<ユキ! ショウブ!!>


などと言いながらブオゴが<店>に現れたので、相堂(しょうどう)伍長はそれに乗って出ていってしまったという。


私はノーラの出産に備えないといけないので、その間の<店番>をしてもらうために残ってもらってたのに、本当に困った人です。


なのに、今では仲良さそうに肩を組んで笑ってる。


わけが分かりません。


と思ったら、


「これで六勝五敗! 俺の勝ち越しだな!」


相堂(しょうどう)伍長がそう口にした途端、ブオゴの気配が変わるのが分かりました。


「チガウ! オレ、ロッカイ! ユキ、ゴカイ!!」


言語能力は精々人間の三歳程度くらいのはずなのに、なぜか勝ち負けに関する話となるとやけに勘が働くようで、相手の言葉の意味を確実に察するのです。ブオゴは。


そしてそれは相堂(しょうどう)伍長も同じ。いえ、『言語能力は三歳程度』という部分ではなく、『勝負に関することだけは異様に勘が働く』という点についてですが。


「またか……」


私は頭を抱えずにいられません。


「俺が勝ち越してる!」


「オレダ!!」


などと言い合いを始めたと思ったと同時に、


ガツン!!


と固いもの同士が激しくぶつかる音がしました。相堂(しょうどう)伍長とブオゴが、お互いの頭をぶつけ合ったのです。


シルエットは人間のそれに近くても、身体能力は猪のそれと大差ない猪人(ししじん)と頭突きし合ったのに、相堂(しょうどう)伍長はまったく怯む様子も押される様子もありませんでした。完全に互角なのです。


これが、相堂(しょうどう)伍長の<能力>でした。


彼は純粋な人間だったはずなのに、生まれつき筋力が異常に発達していて、医師に、


「ゴリラ並みです」


と言われたそうです。


この彼の能力のおかげで、私達は、この世界で生きてこられたというのも確かにあったのです。



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