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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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トーム

今後、彼らがノーラのような存在とどう折り合っていくことになるのかは、私達にはまだ分かりません。でも、彼らがそれを望むのなら、協力したいとも思うんです。


体を洗い終えて洗濯済みのオムツを着けて、食事を終えたノーラに渡すと、彼女は赤ん坊を胸に抱いて、赤ん坊は自分でおっぱいに吸い付きました。


いろいろと大変な面もありつつも、その光景は私をホッとさせてくれます。


完全に野生の場合は、自力で生きていけない個体については淘汰されるのが自然でしょう。ですが、ある程度以上の知能と社会性を持つ生物の場合は、<情>というものが生じるケースが多いらしく、明らかに自力で生きていけない個体についても何とか保護しようとする傾向が見られることも多いとのこと。


ただし、社会基盤が整っていない場合には、保護しようとした側も併せて共倒れになることも少なくないとの説もあります。


私達も、ここで獣人達の様子を見ていてそう感じました。


ノーラも、子供のうちはまだよかったのですが、成体になってからは明らかに群れの足手まといになっていて、でもノーラのパートナーとなった<トーム>は彼女のことが見捨てられず、助けようとして、結果として自身の食事が疎かになっていました。


加えて、仲間からトームも一緒に疎外されていたのです。非情ではありますが、今の山羊人(やぎじん)達にそれを受け止められるだけの社会基盤がないのならそれも止むない選択でしょう。


ただ、そんな仲間達にも、


『ノーラまでは受け入れられないがトームは守りたい』


という者も少なからずおり、


『トームがノーラを守りたいというのなら……』


的な意見も一部ではあるようです。


その中で伍長がノーラを保護してしまったことで、少佐も、


「ノーラは私達が守ろう。なので、戻ってきた時に会えばいいよ」


ということで預かり、トームは年に三十日ほど、ノーラと一緒に過ごすという形になっています。


その時のノーラとトームは本当に仲睦まじくて。




人間社会でも、


『自力で生きられないようなのは見限るべきだ』


みたいな意見はいまだに根強く残っています。


しかし、人間の場合は、


『同族に対してさえ安易に『見限ってしまえ』的な発想ができることは、それ自体が実はリスクである』


ということが分かっています。


人間は、共に助け合うことでしか生き延びられない非力な生き物なのです。その人間が、


『同族を見限る』


というのは、生存戦略としては結果として自身が生き残る確率を下げることに繋がるとのことで。


私達、惑星探査チームにおいても、万が一、取捨選択を迫られた時、積極的に他人を切り捨てようと考える者こそを、<全体を危険に曝すリスク>として切り捨てることが、非常時に備えたマニュアルに記されています。



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