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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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ちょうどいい出来事

赤ん坊の呼吸を確認し、私はナイフ(と言っても、砂鉄を大量の木炭と共に焼いて還元したただの鉄片を素人が石で研いだものなので、私の主観では<ナイフ>などと称するのもおこがましい刃物もどきですが)で臍の緒を切り、植物の強い葉脈などから作った糸で縛り、処置しました。


ノーラには水を与えてしばらく休んでもらい、その間に赤ん坊を産湯に浸からせ清潔にし、綿でくるんで保温します。


この<綿>も、本来の綿花から作られたものではなく、別の植物の繊維を煮沸してほぐして洗って不純物を除去し、綿のようにまとめたものですが。それでも非常に綿に近いことから代替品としてたいへん役立ってくれてます。


しかもこの代用綿、そのままで抗菌作用があるのですごくありがたいんですよね。


獣人達はそのことを経験上知っていたのか、食べ物を代用綿の原料になる植物で包んで保存するということを自分達で編み出していました。私達はそれを応用しただけです。


「みぃ…みぃぃ……」


元気に鳴き声を上げる赤ん坊を抱き上げノーラに抱かせると、彼女は教えもしないのにちゃんと自分の乳を含ませました。赤ん坊の方も、自然とそれを飲んでくれます。


人間は<幼児期健忘>によってある時期以前の記憶を思い出せなくなるのが一般的ですが、どうやらここの獣人達は、少なくともまだ母から乳をもらってた頃までの記憶はあるらしく、教えなくても自然とそれができるのです。


こうして生まれて初めての乳をもらった赤ん坊は、満足したのかすうすうと眠ってしまいました。


するとノーラがまた、


「う~っ!」


と呻き出します。


<後産>です。胎児がいなくなったことで不要になった胎盤が剥がれ落ち、体外に排出される現象ですね。これもなかなか辛いものらしいと聞きます。


ですが、それも無事に終わると、ノーラは出てきた胎盤を手で掴み、そのまま食べてしまいました。


人間にとっては生理的嫌悪感も覚える光景ではあるものの、野生の動物では、出産によって失われた栄養やエネルギーの補充、天敵である肉食獣を誘き寄せてしまう危険性を出産の痕跡を消すことで減らすためにも必要なものとみられており、胎盤食を行うものも多く、ここの獣人達にもその習性が残っているのでしょう。


人間の場合は、胎盤を食べなくても栄養が補充でき、かつ確実に処分するのでその必要が無くなり、失われてしまったのだと見られています。


ショッキングでしたか?


そうでしょうね。でも、私達が今いるこの世界の在り様を端的に伝えるにはちょうどいい出来事じゃないでしょうか。


まるでフィクションの中の架空の生き物のように見える獣人達も、ここでは普通に生物として生きているんです。


そして私達は、そんな獣人達と共に生きているんです。



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