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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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異世界

以上が、私達が透明な体を持ち獣人達が暮らすこの世界にいる理由です。


その後、


『獣人達にも文明の初期段階と思しき生活様式が生まれている』


こと。


相堂(しょうどう)伍長が言葉(日本語)を使ってコミュニケーションを取っている内に獣人達にもそれが浸透し始めている』


こと。


『伍長が言葉を広める以前からすでに言語に類するものを獣人達が持っていた』


ことを勘案し、無理に接触を絶って生活するよりは、穏当な形で彼らと融和することを目指す方針を立てたのでした。


なお、私達の本来の世界では、老化抑制技術が非常に発達し、健康寿命が百七十年を超えていました。


つまり、健康なままで百七十年以上生きられるということです。


そのため、伍長がここですでに二十年以上暮らしていても、彼自身がまだ百歳にもなっていなかったこともあって、外見上はほとんど変わっていません。


また、本来の私達の社会では<年齢>はすでに重要な情報ではなくなっていて、他人に年齢を尋ねるのはマナー違反とされていますので、今後も必要ない限りは触れないでしょうね。


なにしろ、三十歳と百歳とで外見上の区別はまったくつかないのですから、求められるのは単純に本人の能力だけです。


百七十歳くらいになって、やっと、<老化抑制処置>が存在しなかった頃の六十歳相当といった感じでしょうか。


いわゆる<青年期>だけで百数十年あるとなれば、年齢に拘る方が非合理的でしょう。


数十年程度の<経験の差>なんて、本人の心掛け次第でどうとでもなります。無為にただ時間を過ごした人の数十年と、しっかりと自覚を持った人の数年であれば、<自覚を持って過ごした数年>が確実に勝りますし。


こうして私達はこの<獣人達の世界>に根を下ろし、生きていくことを受け入れました。


元の世界に帰りたいという気持ちがまったくないか?と言われればそれは『No』です。しかし現実問題として、ようやく鉄器を手に入れただけの私達には、それを実現する手段がまったくありません。現状では、海を越えることさえままならないのも事実。


また、なにより、相堂(しょうどう)伍長がここに現れてから私と少佐が現れるまでに二十年以上のタイムラグがあったことを勘案すると、<データヒューマン>となってからだけでも、本来の世界では数千年の時間が経過していることは確実だと推測できます。


加えて、この、<透明な体>。


万が一、元の世界に帰れたとしても、そこで待ち受けているであろう<困難>は、ここで暮らす以上になるかもしれません。


すでに家族も友人もいない<元の世界>は、実質的には<異世界>となんら変わらないでしょうね。



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