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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
32/404

有り得ない光景

それは、本当に何とも表現しがたい感覚でした。


幼い頃に四十度を超える熱を出したことがあったんですが、その時の感覚にも似た、夢とも現実ともつかない感覚。


それが、数秒で終わったような、数時間続いたような、自分でもまったく判然としないのです。


はっきりしているのは、次に私が認識できたのは、自分が水中にいたということ。


普通ならそれでパニックに陥って対処できず、そのまま溺れていたかもしれません。ですが私は、軍にいたことで、その種の極限状態での対処についても訓練を受けていたからか、体を丸め、自身の鼓動を確認し、自らが生きていることを強く認識し、それを基点として認識を整理、まずは上下の感覚を取り戻して水上に顔を出すことができました。


こうして一口呼吸を行い、さらに現状を把握するための精神的な余裕を確保、意識を鮮明にしたのです。


『川……?』


まず自分がどこにいるのかを把握しようとした私は、水中で、しかも流れを感じることでそこを<川>だと判断しました。


その上で周囲を見渡すと、<川>と言うよりは<河>と言った方が適切かと思える場所の真ん中にいたのです。


足を着こうとしても届かず、岸までも確実に数十メートルありました。反対側を見ても同じ様子です。さらには人工物がまったく見当たらない。


『またどこかに転送された……?』


まず頭に浮かんだのはそういう認識でした。


しかしそれは第一に考えるべきことではありません。優先すべきは身の安全の確保です。


幸い、流れはそれほど急でもなかったので泳ぐことは難しくありませんでした。水温もすぐに低体温になることを心配しなくても済む程度でしたので、慌てることなく確実に岸に向かって泳ぎます。


ただ、泳ぎ始めてすぐに私は違和感を覚えました。何しろ大した抵抗もなくスムーズに泳げるのですから。


そして私はすぐに察してしまったのです。


『また裸か……』


私達が<データヒューマン>として転送された時と同じく自分が一糸まとわぬ姿になっていることに。


まあ、着衣水泳は大変なのでそれはいいのですが……


ですが私はこの直後、それどころじゃない異常な状態に気付かされました。


岸まで残り数メートルという辺りまで来ると川底に足が届き、私はホッとしたのですが、同時にまた強烈な違和感に襲われたのです。


「え……? なに…これ……?」


足を着いて立ち上がろうとした瞬間、何気なく視線を下げた私の視界に捉えられた異様な光景。


そこに見えるはずのものが見えないという不可解な現実。


あ、いえ、見えているのです。見えてはいるのですが、それが本来なら有り得ない光景だという……


「ええぇ~っっ!!?」


軍人としていかなる事態にも冷静に対処することを心掛けていた私でも、


「なんじゃこりゃぁ~っっ!!?」


と再び声を上げてしまったのです。


何しろ自分の体が、まるで水のように透き通っていたのですから。



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