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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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物々交換

そうして私がバンゴに品物を渡してると、


「ブオゴはいねえのか?」


背後から声が。


相堂(しょうどう)伍長でした。


バンゴの声が聞こえたことで反射的に目を覚ましたのでしょう。


伍長の問い掛けに、バンゴは、


「知らん。今日はまだ顔を見てない。たぶん、狩りに出てるんだろう」


人間の感覚だと少しぶっきらぼうにも感じる話し方で応えますが、流暢に話しているように見えるバンゴでも、実はまだまだ頭の中で言葉を組み立ててから喋ってるので、どうしても意識をそちらに向ける必要があり、表情とかが硬くなる傾向にあるみたいですね。なので決して不愉快に感じてるとか怒ってるとかじゃないのは分かります。


怒ってる時には、もっとはっきり感情を表に出しますね。


中途半端に遠慮なんかしません。


時には命の奪い合いにさえなります。伍長とブオゴはただじゃれ合ってるだけです。


「ちっ! そうか……」


バンゴの言葉に伍長は少し不服そうに腰に手をやって顔を背けました。ホントに礼儀がなってない人で申し訳ない気分にもなります。


だから私は、


「ごめんなさい、私の仲間が礼儀知らずで」


代わりに謝罪します。するとバンゴは、


「構わない。俺達とビアンカ達、違う種族。違ってて当たり前。気にしない」


と実に紳士的な対応。伍長なんかよりよっぽど理性的ですよ。


苦笑いしか出てきません。


そうこうしてる間にも品物の用意ができて、バンゴはそれを確かめ、ボディバッグのように体の正面に袈裟懸けにした皮製の袋にしまって、代わりにそこから出した木の実を渡してくれました。


<トトリの実>、<デンゲの葉>、<ロイロイの根>の代金代わりとしてですね。


一般には広まっていないものの、一部の獣人達の間には<物々交換>の概念が芽生えつつあるようです。


私達人間の社会形態を彼らに押し付けるつもりはありませんので、貨幣制度を持ちかけるようなこともしていなかったのですが、自然発生的にそういう習慣を身に付けた獣人達は元々いて、バンゴもその一人でした。


ちなみにバンゴが渡してくれた木の実は、猪人(ししじん)は食べないもののそれを好んで食べる獣人もけっこういる、<ノルタの実>でした。


自分達にとっては価値はないそれを<代価>としても用いる辺り、実に抜け目ないと言えるでしょう。


高度な文明を持たないからと言って彼らを無知蒙昧な蛮族と見下すのは決して適切ではないと、こういうところからも感じるのです。


私達人類は、かつて、自分達に比べて文明が未発達な知的存在を<未開の蛮族>と見下し侮ってきたという過去がありました。


正直なところ、今でもそういう考え方をしている人達がいるのも事実です。


でも私達<外宇宙惑星探査チーム>は、人間以外の知的生物との遭遇も考慮に入れて、


『相手を敬うことができる人材を』


という形でも選抜されていたのでした。



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