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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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データそのものは

「ありがとう…ビアンカ……君のおかげで僕は役目を果たせてる……」


十枚(とおまい)アレクセイ達のグループと別れてから数年。こちらでの暮らしにもすっかり慣れた頃、少佐は私にそんな風におっしゃってくれました。


そしてこの頃には、私は少佐と、


『限りなく交際してるのに近い』


関係でした。少佐が真面目過ぎてグループのリーダーとしての務めに気持ちを傾け過ぎてて、


『特定の相手だけを特別扱いできない』


って身構えちゃってて、交際を認めてくれないんですよ。


もっとも、他の仲間達からは、


『さっさと結婚すればいいのに……』


とは思われてましたけどね。ってか、


「ビアンカ、あの朴念仁をとっとと観念させなさい! 見てて歯痒いったらありゃしない!!」


「私達はあんたの味方だからね!」


とまで言ってくれてました。はい。


あの相堂(しょうどう)伍長でさえ、


「なんでお前ら結婚しないんだ? バカじゃないのか?」


なんてことを……


でも、いいんです。そういうところが少佐らしくって、カワイイんです♡




……と、そんなこんなで私達は平穏に暮らしていました。


ただ、その一方で、<この世界>でちょっと気になることが……




「少佐、またですか?」


「ああ…ここから先に進めなくなっている……」


私と一緒に定時パトロールに出ていた時、少佐は普段のルートからは外れた場所で立ち止まり、そう言いました。


それは、まるで、見えない壁でもあるかのように、私達が先に進むことを拒んでいました。


しかも、どことなく景色もぼんやりとしている気がします。


これと同じことは、以前からも何度かありました。


ただ、早ければ数時間。長くても数日でその異常は解消されるのです。このことからも、


『この世界は非常に高度なシステムの中に構築された<仮想世界>であり、サーバー等の異常によって一時的に制限がかかってしまう』


のだろうと推測されていました。結果的に、


『私達はシミュレーターの中にいる』


という仮説を裏付ける根拠にもなっています。


とはいえ、一時的に行けなくなってもすぐに解消されますし、仲間がその場所に入った状態で同じこともありましたが、解消されれば普通に戻ってこれたので、データそのものが損なわれるとかいう類のトラブルではないと見られていました。


でも、


『データは損なわれない』


としても、それはあくまでどこかにバックアップがあることで復元されるだけで、


『その場に有ったデータそのものは果たしてどうなったのか?』


という問題はあったのでしょう。


そして私達はこの後、自らそれを知ることになったのです……



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