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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
24/404

ホトロの枝

こうして私達は、その世界で生きていくことを決意したのですが……


「みああ…」


私を呼ぶ声。ノーラです。この声は、食事の催促ですね。彼女の部屋を覗くと、用意した分がなくなっていました。どうやら物足りなかったのでしょう。


「はいはい、ちょっと待ってね。今用意するから」


赤ん坊を抱いて切なそうにこちらを見てるノーラにそう応えました。


こういうことも珍しくないのですぐに対応できるようにはしています。


そうして改めて、彼女の好物である<タチャの新芽のサラダ>をメインに、そこに<ホトロの枝のスティック>を添えたものを持っていきました。


<ホトロの枝>は、見た目には完全にただの木の小枝なのですが、独特の甘みがあり、これもノーラをはじめとした山羊人(やぎじん)の好物です。


ただし食感も『ただの木の小枝』なので、私達は食べません。試しに興味本位でかじってみた時に味については納得したのですが、やはりあの食感が、人間のそれである私の脳には、


『食べ物だと認識できない』


のでしょう。飲み込めませんでした。


皮肉なことにこの枝には私達人間が消化できない成分はほとんど含まれてないんですよね。上手くいかないものです。


赤ん坊におっぱいをあげながら、ノーラは自分の食事も始めました。


それにしてもどうしてノーラが私達と同居しているのかという理由について、改めてお話しすると、彼女には人間で言うところの<発達障害>があり、普通の生き方ができないのです。


私達は最初、それを知らず、仲間から虐げられていた彼女をつい保護してしまって、今に至るという感じですね。


「僕達が干渉するのは好ましくないかもしれない……」


ここに来たばかりの頃でようやく拠点を築いたばかりだった私達に少佐はそうおっしゃったんですが、相堂(しょうどう)伍長が、


「あ!? そんな(さか)しいお利口ちゃんな理屈! 知ったことか!!」


と言ってノーラを連れてきてしまったのがきっかけでした。


彼の行動は無責任で後先考えないものだとは思いつつ、私自身、正直な気持ちではノーラのことを放っておけなかったのも事実です。


あの<謎の存在>に取り込まれデータヒューマンとなった私達が『人間として生きる』ことを選択したのですから、自然の摂理云々については今さらという想いもあったりするんですよね。


と、


「いらっしゃいませ~」


店の方にお客が来たので応対し、それを終えて私は椅子に腰を下ろしました。


そしてまた、思い出します。


<あの世界>での出来事を……




とにかく、一切の<文明の利器>を失いつつも人間として生きていくことを決意した私達でしたが、さすがにあまりにそれまでの環境とかけ離れたそれが影響したのか、もしくは<データヒューマン>となったことでメンタリティに僅かな変化が生じていたのか、


<外宇宙惑星探査チーム、コーネリアス>


としては良好であったはずの私達の関係が、徐々にぎくしゃくしていったのでした。



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