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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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高度シミュレータ

私達が、見知らぬ場所に『飛ばされた』時点で、多くのメンバーは察していたんだと思います。


何しろ、<物質転送>は、三十七世紀に当る現在でも実用化されていない技術だったのですから。


理論だけはほぼ完成していたそうですが、それを実際に形にする段階で、


『転送前と転送後の物体は本当に同じものと言えるのか?』


という部分でコンセンサスがまったく得られず、議論は完全に行き詰っていたのです。


正直、私も転送されて本当に私が私のままでいられるのか、不安もありました。もし実用化されたとしても積極的に使いたいとは思えませんでした。


そんな私と同じように感じる人がむしろ多数派だったみたいですね。


また、<物質転送>を行うには、<送信機>と<受信機>が必要とされてたにも拘らず、私達は受信機もないここに送られたのです。


これも、全員が気を失った状態で運ばれて一斉に眼を覚ましたのなら、意識を失っている間に運ばれたのかもしれないと思えたものの、実際に先に気が付いた者が、何人も、後から、


『何もない場所に、突然、人体が現れる』


という瞬間を目撃してしまっては、ただの<幻覚>とするには無理がありました。現に私も何度もそれを目撃してしまいましたし。


加えて、


<水分も食料も一切摂らなくても衰弱しない体>


などというのを付き付けられてしまうと、


『自分達は高度シミュレータの中のデータだ』


と言われた方が納得できてしまうのです。


<高度シミュレータ>


というのは、AIの発達によってもたらされた技術で、


『予備知識なしにそこにフルダイブすると、現実との区別がまったく付けられなくなる』


などとも言われているものでした。それで実際に、


『リアルになんか帰りたくない!!』


とか言い出す人が後を絶たなくなり、仕方なく、シミュレータにダイブする時には、生身の人間のアバターは、ちゃっちいポリゴンで再現され、なのにシミュレータ内の<データヒューマン>(ゲームにおけるNPCみたいなものですね)はまったくそのことを気にしないという形にすることで、敢えてそこが、


<ただのシミュレーターの中>


というのを強引に思い知らせると。


私達はそれを知っているから、今の自分達が、


<オリジナルを高度に再現したデータヒューマン>


であると理解できてしまうんです。


とは言え、高度シミュレータの中のデータヒューマンは、ほとんどの場合、自身がただのデータに過ぎないことを認識できません。それどころか、そこにダイブした<リアルな人間>にさえ、生身のそれとの区別が付けられないほどに完璧に再現されていました。



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