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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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本当によくここまで

「みいい…みいい……みあああぁ~っ!」


陣痛が辛いのでしょう。ノーラはそう声を上げながら、部屋の隅でうずくまっていました。


しかも、どうやら陣痛が収まらない様子。いよいよ分娩が近いということでしょうね。


少佐が出掛けてる間にとはついてないですが、私ももうこれまで四回、獣人の赤ん坊を取り上げてきました。少佐からも、


「僕が留守中に分娩が始まったらよろしく頼むよ」


と言いつかっています。なので狼狽えたりしません。


お湯も、新鮮な<綿>も、用意万端整っています。


「さあ、おいでませ!」


私が声を掛けた時には、蹲っていたノーラも自分で四つん這いになり、体勢を整えました。


この辺りは、彼女達<獣人>は本能的に分かるらしく、私はただ不測の事態に備えるだけでよかったのです。何しろ、私達三人がここで<よろずや>を始める以前から、彼女達は彼女達で生きていたのですから。


ああ、<よろずや>というのは、この地に流れ着いた私達、ビアンカ・ラッセ、久利生遥偉(くりうとおい)相堂幸正(しょうどうゆきまさ)の三人で始めた、獣人達相手の、


<便利屋>


<なんでも屋>


みたいなものですね。同時に、<商店>としての体裁もとっているので、大昔の<コンビニエンスストア>的な店舗のことを指す<万屋(よろずや)>からつけたものです。


といっても、<よろずや>という店名が浸透し始めたのは、ごく最近ですけど。


なにしろ獣人達にはそれまで<言葉>と呼べるものがありませんでしたので。


ちなみに、<商店>と言っても、獣人達の世界には貨幣制度というものがありませんし、<取引>という概念もまだないので、『お金をもらって商品を売る』どころか物々交換でさえありませんが。


それでも、獣人達にとって必要なものを取り揃えていることをありがたがってくれてるのか、時折、<獲物>をわけてくれたりもするんです。


そういう形でもらったものを私達自身の食料にすることもありますし、私達には成分的に食べられない物などは加工することで獣人達向けの<商品>にもします。


つまり<極めて原始的な商売>とも言えますか。


ただ、ここまで来るのも大変だったんですよ。


なにしろ、何が食べられて何が食べられないのかもまったく分からないから、パッチテストでまずは様子を見たりというのから始めて……


なのに、相堂(しょうどう)伍長は、まだ安全性も確認できてないものを、


「そんなもん! 食ってみりゃ分かる!!」


とか言って食べてしまって、何度も吐いたり下痢を起こしたりをいうことを繰り返してきました。もちろん、実際に問題なく食べられるものだった場合も少なくなかったのですが、本当によくここまで死ななかったものです。


まったく。ただの<無闇に悪運だけは強いバカ>ですね。



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