本格的なサバイバル
こうして私達三十一人による本格的なサバイバルが始まったのです。
コーネリアス号にいた頃とはわけが違う、本物のサバイバルです。
もっとも、惑星探査チームに選抜されるような人材ばかりな上に、それぞれ、サバイバル訓練も受けていましたから、やはりどこかただのキャンプのように気軽なものではありましたが。
何より、この時、私達がいた場所は、非常に生存に適した場所だったのです。
明け方頃はさすがに肌寒くもなるものの、木の葉を寄せ集めた簡単な衣服でもしのげるほどの穏やかな気候。
煮沸さえすればそのままでも飲める水を湛えた湖。
雨も降りつつもあくまで潤いを与える程度の降り方。
猪に似た獣や、狼に似た獣など、危険な猛獣もいつつ、だからといって今の私達では対処できないような脅威でもなく、油断さえしなければ、生存には大きな問題のない環境が整っていたのですから。
むしろ、
『整いすぎている』
とさえ感じるほどに。
実はこの時の三十一人の中には相堂伍長もいたのですが、彼としても特に反発などしなくてもよい状況だったのでしょう。確かにいちいち言動が大袈裟な傾向はあったものの、今では想像もできないくらいに落ち着いていて、あくまで『今と比較して』ではあるものの、淡々と自分の役目をこなしていたように思います。
まあ、彼も、軍人として組織に所属できる程度の社会性は持ち合わせていたということでしょうね。
あの時点では。
最初は蔓などを用いて、立ち木の枝を寄せ集めそれを屋根とし、そこから伐採した枝葉を吊るして壁とした<簡易テント>で暮らしていたものが、石器を手に入れてそれで<材木>を作って<竪穴式住居>ができ、土器で本格的な<料理>を作り、原始的ではあっても<人間の暮らし>といえるものが出来上がってくると、それまで張り詰めていたものが緩んできたからか、余計なことを考えてしまうメンバーが出てきてしまったようです。
「もうイヤ! 何もしたくない! 何も食べたくない!!」
それは、今後の方針を話し合うための定例会議でのことでした。
まあ、『今後の方針を話し合う』と言っても、
『周辺の探索を続ける』
『自分達の生活をより良いものにしていく』
といったものしかなく、それ以上の具体的な<目的>や<目標>といったものも立てられませんでした。
当然ですね。
コーネリアス号もない。
ナイフ一本ない。
人間社会と連絡を取ることもできない。
そんな今の私達にできることなんて、まず自分の命を確実に守れる環境を確保するだけですから。
その中で自我を保てなくなる人も出てくるのは当然なのかもしれません。
こうして、彼女、<クラレス・トリスティア>は、壊れてしまったのです。




