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獣人のよろずやさん  作者: 京衛武百十
第一部
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這う這うの体

ゴヘノヘが前足を着いた地面が、ゴゾリと崩れ落ちます。


そう。<落とし穴>です。落とし穴はまだあったのです。


とは言え、山羊人(やぎじん)達の協力がすぐに得られなかったことで十分な用意ができなかった落とし穴ですが。


底に杭を並べダメージを与えるものにはできず、本当に<ただの落とし穴>。


しかしここまでのダメージがゴヘノヘの判断力を低下させていたのでしょう。加えて、つんのめって前足を着いたところが落とし穴だったことで回避できずに、頭から落ちました。


けれど、ゴヘノヘが落とし穴に落ちた瞬間、ブオゴ達の動きが止まりました。


やはり彼らは、私達が<罠>を用いて戦っていたのではなかったことで、協力してくれただけのようですね。


「ゴアッ! ガ! ガハアッッ!!」


上半身が落とし穴にはまってしまい、ゴヘノヘはもがいていました。その巨体が(あだ)となり、この無理な姿勢が彼を苦しめているのでしょうか。


普通に考えれば、絶好のチャンスです。ですが猪人(ししじん)の戦士達は、それぞれ杭を手にしながらも、それでとどめを刺そうとはしません。


なので私も少佐も、彼らに倣いました。


それに……


「ゴッ、ゴハッッ! ゴハハッッ!!」


ようやく落とし穴から這い上がったゴヘノヘの様子は、先程までの迫力がまるで失われていたのです。


もしかすると見た目以上にダメージを受けたのかもしれません。


無理な姿勢になったことで呼吸もままならず、その上、内臓にもダメージを負った可能性がありますね。


もう、戦意も感じない……


まるでフィクションに出てくる<怪獣>そのものだった彼の姿はもうありません。そこにいたのは体が大きいだけの弱った<動物>。


視線の先に杭を手にした伍長を捉えると、ビクッとその体が震えるのも分かりました。


そして彼は、明らかに怯えながら体を反転させ、元来た道を走りだしました。とは言え、その速度は来た時の三分の一にも満たないものだったでしょうが。


それでも、もう一つの落とし穴はしっかりと避けつつ、()()うの(てい)で帰っていきます。


そう、私達の完全勝利です。


ですが、ゴヘノヘの後姿を見送る私達の誰も、<鬨の声>を上げたりはしませんでした。


たぶん、猪人(ししじん)達にとっては納得のいく勝利ではなかったのでしょうね。そしてそんな猪人(ししじん)達がまとう空気感に、伍長も少佐も私も、歓声を上げる気にはならなかったのです。




とは言え、勝利は勝利。


ただ、梟人(きょうじん)達や山猫人(ねこじん)達には被害はなかったものの、猪人(ししじん)の戦士が一人、亡くなっていたことが後で分かりました。


ですので、<完全勝利>という部分については前言を撤回します。


もっとも、当の猪人(ししじん)達にすれば、真っ向から戦って敗れたのですから、亡くなった戦士の名誉は守れたと考えているようですね。



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