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#05 亀の解体作業へ



 ブリュナ様達が乗った馬車を見送った後、馬車で行くのを断った俺にアーネが嬉しそうな顔して言ってきた。


「で、アタイらは転移で行くんだよな?なっ?」


「うん、そのつもりだけど…。転移するなら裏口から出た方がいいかな。ラナ、裏口使わせてもらえる?」


「えっと…いいですけど…転移?」


「ラナとリズは初めてやもんな。ま、すぐに分かるて」


 ラナとリズは当然分かってないみたいで不思議そうにしてたけど、とりあえず皆で裏口から出た。


「さて、じゃあ全員俺に…」


 触れてくれって言う前にラナとリズを除くメンバーは定位置に…。


「……ちょっと、みんな何してるのっ!」


「いきなりナオトにくっつきだしてどーしちゃったのさ、みんな」


「今からナオトが使うスキルの為の定位置だぜー」


「ラーちゃんとぉリズちゃんもぉ〜、ナオちゃんにぃくっつかないとぉダメなんだぁよぉ〜」


 違います、触れるだけでいいんです。

 君達が最初からガッチガチにしてただけです…。

 そんなにくっつくとラナとリズが触れるとこなくなるから、普通にしようよ…。


「いや、えっとな…俺に触れるだけでいいんだよ、ホントは…。けど何故かみんなこうしたいらしくて……」


「これもちゃんと触れとる内に入るやろ。せやからこれでええのっ」


「えーっと、よく分かんないけどナオトにくっつけばいいのね。んじゃ…アーネちゃん、ちょっとだけ横にズレてー」


「あーリズもちっちぇえからこっちか。ん、いいぜ、ほらよっ」


 …前面からアーネとリズに抱き付かれて、ますます身動きが…。

 いや、まぁ動く必要はないからいいっちゃいいんだけどさ…でも一つだけ言わせてください。

 リズの…リズの胸が…胸がヤバいデス……。

 そんな胸押し付けて変形させるほどガッツリ抱き付かなくていいんだってばっ!


「じゃ、じゃあ、わたしも…リオ、少しだけズレてもらえる?」


「………ん。…………どう、ぞ……ラナ…………」


「ありがと、リオ」


 ラナは背中に回ったらしい。

 なに、どうしても引っ付かないと気が済まないわけ?君ら…。

 傍から見たら絶対変だよなこれ。

 も、もういろいろと考えるのはよそう…。


「あーもー、いくぞっ、転移!」


 シュンっ!













 ──着いた場所は外壁門を街側から見て右側に少しだけ反れて離れた外壁近く。

 朝だしなるべく人が居ない所をって考えたら、この辺しか思い付かなかった…この前、列に並んでた時目に入った場所で。



「…え?あれ?ここ……」


「へぇーっ、一瞬で移動するスキルなんだーっ。これはいいねぇーっ、便利便利っ」


「そやろ?しかもこうしてくっつかなあかんからなっ」


「…うん、これ、いいね……うふっ」


 うん、分かったからさ、着いたらすぐ離れようか、皆。


「到着したので離れてもらえませんかね…みなさん」


「いやぁ、これは中々離れ難いものがあるねぇ…にししっ」


 逆に余計しがみついてくるのヤメてもらえませんかねっ、リズさんっ!む、胸が……。


「ほ、ほらっ、移動!門まで移動しないとっ!」


「名残惜しいけどしょーがないかぁ…んじゃ、みんな離れるよー」


 リズの一声で皆離れてくれた…渋々って感じが漂ってたけど。

 これ定着させるのいつか止めさせないと、俺がいろいろ大変だ…昨日の今日でもう欲がムクムクと起き上がってきそうになってる……。

 

 頭を振って余計な考えを追い出しつつそこから皆と門の前まで歩いてくると、やっぱり朝だからだろう、それなりの列が出来てた。

 こんな人がそこそこ居る所に転移してこなくてよかった…と思いながら列の脇まで辿り着いたら、俺達を見つけて話し掛けてきたやつが一人。



「あれ?そんな所から来て何やってんすか、ナオト」


 どうやら列整理してたバドルに運悪く見つかってしまったらしい。


「あー、おはようバドル…。ちょっと、な…」


 何となく転移してきた、とは素直に言い辛かったから濁してしまった。

 別にコイツも俺が漂流者だって知ってるんだしいいとは思うんだけど、何となく…。



「ようバド。アタイらのことは気にしねぇでちゃんと仕事しとけよ」


「いや、気になるでしょ、どう見ても。そんな所からやって来て…しかも女の娘6人も引き連れてとか」


「気持ちは分かるがそこは見なかったということにして仕事しとけって、な?」


「何無茶言ってんすかナオト、見ちゃったんだから無理に決まってんでしょ、そんなの」


 いやそこは敢えて無視しとけよ、どうせ、何か面白いことになってていいネタなんじゃね?とか考えてるんだろ。


「無理じゃないだろ、ちゃんと仕事に集中すればいいんだって。ほら、また並ぶ人増えたぞ?」


「んじゃまぁ、そんな所からってのは置いといてもいいっすけど、何でその6人かはちゃんと説明してもらわないと」


「あ?何でバドに説明しなきゃなんねーんだよっ」


「そりゃ当然ネタのために…」


「お前な…ネタにされると分かってて話すわけないだろ…」


「え?ナオトは漂流者なんだから俺達にネタを提供するのは義務っすよ?知らないんすか?」


「そんなバカな義務があってたまるかっ、いいから仕事しとけよっ!」


「…しょーがないっすね…。後でじっくり話聞かせてもらうっすからねっ」


 そう言い放って列整理に戻ってったバドル。

 誰が話すか、特にお前には全く話す気になれないわっ!俺の中で危険人物に認定されてるんだからなお前はっ。


「ったく、アイツは相変わらずどーしよーもねーなぁ」

 

「まぁ門番兵なんてそんなもんでしょ。冒険者と違ってあちこち動けるわけじゃないんだしー」


「それは分かるんやけどな…バドルの場合は露骨過ぎやと思うで」


「今までの姫達のネタ提供率がよかったからじゃないかな…そこに俺も加わってさらに倍みたいな」


「進んでぇ話題を〜提供したぁつもりはぁ〜全くぅ無いんだけどぉねぇ〜」


「アイツが勝手にネタ認定してるだけだっつーの。だからどーしよーもねーんだよっ」


 本人達目の前にしてネタ求めるとか、そこまで飢えてるって…あ、いや、単純に面白がってるだけだよな、あれは。

 ま、基本的に無視でいいだろ、漂流者の義務とかワケの分からんこと言ってきた時点で。


 バドルには会わなかった事にしといて、列には並ばず脇でブリュナ様の馬車を待ってたら、そんなに刻も掛からずやってきた。

 俺達もすぐ近くに寄っていって護衛みたいな感じで一緒に並び、そのまま門番前まで進んだ。


「おう、ナオトじゃねぇか。どうした?ガルムドゲルン公爵様の馬車と一緒なんて」


「おはようございます、エドさん。これから昨日倒した魔物の解体に向かうんですよ、ブリュナ様と一緒に」


「あー、あのバカデカいやつか。了解した、通っていいぞ」


 馬車に付いてる公爵家の紋章はフリーパスってところかな。

 まぁ当然っちゃ当然か、領主だもんな。


「ありがとうございます」


「あぁ。それよりお前、いい加減それ止めてくれって、普通にしろ普通に」


「え…あー、うん、分かった…。ありがとう、エド」


「おう、気を付けて行けよっ」


 エドのおっさんに言葉遣いを注意されつつ、ほぼ素通りで馬車と俺達は門を潜り、街を出て左手側に広がる平原へ。

 この広さなら亀出しても大丈夫だろう、多分。


 到着したら既に作業のため集まってた領民達が固まってた…結構な数、500人以上はいるんじゃないかな?


 馬車から降りてきたブリュナ様達と一緒にその集団近くまで来た後、ブリュナ様からの説明が始まった。


「領民の皆さん、お集まりいただきありがとうございます。皆さんにはこれからこの場に出す魔物の解体作業を行っていただきたいと思います。かなりの大きさなので驚かないようにしてください」


 領民達は事前に話を聞いてたんだろう、特に騒いだりも無く黙ってブリュナ様の話に耳を傾けてた。


「ではナオト、すみませんがよろしくお願いします」


「分かりました。ちょっと離れて出しますね」


「ええ、お願いします」


 領民達が集まってる所から少し離れた位置まで移動して、収納墓地から亀を放出した。


 ズシンっていう震動と共に目の前に山が現れた…やっぱりデカいよな、コイツ。

 どれくらい解体に時間掛かるか分かったもんじゃないな。


 とりあえず、解体前に魔抜きだけはしておくか…リオの食事とは逆にすればいいだけだから、多分出来る…よな?


 亀に触れて魔力を吸い込む感じで掌に集中したら、亀に残ってた魔力が俺に流れ込んでくるのを感じた。

 2、3分くらい続けたら流れ込んでくる感じが無くなった…もう大丈夫かな。

 そして相変わらず俺に変化は何も無し、と。

 魔力摂取過多で靄が出てくることも無かった…ホントデタラメというか、わけ分からん身体してんな、俺。


 んじゃブリュナ様の所に戻ろうか、とそっちの方へ振り向いたら、領民達の集団を割ってもの凄い勢いで向かってくる人影が二つ…まぁ、何となく来るんじゃないかなーとは思ってたけど。



「おいナオトっ!おめぇついこの間無傷の魔物はもう持ってこれねぇとか言ってじゃねぇかっ!何だよこのデカブツはっ!」


「わぁーすっごくーおっきいねーっ!山みたいー!」


 お分かりの通り、壊塵洞の父娘、ディモルさんとカティちゃんだった。

 カティちゃんは既に解体用装備に身を包んでて準備万端でした。

 その格好でここまで来たのか…ちょっと可哀想な気がしなくもない…本人は気にしてないのかもしれないけど。

 んー…あ、そうだ、簡単に脱着出来る道具でも創ってあげるか。

 久々に使うな、このスキル…えっと、身に着けられるもの…腕輪とかでいいか。

 装備品着脱可能な腕輪を想像して…よし、創造!


 ポンッ


 っと、想像した通りの銀色のシンプルなデザインの腕輪が現れた…上手く出来たかな?


「わっ!なんか出てきたよーっ!」


「カティちゃん、これあげるから付けてみてもらえる?」


「えっ!くれるのー?」


「うん、あげる。その代わり付けたら試してほしいことがあるんだ」


「パパー、もらっていいー?」


「あー、ナオトからなら問題ねぇさ。くれるってんなら貰っとけ」


「やったー!ありがとーナオトお兄ちゃん!」


 お、かなり喜んでくれたみたいで良かった良かった。

 早速左手首に付けてくれた、うん、似合ってるな。


「よし、じゃあカティちゃん、リリースって言ってみてくれる?」


「?りりーす…?………え?あれっ?」


 お、成功したっぽい。

 カティちゃんの装備が一瞬で消えた。

 じゃあ今度は逆に装備だな。


「うん、上手くいったみたい。それじゃ今度はセットアップって言ってごらん?」


「せ…せっとあっぷ……わわっ!」


 うん、元通り装備出来てる。

 これで何時でも着脱可能だろ、腕輪付けてれば持ち運びも必要無いし。


「その腕輪付けてれば、いつでも好きな時に装備したり外したり出来るよ。さっき教えた言葉でね」


「わぁぁ…すごいー!すごいよー!パパーっ!」


「おいおいナオト…そんなすげぇもん貰っちまっていいのかよ……」


「いや、だってこの格好で街中歩かせる方が可哀想じゃないですか」


「う…ま、まぁ、そうなんだが…」


「可愛い娘さんにあまり無理させないようにしてくださいよ、ディモルさん。これはお世話になってるお礼として受け取ってください」


「す、すまん…。じゃあ、ありがたく受け取っておく。良かったな、カティ」


「うんー!ナオトお兄ちゃんっ、ありがとーっ!」


 ぽふっ、とまた俺の足元に抱きついてきたカティちゃん。

 うん、やっぱりちっちゃい娘は可愛いなぁ…自然と頭をナデナデしちゃうわ。

 っと、ちょっと脱線した、亀の解体しないと。


「ちょっと時間取っちゃいましたね、コイツの解体しないといけないのに。そうだ、ディモルさん、この解体作業の責任者みたいな人いますか?」


「ん?あぁ、街の連中を纏めるのは俺だな。いつの間にか任されちまった」


 あ、そうなんだ、それは好都合。

 絶対今日で終わるわけ無いだろうから、コイツの収納を代表の人にお願いしようと思ってたんだけど、ディモルさんなら丁度いい、後でそれも創って渡しとこう。


「そうだったんですね、分かりました。じゃあとりあえず解体作業始めてもらっていいですか?俺はブリュナ様に始めることを伝えてきますので」


「おう、分かった。じゃあ早速始めるとするかっ」


「あ、そうそう、魔抜きはもうしてあるのでその辺は気にせずどんどんやっちゃってください」


「お、そうなのか。なら遠慮なくバラせるなっ。気合い入るぜ、こんな獲物目の前にしちまったらなぁっ!」


「その調子でよろしくお願いします。それじゃ」



 ディモルさんに解体をお願いして、俺はブリュナ様の所へ解体作業開始を伝えるために戻って来た。


「ブリュナ様、解体作業をお願いしておきました。すぐ始めてくれるそうです」


「分かりました。そうですね…ショー、クリス、解体にあたり何か意見はありますか?」


「ええと…僕もこの大きさのものは初めてなので…。ただ、大きさ的にもしかしたら魔石を複数持っているかもしれないので、そこは慎重に解体してほしいかな、と」


「なるほど…確かにありえそうですね」


「一つだとしても相当な大きさだと思います。私的にはこの魔物の素材は全て未知の素材となるでしょうから、査定も同時進行しては、と考えます」


「確かにその方が時間の短縮にも繋がりますね…分かりました、そちらの方にも声を掛けてみましょう」


 何やら真面目な話をしているんですが、ショーは抱っこされたままです。

 ブリュナ様のスルースキルも中々高いんじゃないかと。

 あーそっか、馬車の中でもずっと抱っこしてたりして慣れちゃったってことかも?


 まぁ、それはともかく亀の解体作業は始まったし、後は皆にお任せしよう。



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