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#30 お出迎えとお呼ばれ、そして祝杯を



「冒険者諸君!防衛ご苦労だった!これよりガルムドゲルンへ戻る!」


「防衛隊の皆さん!大義でした!我々もガルムドゲルンに帰還します!」




『『『『『『『『『オオオォォォォォオオッッ!!!』』』』』』』』』




 皆とあれこれ話してる内に帰還準備が終わったみたいで、フィルさんとブリュナノルグ様が号令を掛けた。

 行きとは違い、みんな疲れは見えるものの足取りは軽く、防衛隊側でも会話が弾んでいた。


 戻りの道中、マールとリオの世話になったらしい冒険者が何人かお礼がてら話し掛けてきたけど、ブレストヒーラーズってかなり浸透してるみたいで、またアーネに怒鳴られてた…冒険者の噂好きにも困ったもんだ。

 ついでに本人達に言ったらアーネが暴れ出すって言い触らしておけばいいのに。


 そんなこんなで皆でガヤガヤドタバタしながらガルムドゲルンまで戻って来たら…外壁門前に俺達の帰還を待っていたのであろう集団が待ち構えていた…数は百人程度だろうか。


 全軍が止まり、フィルさんとブリュナノルグ様が先行してその集団に近付いていって、何やら話をしている…誰だろう?と思っていたら、その人物の声が辺りに響いた。

 それこそ全軍に聞こえるくらいの音声、多分そういう魔法か魔導具を使ってるんだろうな。



「皆の者!よく戦ってくれた!ガルムドゲルンに住む者達を代表して、領主であるこの私、ゲシュトベルグード・テラ・ガルムドゲルンが礼を言う!ありがとうっ!」



 まさかの領主様自らのお出迎えだった。

 普通に俺達皆に頭下げてるし…トップからしてこれだもんな、住んでる人みんな良い人達ばっかだって納得だわ。



「その功績を我が領民達も一緒に称えたいそうだ!本日は全て無礼講、飲食については全て私が持つ!ご苦労だった、存分に疲れを癒やしてくれたまえっ!!」




──ザワ…ザワ……


「つまり…今日の飲み食いは、全部タダってこと…か?」


「それって、どの店でもいいのか?」


「全てって言ってんだから、そうなんじゃねぇか…?」


「マジか…好きなだけ食って飲めるってことかっ!」





『『『『『『『『『ウ…ウオオオオオオォォォォォォオオオッッ!!!!』』』』』』』』』




 それを聞いた冒険者、防衛隊の皆から大歓声が上がって、疲れも何のその、一斉に外壁門になだれ込んで行った。



「領主様太っ腹だな…」


「こいつは嬉しいご褒美だなっ!どうする?どこで飲むよ?」


「これもクエスト扱いやしな、ならあそこしかないやろ」


「待ってるぅ人もぉいるしねぇ〜、ふふっ」


「………行こ、う……マ、スター…………」


「まぁ、今は入り口も混んでるし、ゆっくり行くか」


 駆け出して行った皆を見ながら、ちょっと時間をずらしてゆっくり行こうとしてたら、ブリュナノルグ様が俺達の所にやって来た…何だろ?あ、亀の事かな?


「ナオト、まだ居てくれて良かったです」


「どうしました?ブリュナノルグ様」


「父がどうしてもナオトに会いたいと言ってまして…会ってもらえないでしょうか」


「俺に…ですか?」


「あぁ、そういう意味だと、漂流者に会いたいということだったので、ヒロシやトモミも一緒にですね」


「そうですか。分かりました、お会いします」


「ありがとうございます。皆さんもご一緒で構いませんので」


 ということで、領主様に会うことに。

 弘史達はゲインダルさんが呼びに行ったらしく、彼に連れてきてもらってた。

 知美ちゃんもどうやら無事復活したらしく、自分の足で歩いてきてた…若干フラフラしてて弘史に掴まりながらだから、完全復活とまではいってないみたい。

 あれ見た後だと、足腰立たなくなるまでやりました、みたいに見えてしまうのが何とも…。

 


 案内された場所に着いたら、30代くらいにしか見えない、イケメンにシブさが加わった感じの貫禄を持った領主様…ブリュナノルグ様と親子だって一目瞭然の人が俺達と弘史達を迎えてくれた。


「君達が我が領で冒険者として活動している漂流者か。私が領主のゲシュトベルグード・テラ・ガルムドゲルンだ。そこのブリュナの父でもある。ゲシュトと呼んでくれて構わない」


「初めまして、漂流者のナオトです」


「同じく漂流者のヒロシだ」


「トモミ、でで、です」


「そう堅くならずとも良い、普段通りで構わんよ。3人の活躍は聞いた。随分助けられた、と」


「俺達みんな、出来る事をやったまでですから。他の冒険者や防衛隊の皆と同じ様に」


「そうか。だが最大の魔物は漂流者達だけで倒したと聞いたぞ」


「あー、もう帰っちまったけど、皇都から来た漂流者4人と俺達で、だけどな」


 弘史君は領主様でも態度変わらないのね…流石です。


「なるほど…。やはり詳しく話を聞きたいのでな、明日我が公爵家に顔を出してもらえんだろうか。勿論ここにいる皆でだ」


「えっと…」


「ナオト、私からもお願いします。妹のフラウ、それから…ティシャとヒナリィも会いたがっていましたので」


 あー、そういやティシャとひぃにもお呼ばれされるって話あったっけ…ってことは、今回の事と一緒に公爵家にお集まりってことになるのかな?


「あ、はい…俺は構いません。弘史達もいいよな?」


「領主様の家とか、こんな機会滅多にないだろうしな。俺も行くわ。当然知美もな」


「はは、はいっ」


「そうか、では明日我が家で会えるのを楽しみにしていよう。今日は大いに飲み食いして気を休めてくれたまえ、何も気にすることは無いからな」


「ありがとうございます。今日のところはお言葉に甘えさせてもらいます。あ、そうだ、ブリュナノルグ様、亀はどうしますか?」


「私の事もブリュナと呼んでもらって構いませんよ。亀は、そうですね…後片付けの件と一緒にそれも明日領民達の手を借りてどうにかしましょう。あの大きさですから解体スキル持ち総出になると思いますが…」


「了解です、ではこのまま収納しておきます。明日は明日で忙しくなりそうですね」


「ええ、ですが我が領民達なら喜んで手を貸してくれると思ってますから、大丈夫ですよ」


「俺も解体に関しては大喜びで手を貸してくれる人に二人ほど心当たりがありますよ」


 俺とブリュナ様の会話を聞いてうんうん頷いてる姫達も、どうやら同じ人を思い浮かべたらしい。


「それは頼もしいですね。では明日、宜しくお願いします」


「はい、ではまた明日」



 ということで、明日亀をどうにかするのと、公爵家にお邪魔することになりました…元々ティシャの家にお邪魔する予定はあったけど、どうやら領主様の家に全員集合するっぽい?

 あの件─ギガントゴブリン襲撃以来、ティシャとひぃには会ってないから実は少し楽しみだったり。

 カティちゃんから二人とも元気だってのは聞いてたから心配はそんなにしてないけど、やっぱり気にはなるしな。


 領主様達と約束を交わした後、俺達と弘史達のパーティーは一緒に外壁門を潜りガルムドゲルンに入った。

 

「ふぅ…無事戻って来れたな。さて、んじゃ真っ直ぐ向かうとするか。弘史達はどうする?」


「あー、特に決めてねぇけど…こーゆー時はやっぱまずギルドだろ?」


「じゃあ俺達と同じだな。一緒にギルド酒場で祝杯上げようか」


「あぁ、いいなっ!ケモミミっ娘ちゃん達と飲めるってんなら、断る理由なんてねーよっ!」


「…しゃーねーなぁ……今日くらいは大目に見て付き合ってやるかぁ」


「こないな時で一緒に飲むくらいなら別に構へんしな」


「大勢の方がぁ〜楽しいしぃねぇ〜、ふふっ」


「………美味し、い……お酒…………」


 姫達も今日くらいは許してくれるらしい。

 実際この戦いの前にも少し一緒に飲んだし、大丈夫だろうとは思ったけど。

 弘史が暴走しなけりゃいい話なんだけどな。


 ギルドに向かいながら道沿いの店を見てみると、どこもかしこもさっきの戦場で活躍してた皆が歓迎されてた。

 街の人達はしきりにありがとう、とお礼を口にして喜び、冒険者や防衛隊の皆はそれを受けて喜び…至る所で笑顔が溢れかえっていた。

 あぁ…この喜びに満ち溢れた空気、こっちまで嬉しくなって、本当に守る事が出来て良かったってしみじみ思えた…。

 

 そんな中央通りを越えて円形広場に出て、迷わず冒険者ギルドまで向かい、入り口を潜ると…既に酒場では酒盛りが始まってて大賑わいだった。

 人数が人数だから酒場の席だけじゃ足りなかったみたいで、待合所の方まで酒場と化していた…まぁ、今日くらいはクリス女史も許してくれたってとこだろうな。


 俺達はまず受付カウンターへ一直線に向かい、無事を伝えるべき人に声を掛けた。



「ラナっ、戻ったよっ」


「リズー、戻ったぜー」



 俺と弘史がそれぞれの専属受付嬢を呼んだら、少し奥の方にいた二人がこっちに振り返って…そして満面の笑みを浮かべた。



「「ナオトさんっ!」「ヒロシっ!」」



 俺達の名前を呼びながら窓口まで駆け寄ってきて、目一杯喜びながら労ってくれる二人。


「お帰りなさいっ!みんなお疲れ様でした…っ」


「おかえりっ!みんな無事ねっ!よかったっ…」


「ただいま。街の方は大丈夫だった?」


「はいっ。みんなの無事を祈ることくらいしか出来ませんでしたけど…」


「それで十分だっての。祈りが通じてちゃんと帰ってきたろ?アタイら全員」


「うん…うんっ!良かった…っ」


 瞳に少し涙を浮かべて俺達の無事を喜んでくれるラナ…心配は掛けちゃったけど、皆を守る為だったからそこは勘弁してな。


「凄く大っきい魔物が現れたって報告上がってきた時には、流石にみんな焦っちゃったけどね…」


「まぁ、あれ見りゃ誰でもそう思うわな…けどよ、ちゃんと倒してきたぜ?」


「うん、そうだね…。ありがとっ、みんなっ!」


 リズもニパっと笑って喜んでくれてるけど、やっぱりラナと同じ様に少し目尻に涙を溜めてた。


「俺達これからここで祝杯上げようと思ってるけど、ラナ達はまだやることあるのか?」


「えっと、上がってきた報告をまとめてたところなんですけど…」


「いいわよ、ラナ、リズ。後は私とショーちゃんでやっておくから」



「「えっ?」」



 二人の後ろからクリス女史がいつの間にかやって来てた。

 二人とも振り向いて驚いてた…普段のクリス女史の台詞とは思えなかったんだろうな。


「い、いいんですか?チーフ…」


「今日くらいは、ね。こういう時に頑張ってくれた皆を労うのも、私達の立派な仕事よ」


「チーフ…ホントお言葉に甘えちゃいますよ?ワタシ」


「ええ、構わないって言ったでしょう。ナオトさん、ヒロシさん、トモミさん、それに皆、お疲れ様でした。私達の街を守ってくれて、本当にありがとうございました」


 そう言って綺麗なお辞儀をするクリス女史。

 やっぱりこうやって改まってお礼言われると、何ともいえない気恥ずかしさが…。


「もうお礼は十分貰いましたから…大丈夫ですよっ」


「そうだって、もういいっての。礼言ってほしくてやったわけじゃねーんだし」


「そそ、そうですよ。お、お気持ちだけでじゅじゅ、十分です、から……」


「そう、ね。フィルからも当然言ってあるでしょうし。でも、私からも伝えたかったのだから、いいでしょう?」


「それは…そう、ですね…。俺自身そうですから…」


 挨拶と礼だけはちゃんとしろって小さい頃から両親に言われて、身に染み付いちゃってるしな…クリス女史と同じ立場なら間違い無く俺もお礼言っちゃうだろうし。


「素直に受け取ってちょうだいね。さ、皆で祝杯上げてきなさい」


「分かりました、ありがとうございます。それじゃ皆で乾杯しようかっ」



「「「「「おーっ!」」」」「「「はいっ!」」」「はぁい!」「……(コクっ………」」



 クリス女史に勧められて、ラナ、リズを加え皆で酒場に移動した。

 当然の事ながら席なんか空いてなくて、カウンターでとりあえずみんなの分の酒を取った…注文するまでもなくカウンターにズラリと酒が並んでるから、好きな物を飲めってことなんだろう、マスターの計らいだな。



「うっし、みんな酒持ったかっ!んじゃ、ガルムドゲルン防衛成功と全員無事生還を祝ってぇっ!」



「「「「「「「「乾っ杯(ぃ〜)!!」」」」」」」」



 アーネの音頭でみんな持っていた酒を掲げて喉を潤した。

 俺とアーネ、弘史、リズ、そしてフラムは一気飲みで一杯目をソッコーで空にした。

 フラムはちょっと意外だったけど。


「くはぁ〜っ!美味ぇ!」


「アーネちゃん、いい飲みっぷりだなぁ、おい!」


「ったりめーだろっ!こういう時の酒は煽ってなんぼだろっ!」


「フラムも意外といける口なんだな、ちょっと意外だった」


「こんな時くらいはな。いつもはもう少し大人しく飲むが」


「うんうん、フラムちゃんノリがいいねぇー!」


 俺を含めた一気飲み組はもう次の酒に手を伸ばしてた。

 いや、ホント嬉しい時の酒は最高だなっ、しかも独りじゃないってところがまた輪を掛けて最高だ。

 その上更に美少女達が傍にいるっていうこの幸運…これで酒が旨くないわけがない。

 元の世界ではそんなに酒飲みじゃなかったけど、こっちの世界に来て飲ん兵衛になってしまうかもしれない、俺…。



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