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#28 帰還準備



『『『『『『『『『ウオオオオオオォォォォォォオオオッッ!!!!』』』』』』』』』



 亀が崩れ落ち、明らかに討伐されたと見て分かった瞬間、この戦場のあちこちから歓声が上がった…これだけの人数だから凄い大音声でちょっとビビった。



「はぁ…はぁ……よしっ、皆、討伐…完了、だっ!」


「ふぅ…と、当然の、結果ですよ……」


「ま、まぁ…私たちのっ…手に、掛かればっ……こんな、もんよ…ねっ……ハッ…ハッ……」


「…アレを…二回も、やるのは……少し、想定…外、でしたけれど……ふぅ……」


「た、倒せたん…だからっ…問題ナッシング、だって…蘭子……」


「……ふぅぅ……。そう、ね…華凜の言う通り、結果オーライという事に、しておきましょう、か……」


 はい、お疲れ様でした、流石に大技2連発は大変だったご様子。

 お手柄はどうぞ遠慮なくお持ち帰りください、どうやら俺のスキルは全くバレなかったみたいで一安心。



「くぅぅ…あぁぁキツかったっ……もう出せねぇぞっ!」


「……ア、アハ…アハハ……(ビクッ、ビクッ!」


「フニャァ〜……」


 弘史の腕の中で小刻みに痙攣してる知美ちゃん…あられもない表情、舌がだらんと口からはみ出しちゃってますけど……これ、完全に事後ですよね?確か戦闘してたはずなんだよなぁ…。

 カノンちゃんも黒猫の姿に戻ってご主人さまと同じ様に舌出してきゅぅぅって感じになってました。


 何はともあれ、これでガルムドゲルンの皆を守りきれた…俺一人の力じゃなく、皆で一丸となってやり遂げたってことに、大きな意味があるんじゃないかって思ってる。


 この戦いに臨んだ誰もが英雄だってことで、ガルムドゲルンに住む皆はきっと称えてくれるだろうな。

 種族も性別も階級も、漂流者っていう出自も関係なく受け入れてくれるこの街の人達だから。


 よしっ、大手を振って皆で帰るとしようか。

 っと、その前に…この亀はこのままにしておくわけにもいかないよなぁ…どうするかフィルさんにでも相談しよう。


 俺達漂流者が亀を倒した時にはもう他の魔物は全て討伐されてたみたい…だから皆であんな大歓声を上げてたんだ、納得。


 でも周りを見ると結構その場でへばってる人が多かった…皆もお疲れ様だよな、そりゃ。

 座り込んでる人や大の字になって寝そべってる人、剣や槍を杖代わりにして辛うじて立ってるっぽい人、いろいろだったけど、共通して皆笑ってた。

 やりきった感が至るところから伝わってくる…かくいう俺もそうだけど。



「「ナオトはんっ!」「ナオトっ!」」


 一息ついてたところにシータとアーネが俺の所に駆け寄って来てくれた…それとフラムも弘史達の所へ駆け寄っていった。

 三人だってそれなりに疲れてるはずだろうに。


「…終わったよ。二人ともお疲れ様」


「ナオトはんも…お疲れ様や」


「おう、お疲れ様だぜ、ナオトっ」


 お互いに笑顔を浮かべて労いあった俺達…だけどあと二人、今の俺達には足りてない。


「討伐自体は終わったけど、マールとリオはまだだろうな…。負傷者も結構出ただろうし」


「だな…。マールとリオにはもうちょい頑張ってもらわねぇと」


「ウチらにも何か手伝える事あるかもしれへんから、この後二人のとこ行ってくるわ」


「そっか、じゃあそっちは頼むな。俺はコイツをどうするかフィルさんとかに聞こうと思って」


 シータ達が来た方を向いてるから、今は俺の背後にいる亀を親指で指した。


「置きっぱってわけにはいかねぇよな…こんなデカブツ」


「ナオトはんなら、どうにか出来るん?」


「あー、多分大丈夫かな。運べって言われたら運べると思うし」


 まぁ、デカくても収納墓地にはそのまま入るだろうし、多分。

 あとコイツほぼ無傷で倒しちまったからな…とっとと収納墓地に回収して、後で魔抜きしちゃえば肉とか食えるんじゃないか?解体作業メチャクチャ大変そうだけど…。

 あ、でもディモルさんとかカティちゃんは喜んで解体しそうな気がする…そういや俺、もう無傷の魔物は持ってこれないって言ったばっかりだったような気が…。

 いや、まぁ、今回はやむを得なかったってことで。



「そか。ほなこっちはナオトはんにまた任せるとして、ウチらもマールとリオんとこ行ってくるわ」


「うん、そっちは頼んだ。二人にももうちょっとだけ頑張ってって伝えといてもらえる?」


「おう、伝えとくわ。んじゃ行ってくらぁ」


 そう言って二人共また駆け出していった…疲れた素振りは全く見せずに。

 頑張り屋さんの良い娘達だよ、ホント…。


 さて、んじゃ俺もやることやらないとな。

 コイツをどうするかフィルさんに聞こうと思ってどこに居るかキョロキョロしてたら、向こうからやって来てくれた。

 フィルさんだけじゃなくてブリュナノルグ様とゲインダルさん、あとさっき単騎で来てた緑風騎士団グリンドナイツの騎士様も一緒に。


「漂流者諸君っ、まずはありがとう、と言わせてほしい」


「私からもお礼を。我が領民達を救っていただきありがとうございました」


「うむ、見事な戦いであった。漂流者諸君に最大の敬意を」


 面と向かって言われると、何かこう、気恥ずかしいというか…俺自身、ガルムドゲルンに住む皆を守りたかっただけなので、改まってお礼なんて必要ないと思ってるんですが。


「いつもより少しだけ手こずったけど、まぁ想定内の結果かな」


「そうですね、概ね作戦通りですよ」


「いつもよりちょーっとだけ疲れたくらいだねー」


「…そうですわね。早く帰ってゆっくりお湯に浸かりたいわ」


 と、烈華絢蘭の皆さんは言っておりますが。

 まぁ、確かに思ってたより予想外のことで崩れたりしなかったから、十分な結果かな、と。

 自信家なところはともかく、良くやってくれたと思うので、後で俺からも礼は言っておこう。


「俺は、まぁ、世話んなってる連中がいなくなると困るからやっただけだよ」


 と、まだクタッとしてた知美ちゃんをフラムに任せて言ってきたのは弘史。

 理由についてはほぼ俺と同じだ。


「俺もですね。来たばかりの俺に良くしてくれた人達を守りたかっただけなので」


「君達が冒険者になってくれて本当に良かった。ギルドマスターとしてこれ程嬉しい事はないよ」


「そんな大袈裟ですよ…」


「そんな事はないですよ。この街で冒険者として活動してもらえるのは私としても嬉しい事です」


「貴族様からそんな事言われるとはなぁ…。ま、この街は居心地いいし結構気に入ってっからな」


「俺もこの世界に来てまだ日は浅いですけど、本当にいい街だと思ってますよ、ガルムドゲルンは」


 来て早々親切にしてもらって、助けてもらって、そして姫達に会えて…。

 ホント良い事しかないわ、びっくりするくらい。


「あー、こんなとこで立ち話もなんだしよ、戻ってからにしねーか?」


「うむ、ヒロシ君の言う通りだな」


「そうだな。我々緑風騎士団グリンドナイツはこのまますぐ皇都へ戻る。皇王陛下にご報告せねばならぬからな。烈華絢蘭はどうする?」


「僕達もすぐ皇都に戻るよ。役目は果たしたしね」


「そだねー、帰ってゆっくりしよっ」


「…ええ、そうね。あのお風呂が私達を待っているわ。華凜、一緒に入りましょうね」


「うんっ!そうしよっ、蘭子!」


「僕も少し頭を使いすぎましたから、甘い物を補給したいですね」


「了解した、では我等と共に戻ろうか。フィル殿、ブリュナ殿、後の事は宜しく頼む」


「ええ、お任せください。陛下に宜しくお伝え願えますか。後日改めてお伺いします、と」


「心得た、必ず伝えよう。では、また」


 早々に引き上げる騎士様と烈華絢蘭のみんな…あっと、そうだ。


「烈、華凜、絢久、蘭子。ありがとな」



「「「「………」」」」



 一瞬俺の方に振り返って、全員フッ、って感じの不敵な笑みを浮かべた後、何も言わずに去っていった。

 烈だけは背中を向けたまま片手を上げてくれたけど。


「あいつ等…何か言えっての、ったく……」


「いや、別にいいって。何か言ってほしくて礼言ったわけじゃないし」


「…あんたも大概お人好しだな」


「そういうわけじゃないよ。ほら、俺中身が、さ」


「あー、ガキのすることにはってやつかよ」


「まぁ、そんなとこだな。そうそう弘史、お前にも言っとくよ。ありがとな」


「んなもんいらねーっつーの。あんたの為にやったわけじゃねーんだしよ」


「分かってるよ。でも言っておきたかったんだって」


「…そうかよ」


 お、そっぽ向いたぞ、何だよ照れてんのか?けど弘史も知美ちゃんもホントよくやってくれたと思うから、素直に感謝出来るんだって。


「それでフィルさん、ブリュナノルグ様、この亀はどうしますか?」


 皆も早く街に戻って休みたいだろうし、パパッと片付けちまった方がいいよな。


「どうするもこうするも、この大きさなのだから放置するしかないと思うのだが…」


「そうですね…出来ることなら少しでも素材を確保したいところですが、それも難しいでしょうし…」


「えっと、多分持って帰れますけど」


「…ん?この大きさの物を?どうやって……」


「ちょっと待っててください」


 瞬影動フラッシェーダムーンで亀の所まで移動、その身体に触れて収納墓地へ。

 …まぁ、多分出来るとは思ってたけど目の前の山が瞬時に消えたみたいになった。

 元の位置、フィルさんやブリュナノルグ様の所までまた戻って来て、はい終わり。

 


「「「………」」」



 フィルさんとブリュナノルグ様、あとゲインダルさんがポカーンって感じで口を開けてる。


「終わりましたけど…」


「………ふぅぅ……。漂流者なのだから収納スキルくらいあるとは思っていたが…まさかこの大きさのものまで収納出来るとは……」


「これは…目の前でやられると驚愕しますね……」


「…私も同感です…。漂流者が能力的に高いことは知っていましたが、これ程規格外とは思っていませんでした……」


「あんたホントに俺と同じ漂流者なのかよ?俺だってここまでデカいのは収納出来ねぇぞ…」


 え、そうなの?あー、レベル違うのか、収納スキルの。

 俺のは創った時点でレベル無かったからなぁ、単純に無限って想像して創ったし。


「とりあえず、これでいいですよ…ね?後の細かいものはどうします?」


 その辺に転がってる大量の魔石とか、一部の人型の魔物が使ってた武器っぽいのとか、回収するだけでも大掛かりになりそうなんだけど…。


「そうですね…それは後日領民達に手伝ってもらうことにしましょう。私の方からお願いしてみます。今は負傷者を回復して街に戻ることを優先しましょう」


「了解しました。ではそのように」


 フィルさんがブリュナノルグ様の方針に同意してた。

 みんな早く街に戻りたいってとこは同じみたいだな。

 俺は姫達が気になるからそっちに行くか。



「じゃあ俺は仲間のところに行きますね」


「うむ、マール君とリオ君には引き続き宜しく頼む、と」


「分かりました。弘史はどうする?」


「俺はちっと休ませてもらうわ。知美もあんなんだしな」


「分かった、じゃあ後でな」


 フィルさんもブリュナノルグ様もそれぞれ率いてた隊のところに戻るみたいで、弘史達を置いてこの場は解散、と。

 俺もすぐ皆のところに向かおう。

 


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